隗(かい)より始めよ
経営者や管理職は日々難しい判断と行動を求められているため、それをアシストしてくれる部下をうまく育てていかなければなりません。ただ、部下が全員経営について論じていいのかというとそうではありません。それぞれに見合った役割を与えることが必要です。
たとえば、新規開発をやっていく部門であれば、今までの常識では思いつかないような閃きが仕事につながってくるだろうし、事務部門であればミスなく迅速に仕事をすることが求められます。つまり、柔軟な発想を持ってプランニングをする部下が必要であると同時に、地道であっても仕事をキチンとこなし続ける部下も必要なのです。
AI人材とかベンチャー気質とか様々なスキルが言われていますが、そういう優れた能力を持っている人材は実際にはほんの一握りでしょう。大抵はコツコツと仕事を進め、成果を出すという人です。そういう人がいなければ実際のところ会社は回らないのです。
組織をトータルで見て、経営にとって必要なスキルは何なのか、そのスキルを持った人にどういうことをやってもらえばいいのか、ということを決めるのはトップの判断です。
「能力発揮による評価」という評価軸がありますが、それは会社にとって独創的な人材が何パーセント必要か、地道な仕事をする人材が何パーセント必要かを考えてそれぞれに見合った評価を実施することが求められます。独創的な仕事で成果を出しているか、地道な仕事をキチンとこなしているか、それぞれの人にそれぞれの能力を測る物差しが必要ということです。
最近の若手社員は、仕事は楽しんでやりたいとか、自己実現をしたいとかがベースにあり、その望みがかなわないのであれば会社をあっさりと辞めてしまうほど、その物差しは重要なものになっています。こういった社員をどう使っていくか、組織管理において経営トップや管理職は一層考えなければなりません。それぞれの個性に対して、どのような要求をするのか、どう育成していくのか。そのために会社はどの方向へ進んでいくのか、何を目的とし、何を理想とするのかを明確にしていく必要があります。いわゆる企業のビジョン、グランドデザインが不可欠ということです。漫然と能力評価といってもコンセプトがなければ重みがありません。
企業の経営計画の達成と成長は、経営に必要とされるスキルを保有する人材が必要なだけ配置され、かつ継続的に生み出す仕組みであること、そして人材が期待される行動や意識をもって活躍・成長し続けることによって実現できるのです。「隗(かい)より始めよ」というようにトップから始めないと成長はできないでしょうし、魅力ある会社にはなれないのです。
以上
隗(かい)より始めよ
〔「戦国策燕策」にある郭隗(かくかい)の故事。隗が燕の昭王に、賢臣を求めるならまず自分のようなつまらない者を登用せよ、そうすれば賢臣が次々に集まって来るだろうと言ったことから〕
1)遠大な事をするには、手近なことから始めよ。
2)転じて、事を始めるには、まず自分自身が着手せよ。
三省堂 大辞林 第三版より
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