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コラム

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ライタープロフィール

朽木 鴻次郎
朽木 鴻次郎(くちき こうじろう)

 1960年(昭和35年)東京都出身、一橋大学法学部卒業後、石油開発企業に入社。海外赴任通算約9年。1997年に総合商社-法務室国際法務統括に転職。以後、ドイツ系化学・医薬品メーカーのリーガルオフィサー兼日本法人法務知財室長を経て、2004年任天堂(京都本社)部門長として、企業法務、国際国内契約交渉や訴訟、CSR人権監査等に従事。2018年任天堂を退職。現在は、34年の企業法務での経験を活かし「法令遵守の本質」「ハラスメントの防止」「企業の情報を守る」「SNSをめぐるコンプライアンス」などの領域を得意とする研修講師。地方自治体、民間企業、公益団体、首都圏大学などでの登壇多数。

パワハラを産む「黒い大三角」を排除するために有効な360度人事評価 | 360度診断

パワハラを産む「黒い大三角」を排除するために有効な360度人事評価

●気づきで是正できるパワハラ言動  真面目な上司がついつい部下指導に力が入ってしまって、パワハラ言動に至ってしまうことはよくあるものです。特に新しくリーダーやマネジャーに昇格した上司にありがちなことかもしれません。部下の能力を底上げしてあげたい、そんな善意が背景にあったとしても、結果として、部下のモチベーションを下げ、チームのエンゲージメントを損なう指導になってしまっていたとしたら逆効果です。力みすぎによるパワハラ言動は、それが最低最悪のマネジメントであるという気づきから、改善される場合も多いでしょう。しかし一方で、気づきによって、是正が期待できない場合もあるのです。 ●黒い大三角 〜 気づきで是正できないパワハラ気質  心理学的に次の三つの要素を兼ね備えたタイプの人間は、人としていかがなものかと思える邪悪な言動を平気で行うことができると考えられています。 ・自己利益ファースト(マキャベリズム) ・異常に高い自己評価 (ナルシシズム) ・罪悪感や感情の欠如(サイコパシー) これは「黒い大三角(ダークトライアド)」と呼ばれるものです。 図表1 邪悪な性格特性:黒い大三角(ダークトライアド) 資料出所:『パワハラ上司を科学する』 津野香奈美 ちくま新書”Dark Triad” Paulhus Delroy L., Williams Kevin M. The dark triad of personality 2002  黒い大三角をもつ社員は得てして優秀で、仕事で結果を残す場合が多く、組織の中で高い評価を得ていることが多いと言われます。特に上司に対しては表の顔しか見せず、いつの間にか成果を独り占めし、踏み台にした同僚や後輩に対して何ら罪悪感を持つことはありません。そんな人間がリーダーになると巧妙に部下を追い込み、成果を独り占めし、何ら恥じることなく堂々と振る舞います。  「追い込まれ、踏み台にされる人たちの痛みを感じろ!」と言ってみても、そもそも、このタイプは人の痛みを感じないのです。「なぜいけないのですか?私は結果を出しています」と静かに微笑むことでしょう。たとえ一時的に成果が上がっても、メンバーの身体や精神が損なわれたとしたら、組織にとって好ましくはありません。結果のために手段を選ばずメンバーを追い込み、人の痛みを感じることなく、成果だけは独り占めにするリーダーやマネジャーは存在してはならないのです。  それでは気づきを促しても無駄だとすれば、どうしたらいいのでしょう?  黒い大三角タイプはそもそもリーダーやマネジャーにしてはいけないのです。プレイヤーとしては優秀であっても、リーダーやマネジャーにする際にはスクリーンをかけ、排除することがベストだといえましょう。 ●黒い大三角社員を排除するために有効な360度評価  通常の人事評価では、黒い大三角の本当の顔は見えないかもしれません。ましてや管理職アセスメントでは逆に高い得点をたたき出すかもしれません。そもそも能力は平均以上なのですから。  そこで、周囲の人たちからの評価がとても参考になります。普段の職場の振る舞いから、ふと覗かせる裏の顔は周囲のメンバーたちが一番よくわかっています。陰湿なパワハラ言動の数々や、手柄や成果を横取りされた独り占めされたというケースが浮き彫りになってくるかもしれません。表の顔しか知らない上司の評価、高すぎる自己評価(ナルシシズム)、同僚や後輩からの裏の顔の評価、これらを総合する360度評価により、黒い大三角社員の存在を浮き彫りにして、そんな特性を持った人たちを排除していくこと、少なくともリーダーやマネジャーに昇格させないことをお勧めします。

