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column

数字で見る女性活用の現状

 一歩社外に出ると、女性でも活躍できているのはなぜか、といった質問を受けることがある。筆者は、「女性“なのに”活躍できる環境」ではなく、「性別を意識せず1人の職業人として仕事ができる環境」こそが「女性活躍」なのではないかと考える。

 当社には、男性用・女性用の仕事、といった概念や暗黙のルールが無く、個人の属性で仕事の割り振りや役位が決まることも無いため、性別を強く意識せずに働くことができる 。(注1)
“何歳か・性別がどちらか”ではなく“できる人ができることをやる”、つまりは単に職務に見合う経験や能力を持つ人に仕事・役割を付与する単純な構造である。

 労働人口統計等を見ると、こうした環境は、日本の平均的な企業の現状と大きく乖離していることが明らかだ。性別や年齢に全く関係ない役割の付与は、読者の皆さんの職場においてイメージし辛いことが実態ではないか。

 ここでは、現時点の日本では、就業環境の男女差が大きい。統計値を参照し、差がどれほど大きいかを確かめる。さらに、経営者・人事担当者の皆様が性別による役割の違いが生じてしまう理由を調べたいと考えたときに取り得る最初の策を紹介する。

          【図1】雇用者、正社員・正職員、管理職における男女比
         出典:厚生労働省「令和5年度 女性の就業状況」「令和5年 賃金構造基本統計調査」

 図1の円グラフでは左から順に、「雇用者」「10名以上規模の法人の正社員・正職員」「管理職(部課長)」の男女比を示している。雇用者全体では、女性の比率は46%と半分弱であり、人口比に近い(図1左)。しかし、正社員・正職員に絞ると、女性比率は1/3まで下がる(図1中)。非正規雇用で働く女性が多いためだ。さらに、正社員・正職員のうち、管理職に占める女性比率はたった13%まで下がってしまう(図1右)。

 (注1)育児や介護等個人の事情で働き方を調整することはでき、活用する社員も一定数いるが、性別による活用状況の偏りはない。

               【図2】男女別就業状況
           出典:厚生労働省「令和5年度 女性の就業状況」「令和5年 賃金構造基本統計調査」

 図2のように、労働人口全体から正社員、管理職へと絞り込まれる強さを上の漏斗グラフで見比べることで、男女の違いを視覚的に捉えることができる。例えば、上から2段目の雇用者と3番目の正社員・正職員の人数ギャップを男女で比較すると、女性の方が正社員として労働するハードルが相対的に高いと言える。

 さらに女性の管理職は総労働人口のうち、たったの0.5%しかいない。女性の管理職に出会ったことが無い人が居ても不思議では無い数字だ。同一職務であれば男だろうが女だろうがやるべきことは同じはずだが、労働市場にほとんど存在せず、遭遇したことも想像したことも無いが故に、「“女性が担う”管理職って果たしてどんな仕事だろうか」と疑問が生じてしまうのも致し方ない。

 当然男女で同一の人事制度を使っているはずだが、管理職登用率における男女差が大きい企業は多い。2つの視点で原因を探ることができる。

 まずは、業務アサインメントの観点である。同じ制度下であっても、実態は性別による役割付与をしていることが多い。業務量調査を実施し、同一職種・等級内の男女に割り当てられた業務の内容や量を比較することで実態を把握可能だ。

 もう一つは、社員自身の志向性である。入社当初のキャリア展望自体に性差があるケースと、入社後に女性のキャリア展望が削がれるケースがある。後者は、性別分業的な働き方や管理職の高負荷を目の当たりにし、キャリアアップを望まなくなる状況である。エンゲージメントサーベイなどで把握することができる。

 女性活躍を推進されたい企業は、“良くある女性活躍推進施策”を展開する前に、業務量調査、志向調査、エンゲージメントサーベイなどを活用し、自社の業務・役割付与の癖や思考傾向・風土、社員本人のキャリア展望を把握し、実のある施策の検討ができると良い。

以上

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