10年後の女性管理職比率
近年の人事管理では社員を、優秀な社員(ハイパフォーマー、以下HP)、普通の社員(アベレージパフォーマー、以下AP)、優秀でない社員(ローパフォーマー、以下LP)に区分して議論することが多くなった。HP社員、AP社員は会社の主力である。この社員にはできるだけ満足度を高くし、社外への流出を防ぐことが求められる。社員をHP、AP、LPに区分するには、昇格のスピードや評価情報を組み合わせるのが一般的である。その結果HP、AP、LP社員の人数や比率を把握することができる。またどこに存在しているかも明確になる。
この会社全体のHP、AP、LP比率をさらに様々な区分で見ると有益な情報を得ることができる。その代表的なものは“女性活用度”である。男性社員と女性社員の発生率を比較することによって、女性活用がどの程度すすんでいるかがはっきりわかるのだ。同じ総合職社員で女性活用が進んでいると言っている企業は発生率が同じような数字であるはずである。
多くの企業で分析した結果、真に女性活用が進んでいる企業では、この比率が男性とほぼ同じである。このような企業では“女性活用”を大きなスローガンにしていないことが多いのも特徴だ。すでに男女という区分なく人事管理をしているので、あえて高々とスローガンを掲げる必要がないのかもしれない。
活用が進んでいない典型的なケースは、女性のLP比率が高い(HPが少ない)というものだ。女性であると無意識に限定的な仕事をさせている企業もある。その結果成長が男性社員よりも遅く、結果管理職社員の発生も比率も少ない。長い間このような女性の限定的な活用しかしてこなかった企業で、突然女性活用を強力に推進しようとしてもうまくいかない。男性と同じような仕事の機会を与え、同じ評価、育成、処遇を継続的に長期間行うことで、同じようなHP,LP発生率になるのであるから、すでに入社して長い女性社員を無理やり活用しようとしても難しいのだ。
女性活用が二層化している企業も少なくない。近年入社した社員に対しては男女の差をなくす努力をしている企業だ。このような企業では、30歳以上の女性社員はLPが多く、20代の女性社員は男性と同じ発生率になっていることが多く、発生率が二層化しているのである。
このような企業では10年後に女性活用の結果が次第に現れはじめる。10年後には女性管理職比率はまだあまり変わらないことが予想される。20年後にむけて女性管理職比率が次第に改善される段階に入るだろう。30年後にやっと女性活用が企業全体として実現するのである。長い道のりである。
最も不幸な例は、スローガン主導で女性を無理に昇格させたり、管理職ポストに就けることである。女性活用を重視するあまりに、女性であることで昇格や管理職登用に下駄をはかせたりするケースだ。女性活用は今後の人事管理で非常に重要であることは疑いようがない。女性管理職比率を高くすることだけが重要な目標だと思わないが、一つのわかりやすい指標として掲げるのであれば、30年後の目標であることを理解しなくてはならない。そのためには今から男女の差をなくす運用を継続して行っていかなくてはならない。女性活用、女性管理職比率向上をスローガンはいまから30年間変わらずに掲げなくてはならない。10年後の比率は変らない。短期の結果を求めることなどナンセンスなのだ。
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