ハラスメント研修の常識を疑う | 人材開発

ハラスメント研修の常識を疑う

 ハラスメント研修でこんなことを聞いたことはないでしょうか? ・ハラスメントでは「グレーゾーン」の判断が難しい ・ハラスメントは職場のコニュニケーションをよくすれば防止できる  もちろんその通りですし、筆者も研修の場で同じように申し上げることもあります。しかし、職場でハラスメント問題の実務を数多く扱った経験から考えると、「グレー」というのはちょっと違うんじゃないか?と思えます。また「コミュニケーションの問題」と言いますが、職場のトラブルのほとんどは人間関係の問題で、人間関係の問題は、全てコミュニケーション問題であるのです。 「グレーゾーン」「コミュニケーションの問題」という陳腐な決まり文句(クリシェ cliché)で思考停止してしまっては、職場での真の問題解決には至りません。もう少し深く考えてみる必要がありそうです。 ●グレーゾーン? 「彼/彼女のあの行為ってどうなの?」「うーん、グレーだよね〜」 「これっていかがなものかな...」と感じたらそれはやめてもらうべき行為です。ハラスメントに当たるのか当たらないのかの二者択一、白か黒かという判断基準は訴訟や裁判でのことでしょう。私たちの職場は法廷でも裁判所でもありません。皆が安心して力一杯働くことができる、そんな職場を作るためには、いかがなものかな?と思われる行為であったら、ハラスメントであるとかないとかよりも「今後はやめておきましょう」と判断すべきです。 「それこそまさに『グレー』なのでは?」と思われましたか?違います。職場で「いかがなものか?」「今後はやめておきましょう」という行為は、実は、アウト・ブラックなのです。ただ、処分を行わない、軽い注意に留めるという外観がグレーであるという印象を与えているに過ぎません。 グレーはグレー、ホワイトではないのです。 ●ハラスメントはコミュニケーションの問題? 「コミュニケーションが良くなればハラスメントはなくなります!」と研修講師がドヤ顔して言ったとしてもそれで問題が解決するわけではありません。 誰と誰の間で、どのようなコミュニケーションを、何のために行うのか。そして、そのコミュニケーションの背景にどのようなマインドを持ったらいいのかを、腹落ちするレベルで理解することが必要です。  もちろん、ハラスメントにならないための、NG言動や行為を知る必要はあります。「敬語を使いましょう」「あだ名はやめましょう」「男性にも女性にも皆お互いに『さん』づけで呼び合いましょう」「下の名前で呼ぶのはやめましょう」そんな「べし・べからず集」を参考にすることは無駄ではありませんが、本質的ではありません。では何が本質なのか?  それは自分の価値観や意見と違う相手やその行動に対して「敬意」を持つことです。その相手の「人としての存在を認める」ということです。これは筆者が14年間働いた任天堂で当時の社長であった故岩田聡氏から学んだことです。敬意を持つということは、ご自身の考え方や価値観を変える/改めるということでもなければ、相手に譲歩する、妥協する、ということでもありません。自分と違う価値観や意見を持つ人たちの存在を認めるということ。自分と違う価値観や意見を持つからこそ、自分にはできないこともできてしまう能力がその人にはある。そんな能力を集めて、一緒に働くことこそが組織/会社で働くことの意味であって醍醐味であるのだと。それが岩田さんの教えでした。  ハラスメント研修から発展して、職場でのコミュニケーションを深く考えてみることは、とても有意義だと思います。