2020.03.09
変わる評価
社員の評価に問題のない企業はない。問題がないどころか、評価が全く機能していないなど極めて深刻な状態にある企業も少なくない。 近年日本企業の人事制度は、緩やかではあるが大きく方向を転換してきた。年功的処遇、終身雇用の制度から、実力、成果を重視する制度へと確実に変化している。今やどの企業でも、実力、成果で社員の処遇を決定することを、基本的な思想として普通に表明している。実力、成果を軸とすると、今までより理論的、体系的な仕組みが要求される。等級制度は、社員のレベルをより詳細に定義しなければならない。また労働市場に合わせて職種別に再編したり、等級の定義をより詳細化する傾向にある。また昇格だけでなく降格も普通の機能となってきた。実力で処遇するためには、実力に応じた等級にすることであるため、等級が上がる一方ではなく、エレベーター式の仕組みが求められるからである。給与制度では、等級が違えば月給に差をつけるような、階段状の月給が多くなった。賞与に関しては、成果を挙げたものに、さらにより多くの配分をする傾向にある。 実力、成果重視の制度を実際に機能させるためには、等級制度、給与制度が理論的、構造的に設計されている上で、評価制度が機能しなければならない。評価が甘い、実際の差を反映しないものであれば、制度の威力は発揮されないからである。この評価が機能している企業が実に数ないのだ。 適正な評価を行うために、今まで経営や人事は様々な手法でこの問題を解決しようとしてきた。代表的なものは、評価者研修である。評価を行う上司に評価に関する教育を行うものである。また二次評価などのように、上司が行った評価をそのまた上の上司が再チェックすることも多くの企業で実施されている。さらに評価表一枚一枚を会議体で検証するような取り組みも多い。絶対評価をやめ、相対順位で評価を決定する企業も一定数ある。結果としてみると、これらの手法は適正な評価を行うための決定打ではなかったということだ。上記の手法は、一部は一時的な効果にとどまり、一部は効果があるが実施の負荷が高すぎるなど課題が残り本質的な解決にならない。 長期雇用で職場内のチームワークを重視する組織体で、上司は部下にストレートな評価が困難である。どうしても甘い評価になったり、差をつけない評価になってしまう。利害関係のある、上司から部下への評価を適正にする努力は実を結ばないということだ。最近はこの問題を解決するために、多面評価と外部評価を用いる企業が現れ始めた。上司だけでなく、多くの関係者の評価のほうが組織内では正しい評価ではないかということである。外部評価は主に管理職などの管理能力を外部の専門家が判定するというものである。社内の衆目の評価と外部視点での実力評価で判定するというものである。たしかにこの手法は解決しなければならない課題はあるが、今までの手法と比較にならない決定的な解決策になる可能性を持っている。評価が機能しない限り人事制度が当初の目的を達しない。評価を機能させるためには、何度も失敗してきた手法を捨て、新たな解決策を模索する必要があるのではないか。 以上