©️ Transtructure Co.,Ltd.All Rights Reserved.

MENU

©️ Transtructure Co.,Ltd.All Rights Reserved.

column

経験者採用に即戦力を期待しない

 昔は35歳を過ぎると転職は無理と言われたものだった。しかし今や35歳以上の転職は全転職者の過半数を占める(2019年「労働力調査」)。倒産などの外的理由だけではなく、よりよい条件を求めての転職が増えているという。経験を積んだ専門性の高い業務や役職者といったベテラン勢が、さらなる活躍を求めて転職するキャリア採用・経験者採用が増えていると思われる。

 経験者採用が増える一方で、「凄い経歴の方が採用できたが、数カ月で辞めてしまった」というミスマッチ・早期離職の話もよく聞く。筆者自身、30歳を過ぎてから3回転職をしたが、1社は半年で退職した。苦い経験だった。どうすればミスマッチ・早期離職を防ぎ、経験者採用の活躍を促せるだろうか。

 ミスマッチを防ぐために、入社前の情報開示や何の仕事を担当してもらうのかのすり合わせの重要性はよく語られている。しかし、事前に伝えることには限界があるので、むしろ入社後の対応の方が決定的だろう。入社後の対応のポイントとして、私は「即戦力を期待しないこと」「ビジョンをすり合わせること」の重要性を挙げたい。

 経験や知識が重視される経験者採用において即戦力を期待しないのはおかしいと思われるだろうか。実際、私も「入社後3カ月のハネムーン期間に、目立つ成果が出せると良いね」というアドバイスを受けたことがある。

 しかし、本来、経験や知識があるということと、それを業務で発揮できるというのは別の話だ。新しい会社のシステムの使い勝手や、使えるリソースなどの制約は入ってみないと分からない。経営者から「これまでの経験を生かしてぜひわが社を変革してほしい」と口説かれても、現場のメンバーからは冷ややかな視線。意思決定の流儀などの「仕事の仕方」も学ばないといけない。能力発揮以前に乗り越えるべきことが多々存在するのだ。

 であれば、いっそ入社後しばらくは、「成果は出さなくてよし」と宣言して、能力発揮のための環境整備と適応に専念する期間としてはどうだろうか。これが「即戦力を期待しないこと」の意味だ。

 その代わりに、この期間にはこまめに上長とミーティングを持ち、ビジョンをすり合わせることに時間を使うべきだ。会社の現場を知った上で、改めて自分は何ができるのか、会社は何を期待するのかを話し合う。今の業績を上げることだけでなく、中長期的な会社の成長のために共に考える。転職者からすれば、そのように自分の経験や知見を聞いてもらえることは、入社してよかったという思いにもつながる。

 役職者として転職し活躍されている方に話を伺うと、3年、5年というスパンで成し遂げたいことの計画を描いている。また上司と中長期的なビジョンを話し合っている。いずれも「即」ではないのだ。経験者採用に「即戦力」という呪いをかけるのは、もうやめよう。

コラムを読んだら投票を!

コラムをお読みいただきありがとうございます。 今後、さらに興味深いコラムの提供やセミナーテーマの参考とさせていただきますので、ご感想の選択をお願い致します。
※投票いただくと、これまでの感想をグラフで見ることができます。

このコラムの平均評価

投票いただくとこのコラムの評価が表示されます。

点/5点
  • 大変興味深い
  • 興味深い
  • ふつう
  • つまらない
  • 大変つまらない
このコラムの感想
  • 大変興味深い
  • 興味深い
  • ふつう
  • つまらない
  • 大変つまらない