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column

景気回復基調の中で

先月発表された、我が国の今年4月~6月期のGDP(一次速報値)は、年率4%の上昇で、11年ぶりの6四半期連続のプラス成長となった。人事コンサルティングの現場においても、この景気回復基調の流れに沿って、『採用強化』と『生産性・付加価値向上』に関する議論が活発にされている。

景気回復による業容拡大に対応するため『採用強化』が、人事の最優先課題となっている企業も多く、採用競争力を高めるため、賃金アップを検討する声もよく聞かれるようになった。 賃金アップをすれば、その分、人件費が上昇するので、経営判断は慎重にならざるを得ないところだが、現状の採用難の中で、背に腹は替えられず、賃金アップを前提とした人事制度設計に取り組む企業の数も増え始めているというのが実感だ。

もうひとつ、最近の主要な課題は、『生産性・付加価値向上』である。このテーマは、従前より長く議論されてきたものではあるが、業務の進め方や社員の取組み姿勢など根本的な領域にメスを入れざるを得ない話であり、その実現には相応の時間と経営のコミットメントが必要な事から、結局、本格的な着手には至らぬまま、集合研修等、表面的な施策に終始して、道半ばで、お茶を濁してきてしまった企業も少なくない。

ただ、そのツケは、しっかり回ってきている。 今更言うまでもないが、バブル期の頃、米国の3分の2程度の水準まで届いていた我が国のGDPは、いまや米国の4分の1の水準程度で落ち着いている。我が国のGDPや生産性も、一定の成長はしているものの、他の主要国の成長率からすれば、ゆっくりとしたスピードであり、その結果、国民全体が生み出す価値のボリュームは世界の中で、相対的にずいぶん、縮んでしまった感がある。

こうした状況にも関わらず、内閣府が先日、公表した「国民生活に関する世論調査」では、現在の生活について過去最高の計73.9%が「満足」または「まあ満足」と回答したとの事。そんなニュースを聞くと、我が国の国民の総意として、『控えめな成長で十分』と考えていると捉えた方がよいのかも知れない。

企業も、今までは、控えめな成長を志向する国民性を前にして、生産性や付加価値向上にむけて、大掛かりな手術や大胆な改革を後回しにしてきたのかも知れないが、最近の議論の盛り上がりは、さすがに、そうはいかないと肌で感じているからなのではないか。
働き方改革が進行し、生産性の低さを労働時間でカバーする事は、もうできない。さらに、採用競争力確保のために賃金が上がり、労働時間だけが減少していくようなことになれば・・・。企業業績がまだ順調な今のうちに、組織の生産性・付加価値向上にむけた改革に取り組もうと考える企業経営者が増えているのも当然の事なのだろう。

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