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column

「わからない」を許さないオンライン研修

 集合型研修は姿を消し、各企業の社内研修は、オンライン研修一色となりつつある。まずは「密を避ける」という社会的要請に合わせられ、かつWEB会議アプリケーションをうまく使えば、集合研修の効果を「集合するコスト」なしに得られるという、いわば対症療法としての一斉実施といえるだろう。

 ともすると、集合研修の代替可能性とコスト効果だけが喧伝されるきらいがあるが、オンライン研修ならではの効用は、実はかなりある。そこを意識した設計と運用を行えば、従来型集合研修の多くはもはや戻る気が起こらない旧型研修にみえてしまうほどだ。

 オンライン研修の最大の効用は、座学ではなくトレーニングとして手を動かし、参加者一人一人が理解しスキルアップする――つまり、「反復学習」性と「個別指導」性がいかようにも組み込めるということだ。

 集合型研修ではときに、「その場ではわかった気になるが、仕事に戻るとわすれてしまう」といった身もふたもない反応や、「なにより他部門の人と話せたのがよかった」と研修目的とはズレた満足度の高さになったりもすることがある。

 そうした行事的研修を排し、実効性の高い研修にするためには、①事前の課題把握(調査や測定による受講生の行動課題の特定)を行い、②その課題解決につながる実践的な研修(絞り込んだスキル教育とリアルな職場課題の演習)を組み、③事後の行動実践を踏まえた効果測定、という「事前・事後まで含んだ設計」にするというのが、常套手段だ。つまり、真の課題にミートした研修を行いその実践状況を追っかける。

 それでも肝心の研修自体は、集合させ一日で終わらせるという制約上、どうしたって、なるべく多くの人の理解度向上/スキル向上はできても、全員がそれぞれにレベルアップするところまでは追求できない。ところが、オンライン研修では、受講生の理解度を都度把握しながら、レクチャー内容を調整し、個々の演習のアウトプットを踏まえてできるようになるまで反復訓練をすることができる。要は、きめ細かな理解状況適応と個別指導により全員のスキル向上を結果しうる可能性があるのだ。

 研修は、A.レクチャーパート(=インプット)とB.演習パート(=アウトプット)とC.演習の解説・指導パート(=フィードバック)の3つで構成される。A.レクチャーパートをとってみても、集合研修でも単に講師が話すだけではなく質疑をうけつつインタラクティブに進めるのが講師ワザだが、オンラインでやるとすれば、多彩な双方向性と個別性を仕込める。

 たとえば、講師が15分ほど話したら、全員に理解度や個別課題に関する問い(=アンケート)を出し、全員の回答をすぐにグラフ化して提示したり、題材となる回答を紹介して論じたりする。理解度の低い人たちをグルーピングし、のちのB.演習パートで、そのグループには固有のレクチャーや演習を課して分からせるといった運用をしたりする。

 レクチャー中でも、チャット機能で常時質問や不明点を受け付け、講師が必要と判断したら、説明を加えたりする。受講生の表情がはっきり見えるので、首をかしげていたり集中してない顔つきに気づけば、講師から指名して質問したりするから、皆真剣にならざるを得ない。手を変え品を変え、理解度を確認されるから、「よくわからなかったけど、、」、とか「なんか違うと思うけどまぁいいや」と研修を終えることは許されないのだ。

 加えてより重要なのは、反復学習の全面展開だ。上記のA→B→Cを小さなサイクルで繰り返したり、都度スキルレベル別にわけたグループごとのサイクルを回わすなどでしつこく習熟を図る。移動して集まる負荷がないだけに、1日研修ではなく、3時間程度の研修を2~3回に分けてやるなど、短時間研修×複数回の連続研修を様々に組むのがよい。

 連続研修として組んだら、各研修後に事後課題を課し、そのフィードバックを(とくに課題ある受講者には)個別にWEB面談で行い、意欲喚起とスキル向上を直接支援するとなお効果的だ。こうした反復学習は、とくに、新任管理職向け評価者研修など、徹底した評価の体感理解トレーニングとしてお勧めしたい。

 集合研修と同じコンテンツの流用や従来型の職人講師ではこの意味での研修効果は望めない。反復性と双方向性と個別対応を最大化するには、アンケートシステムの組み込みや柔軟なグルーピング法など綿密に設計されたうえで、「状況適応運営に長けたオンラインコーディネータ」と「全員もれなくわからせることに執着する講師」とのタッグでの運用が必須になるのである。

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