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人材育成方針策定

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イノベーション人材をどう発見するか  | 人材アセスメント

イノベーション人材をどう発見するか 

 数年前からほとんどの企業の中期経営計画には、「イノベーション」という言葉が書かれ、期首の社長メッセージでもイノベーションの要請は常套句のように頻出する。しかしいま、日本企業でイノベーションが続々起こっているという状況とは程遠い。掛け声だけで終わっている要因の一つは、イノベーション創出の、もっとも基盤的な手が打たれていないからではないか。基盤とは、イノベーションを駆動する人材の確保・育成であり、そのための人的投資の戦略。イノベーションの起点になる新しい発想は、人々の頭のなかからしか生まれないからだ。  たとえば、国が提起し、各企業が濃淡はあるものの一斉に取り組みつつある「人的資本経営」には「イノベーション」が見えない。契機となった人材版伊藤レポートが斬新だったのは、「資本市場の力を借りて人事・人材変革を起こす」との目論見。投資家が着目するのは、収益性のみならず成長性だから、そこに資する人事戦略、つまりイノベーションのための人的資本経営こそが勘所のはずだが、多くの企業は、国から例示された定型一般的な指標情報の開示に留まり、女性管理職比率や働き方改革といった「雇用面のSDGs」遵守、いわば「守り」は見えるが、「攻め」(=イノベーション)のストーリーは一向に見えない。  「攻め」のための人への投資とはなにか。製造業でいえばR&D人材への投資、業種の違いを超えていえば、DX人材への投資はひとつの鍵になるものだが、それだけではVUCA時代の成長にはつながらない。未来が予測不能に変化するのであれば、会社のどの部署、どの機能であっても、同じことをやっていることがリスクだし、成長もない。新商品・新事業開発の職務はもちろん、営業職や管理職であっても開発的に新しいことに臨む能力が求められ、またどの仕事であっても「前提を鵜呑みにせず自分の頭で考える」能力が共通して必要になる。  イノベーションの基盤であり起点になる、こうした能力開発への投資が攻めの人的資本経営の橋頭保だとすれば、まず最初にやるべきことは、社内のイノベーション人材を発見することではないか。こうした「新しい領域を切り開く能力」は、階層と分業で合理的効率的に組まれた企業組織では原理的に見えなくなってしまうからだ。多くの企業では、誠実と協調を旨とし、役割とルールに従い、組織として成果を出すことが行動原理であり、出る杭はうたれ、斬新な発想や価値観の異質性は捨象される。そうした根強い協働スタイルによって、持っていたかもしれない人々のイノベーティブな能力は身を潜め、摩耗していったかもしれない。まず、現有のイノベーション人材リソースを把握し、新たな調達や効果的育成を計画化するとよい。  では、日常の仕事ぶりや人事評価では分からない、隠れたイノベーション人材をどう見極めるか? イノベーション人材に必要な思考力とは、正しい答えに到達する収束的思考ではなく、VUCA状況のなかで、俯瞰し様々に発想し仮説化する発散的思考力。そうした思考力レベルの、第三者視点による評定には3つの方法がある。 ① 行動から思考力を「推察」する(=シミュレーション演習によるアセスメントセンター方式で「創造性」 や「変革指向」といった思考系ディメンションに着目する)  ② 過去の経験から思考力を「判定」する(=インタビュー・アセスメントにより定性的に判定する) ③ 思考力そのものを「評定」する(=正解のない問いに対する回答を評定する)  ひとつめのセンター方式アセスメントは、「思考=頭の中でどう考えているか」は見れないので、発揮行動からの「推察」にとどまり、二つ目のインタビュー方式は、例えば、創造性を発揮するような仕事経験が一切なければ、創造力は判定し得ないといった限界がある。有効性が高いのは三番目の思考力そのものの評定である。これは、自身の考えを結論だけでなく、どう考えていったかを含めて書きだした文章を解析する方法(Think Aloud Assessment)だ。  ここで使われる、「正解のない問い」とは、たとえばこんなものだ。  下記は、武将・伊達政宗が残した言葉と言われています。これは、彼のある苦い経験、あるいは成功体験に基づいているとします。その具体的体験をあなたなりに想像し、できるだけ様々な可能性を書いてみてください。 「大事の義は、人に談合せず、一心に究めたるがよし」(意味:大切なことは人に相談せず、一人で悩みぬいた末に結論を出すほうが良い。)  この答を、結論だけではなく思考プロセスを含めて、文章として書かせる。そこで、どれだけ発想を広げ、推論し、仮説をつくれているかを評定する。この方式が変わっているのは、制限時間を設けないことだ。好きなだけ考えて書いてもらってよい。ときに次々にいろいろ思いついてやめられなくなる人がいる。問いの答えを考えること自体が面白くなってしまうのだ。つまり、内発的動機付けが働き、たくさんの言葉を書き連ねてしまう。  内発的動機付けが創造性発揮のエンジンであることが創造性研究で明らかになっていることを考えれば、この方法の妥当性はあきらかなのである。 ※この手法=Think Aloud Assessmentについては、 下記当社セミナー・外部イベントにて詳しくご紹介をいたします。 ・2024年10月17日開催 : 当社主催セミナー 「イノベーション人材をどう発見するか?」 ・2024年11月  6日開催 : 日本の人事部主催 HRカンファレンス

