ダイバーシティ推進の3つのポイント
「ダイバーシティ推進を進めるためにはどのようにしたらよいでしょうか?」以前ダイバーシティコンサルタントという立場で各企業の人材開発・組織開発に携わっていたころ、最も多く受けたのはこのようなシンプルな質問であった。
2023年のノーベル経済学賞は、男女の賃金格差についての包括的な研究を行った米ハーバード大学教授のクラウディア・ゴールディン氏が受賞した。日本でもメルカリが自社の男女の賃金格差を公表するなど、男女の賃金格差についての議論も多くなっている。 だが、日本はジェンダーギャップすら解消できていない。2023年の日本のジェンダーギャップ指数は世界125位で過去最低と世界標準から程遠いのが現状だ。
また、DEI(Diversity(ダイバーシティ)、Equity(エクイティ)、Inclusion(インクルージョン)の頭文字)という言葉を聞くことも多くなっており、ギャップの解消や平等性や公平性が混在して議論されているなど、各企業の取り組み状況はバラバラである。
ジェンダーギャップすら解消できていない状況の企業も多くあるが、成功するための3つのポイントを紹介したい。
➀経営上重要な戦略としてのダイバーシティを明確に位置づける
社会的な要請から取り組む企業は多いが、あくまでダイバーシティをポジティブな変化として捉えイノベーションの創出や成長機会として捉えることが重要だ。
公平性が担保されているかどうかという各企業が取り組んでいる現在のステージから、
視野・視座を上げて組織力強化やビジネスシーズの創出という、成長機会の取り組みとしての早期のステージ転換が必要となる。
➁ダイバーシティ推進管理職へ浸透させ、管理職の実行力を高める
中期経営計画にダイバーシティや女性活躍推進を盛り込んでいる会社は多いが、戦略や内容が各管理職に浸透していない会社が非常に多い。
なぜ自社がダイバーシティに取り組むのか共通言語化されていない会社は多い。
ダイバーシティ推進を進めるためには、ダイバーシティをどのように職場で推進し、成果に繋げるか管理職に腹落ちさせることが必要である。
また、視座や視野を高めるためにダイバーシティをテーマとした管理職への教育機会も必要。
➂成功事例を社内で作り、社内外に情報発信する
カルビーの女性活躍推進事例(※1)が、非常に分かりやすい事例であるため、ここで紹介したい。カルビーは、顧客である消費者の半分は女性だから、女性の意見を取り入れて企業経営をするために、女性の管理職比率を多くすると、トップからメッセージを発信した。
その結果商品として生まれたのが、「フルグラ」。今では売り上げを支える重要な柱となっている。もちろん、イノベーションだけではなく、女性で時短勤務の執行役員を置くなど、戦略推進を支える組織作りも同時に行っていた。旗振り役であったトップが、結果を社内外に発信することで、カルビーは女性活躍推進を推進している企業であるというブランドイメージも獲得した。
社内外の結果のアピールは、浸透を進める上でも効果が大きい。
人的 資本開示の義務化など、社会的な要請が強くなり取り組んでいる企業も多いが、旗振り役であるトップからのシンプルで継続的な分かりやすいメッセージなど、一過性のものではなく、ダイバーシティは企業成長の源泉として継続して取り組み続けることが必要である。
経営層や人事・ダイバーシティ担当の皆様と共に解決できるように伴走していきたいと思う。
※1 筆者による関係者ヒアリングと併せて、以下を参考:カルビー、7期連続の最高益の裏側に「女性の活躍」あり | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
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