50代半減
長期雇用を前提とした日本の人事管理では、社員の年齢構成は非常に重要な論点となる。企業が持続的に成長するためには、その企業のコアノウハウ、文化を次世代に継承し、さらに発展させていくとう連続的な循環が必要となる。そのためには、年齢構成は緩やかな台形型が理想形である。台形型の年齢構成は、毎年ほぼ同数の定年及び自己都合退職者が出て、ほぼ同数の新卒社員が採用されるということだ。退職社員と採用社員がほぼ一定であることから、継続性のある安定したノウハウ、文化の継承がされるという考え方だ。
台形型の年齢構成でない企業では、年齢構成由来で重大な問題が発生する傾向にある。近年日本の大手企業の代表的な年齢構成は、バブル採用の50歳代の社員が非常に多く、逆に40歳、30歳代は極端に少ない。長い採用抑制の影響である。近年は積極的に新卒採用をする企業が増えたため、20代半ば以下は比較的多くの社員が在籍している。このため平均年齢は40歳を超えており、職場の雰囲気もマチュアだ。
50歳代のような年齢構成の突出層は、放置すると大きな問題を発生させる。まず突出層の社員はスキルが高くない傾向が強い。若いうちはこの問題は顕在化しないが、職場の中で中堅的仕事、係長や管理職候補の年代になってくると、実際に担当している業務と処遇の不整合が発生する。下の年代の人数が少ないため、ずっと実務を担当しなければならないからだ。年功的な企業であれば、等級は上昇するため、次第に仕事のレベルと等級のミスマッチが増大する。その結果年齢上昇→等級上昇→人件費上昇という人件費上の問題も発生する。さらに下の年代の社員が極端に少ないため、部下が少ない、ないしはいないこともある。そのためリーダーシップが鍛えられない。管理職として登用するに十分な経験が積めないのだ。管理職等級に昇格してもポストの空きがない、またはそもそも管理職一歩手前の等級に長期間滞留することもある。モチベーションが高まらない。
突出層の問題はこの年代だけに留まらない。突出層の下の年代も育たないのだ。突出層の下の年代は、多数の先輩がいる。若手が十分に補充されないので、長い期間がたっても組織内での相対的序列は高まらない。また突出層でさえ管理職ポスト待ち人材が多いので、自分たちがポストにつける可能性がさらに低い。
突出層は育たない。突出層の下も育たない。そして突出層は50歳代となっている。この問題はバブル採用時からずっと指摘されてきた問題である。中には年齢構成是正施策を実施してきた少数の企業はあるが、大多数は問題と分かっていても手を付けてこなかった。今後経営環境が変化していくなかで、人件費適正化、人材の質の向上、職場の活性化が重視される中で、遅ればせながらこの突出層に対する施策が重要となる。理論的に考えれば50歳代は数年間に半減以上する施策が必要となる。直ちに手を付けなければ、激変する環境下でさらに成長を継続する企業にならず、逆に成長力を失ってしまう。遅ればせながら50歳代の雇用施策がブームとなりつつあるが、この問題に本格的に向き合う最後のタイミングではないだろうか。
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