ハイパフォーマの要件 | 人材育成方針策定

ハイパフォーマの要件

 人材開発の仕事で、360度診断を使うことが多い。  よく、「部下からの評価などあてにならない」、「考課したことないから基準がバラバラ」、「好き嫌いが入り込む」といった理由をあげ、360度診断を否定する声も聞くが、それは当たらない。確かに、「マネジメントとは何か」を知らない部下が、自分の基準で主観的に付ける上司の「点数」は、うのみにできない。しかし、360度診断は、点数の高低をみるものではない。集計された周囲評価の項目間のバラつき方とその自他ギャップに意味がある。  個々人がつける点数水準はどうあれ、項目間の差を集積した周囲者評価のカタチ(=項目ごとの点数の折れ線グラフ表示)によって、できている(と周囲が感じる)項目とできていない(と周囲が感じる)項目が特定できる。加えて、本人の自己評価のカタチを重ねてみることで、行動課題がさまざま浮かび上がるという仕掛けである。  たとえば、周囲評価の(相対的に)低い項目と自他ギャップの大きい項目にまず着目する。対象者の全体傾向としてみるのであれば、それがその層の育成課題を検討する材料となり、個々人でいえば、本人みずから、その理由を内省し、行動変容へのきっかけとするといった研修内での使い方が一般的だ。  多くの会社で360度診断をやっていて、実に興味深いのは、ハイパフォーマに決まってみられる“外形”があることだ。まず、周囲評価のカタチと自己評価のカタチが相似している人は、だいたいできる営業マンだったり、優秀なマネジャーだったりする。つまり、自己認識がちゃんとできている。  さらに成果を上げている人に特徴的な外形は、自他が相似したうえで、自己評価のカタチは、周囲より大きな振幅になっている。つまり、できている項目は、自身ではもっとできているという高い点だし、できていない項目の自己評価の点は極端に低い。出来不出来のメリハリが、周囲評価よりも効いているのだ。  自己認識が正しいうえで、強い自信と強い課題感の表れと思えば、それが優秀さを示すひとつの要件として納得できるのではないか。このことは会社が違ってもほぼ例外なくあてはまる特徴だが、加えて、ハイパフォーマ分析(=パイパフォーマを特定してもらい彼らに共通する特徴を抽出する分析)を行えば、その会社ならでは優秀人材の要件も分かるから、こうした診断から見えてくることは、能力や行動の課題以外にもさまざまある。  毎年、管理職評価用に診断を実施していたある金融機関では、なかなか含蓄深い特徴がみられた。360度診断は周囲評価としてひとつにまとめてしまう場合と、上司、同僚、部下といった評価者属性ごとに結果をわけて表示する場合がある。この会社では、上司、同僚、総合職部下、一般職部下の4つに分けて周囲評価集計を表示していた。  傾向としては、同僚評価はとくにそうだが、総じて甘い評価で、上司評価以外はあまりメリハリがつきにくい(銀行でしばしば見られる傾向ではある)。そのなかで、ハイパフォーマに共通する特徴がひとつあった。それは、上司評価のカタチと一般職部下のカタチがそっくりだったということである。  これは2つの意味で示唆的である。  まず第一に、上司の目にも、一般職部下の目にも同じに映るような、分け隔てない振る舞いが、ハイパフォーマの特徴だという点。常に、誰に対しても変わらぬ行動、とくにヒエラルキー的役割分担の堅固な組織における振る舞いとして、なるほど、と思わせる。  もう一点、注目したいのは、一般職の方々の観察眼の鋭さである。同僚や総合職部下といった周囲者が、防衛的だからか、互助的なのか、中心化傾向で変化に乏しい評点をつけているなかで、上司同様のエッジが効いた評価をしている。いかにも情緒的でないきっぱりしたメリハリが見える。一般職の方々の雇用環境や仕事スタンス、価値観など、この的確な視線の理由としていろいろ推察できることもまた、360度診断ならではの醍醐味である。