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column

集まる力

 教育研修は、実践的でなければならない。実践的とは、研修の効果がはっきり出ることを意味する。

 “効果”には二つあって、第一に、学んだスキルを実務で実際に活かす、あるいは以降の行動が変わることだ。そのためには、研修のなかでは、机上のケースではなく、実際の職場や個人の課題の解決策をアウトプットさせるのはもちろん、研修の後には事後課題を課し、職場での実践を強制し、結果をレポートさせ指導する。あるいは、作成した行動計画を定点チェックで指導するといった、研修だけで終わらせないマネジメントラインに組み込んだフォローの仕掛けを用意することが不可欠だ。

 もう一つの効果とは、個々人が実際に成長することである。そのためには、一連の研修を通じて、個別評価、個別指導を行いながら、一人ひとりの育成課題の可視化と弱点補強を行っていく方法をとる。評価は、研修行動をアセスし、また事後課題や論文課題などの評定を通じて行い、個別カルテ化する。次世代リーダー育成プログラムなどがその典型で、そうしたOff-JTでの評価と業務遂行上の評価結果を定期的にすり合わせ検証することも重要である。

 こうした方法により、“効果”に腐心しながら、多くの企業の人材育成のお手伝いをさせていただいているが、一方で、研修そのもののイベントとしての価値が、実は一番大事なのではないか、と日々思う。つまり、業務を離れわざわざ人が集まるイベントであることの意味、意義をもっともっと追究すべきではないか。

 集合研修のひとつの醍醐味は、個々人の相互作用(大げさにいえばグループダイナミクス)である。グループワークの中で、たとえば、言葉にすることで自分の考えが整理され、他者の想いや考えで触発され、議論により正答率の向上を体感する。どんな話し合いでも、コミュニケーションの仕方によって、アウトプットのレベルも変われば、胎落ち度合いがちがう。そうしたダイナミズムが目に見えるかどうかが、研修の成否をわける。

 その効果にあらためて気付かされたのは、アウトプレースメントの現場にいた頃のことだ。当時、離職した人々の再就職を支援するサービスは、担当キャリアカウンセラーがついて、個々人との面談をしながら個別活動をサポートするという形態だった。中高年社員のリストラの結果だから、少なからず悄然とした人もいる中での“個別”カウンセリングというのが常識だった。

 しかし海外ではグループカウンセリングが主体だったので、それをおそるおそる導入してみたところ、はっきりと彼らの活動は“アクセルレイト(加速)”した。目的を同じくする人たちが、不遇の嘆きや怒りを早々に脱し、前向きに活動することを、皆で愉しんでいるようなグループもでてきた。後日、多くの“同窓会”がうまれたりもした。

 考えてみれば、通常は、一人のカウンセラーの意見を聞くだけなのに対し、たくさんの意見や見解や経験に触れられるのだから、良いに決まっている。会社選びや面接といった就職活動も、成功や失敗を共有する学習効果も集団なら大きいし、就職が決まっていく仲間がでてくると、ある種ゲーム的な競争のエネルギーが生まれるという副次的効果もあった(のちにこれは、米国のキャリアセンターで行われる“ジョブクラブ”というやり方と知った)。

 集団のダイナミズムに加えて、非日常的なイベントである点もさまざまなやりようがある。といっても、野外のオリエンテーリングや深夜登山といった安易な非日常イベントでチームワークの原点を学ぶといったたぐいのものには興味がない。あくまでも、仕事の意味や実務のやり方を考える上での刺激になる非日常性の演出だ。

 普段接することのない社長とのセッションにも価値があるし、小学校にいって会社のコア技術を教えるとか、海外からの留学生むけに企業PRするとかも面白い。社会問題と自社の関係についてのチームディベートや、演劇をつくり演じる研修も刺激的だった。ある大企業の管理職研修で、複数の他社の管理職者を映像取材し作成した “番組”を見ながらリーダーシップの議論をしたときも大きな気付きがあり、行動の変容ももたらしたりした。

 研修は、あくまでも、実務での成果を高めるためのものであるけれども、逆に、実務で成果を出した人だけが参加できるような、魅力的で刺激的なイベント(研修)をつくってみたいものである。

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