異なる期間
日本企業の将来は手放しで明るいものではありません。国内市場は総じて縮小傾向にあり、競合に打ち勝っていくことが生き残りのために重要になります。またより成長するためには海外へ進出を加速させることも考えなくてはなりません。市場環境の変化とともに労働市場でも劇的な変化が始まっています。少子高齢化が進行し、社員の平均年齢が徐々に高くなってきます。高齢社員が多くなり若年社員が少ないということですが、これは企業の活性化の維持という観点や、高齢化した社員でより高いパフォーマンスを挙げなくてはならないという、過去の人事問題にはない非常に深刻で重大な問題が起こるのです。厳しい市場環境で成長しなければならないが、同時に高齢化、働き手の不足に対応しなければならないのです。
現在多くの企業で、50歳台の社員が多く30歳、20歳台の社員が極端に少ない人員構成が見られます。そのため発生している問題は、高年齢化による人件費の向上や管理職社員の必要人数以上の増加などが深刻です。また若手社員の不足についても非常に深刻であり、ここまで若手社員が少ないと到底直ちに解消できる問題ではありません。
現在起きている高齢化の問題を正しく認識しなければなりませんが、この問題は時間の経過とともにより深刻さを増していきます。将来の予測を行うと、先ほどの高齢化が進行している企業では今後約20年近く高齢化問題に悩まされることが定量的にわかります。
このような歪な人員構成となった原因はいくつか想定できます。その一つが経営責任と雇用責任の期間が異なることにあるでしょう。経営者は通常4年から6年程度の経営責任を負います。企業の雇用責任は大学新卒社員を一人雇用すると65歳まで実に43年間の雇用責任が発生します。この期間が異なることが人員構成の問題を発生させる一つの原因なのです。時の経営者の経営的判断が雇用責任の期間と合わないために経営的にOKでも人事的にはNOであることが発生するからです。
代表的であるのは新卒の採用人数でしょう。正社員は企業のノウハウや技術、文化を継承していく幹部人材であるので、本来的には緩やかな台形型の人員構成が望ましいです。したがって業績が悪いときに新卒社員採用を抑制するのは、短期的コストカットという観点からは経営的に正しいのですが、企業の中長期の成長を維持向上するための人材基盤という観点では正しくありません。逆に短期の業績がよいからといって新卒社員を大量採用する経営者もいます。これも一年の収入が多いからといって43年ローンを多く組むことがナンセンスであるように、雇用責任という観点ではナンセンスです。
経営者、人事は短期的な最適化を求めることの視点も重要ですが、それに偏重し過ぎると、後の企業や経営者、人事が非常に困るのです。継続的に発展する企業を造ることも経営者の重要な役割であり、短期の経営責任と長期の雇用責任の両方を担っていることを再認識しなければならないということです。
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