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column

イノベーション人材とは誰か その2

 イノベーションのためには
  ① イノベーションの種(タネ)となる斬新でユニークな発想で創造的アイディアを生み出す人材
  ② それが排除されず生かされる環境をつくる、そのように職場をマネジメントする人材
の2種類の人材がいる。その後者、管理職者たるイノベーション人材について前回、書いた。(→『イノベーション人材とは誰か その1』

 では、前者、そもそものイノベーションの種(タネ)を生み出す人材とはどういう人材なのか。優れたアイディアマンや誰も思いつかない突飛な発想に優れるというだけではイノベーション人材にはあたらない。新しいアイディアはイノベーションの種(タネ)にすぎない。事業や組織の変革につながる芽へと発芽させることができて初めて「ビジネスイノベーション」の可能性が兆すからだ。ビジネスイノベーションの端緒を作りだせる人材には、柔軟で斬新な発想力とは別の、ビジネスセンスをもって種を見極め発芽にむけてアクセルを踏み果敢にドライブする能力が必要である。
 
 別の能力とは、起業家的能力だろう。「新結合」という言い方で経済発展に不可欠なイノベーションを初めて提唱したシュンペーターは、その担い手を企業者とし、経営管理者と区別した。この文脈で彼のいう企業者とは、起業家に他ならない。その要件は、
  ① 物事を見極める独特の視点 
  ② 不確定でも抵抗があっても一人率先して取り組む実験精神 
  ③ 周囲を巻き込み従わせる影響力
と解釈できる。それがビジネスイノベーションの原動力だとすれば、こうした資質と能力を有する人たちが(芽を生み出す)イノベーション人材と言ってよい。

 人材要件からいってあきらかに、統制的なマネジメントや階層別の一律教育から、イノベーション人材は生まれない。ゆえに、前回書いたイノベーション(喚起)人材としてのマネジャーが要請され、教育施策としては、資質ある人材を選別し、能力を高め、試行実践を繰り返すような特別なプログラムが組まれるべきだろう。
 教育プログラムのポイントは、
  第一に、自ら新しいアイディアを生み出すのではなく、すでにある兆候や発想の可能性を洞察し見極めること。
  第二に、実験と仮説検証を繰り返しそれを経営検討に値する「芽」に仕上げること。
  第三に、その試行を自ら周囲に働きかけ交渉し巻き込んでやり遂げること。
こうしたプロセスそのものを、たとえばアクションラーニングとしてしつらえ、起業の芽の強制的な発芽促進装置とする、といった趣向が考えられる。

 さて、その育成装置に放り込む人材をどう選ぶか。誰が、鍛えがいのある候補人材たりうるかを、どう見極めるか。人材要件を要素分解して、その能力や資質を持つ人材をアセスメントするのが順当な方法だが、もっとも重要な候補者の条件は、「自分のビジョンを持っているかどうか」である。その人に問うビジョンとは、所属する組織や会社のビジョンでもなく、自身のキャリアのビジョンでもない。自身の仕事のビジョン、つまりは自分の仕事でなにをなしたいかという強い願望である。自分がどうしたいかという強い想いであり、主体性自律性のエンジンである。

 そもそも、イノベーションに通底する「創り出す」という行為は、任務とか命令といった受け身では駆動しえない。自身の持っているビジョン(=想いや願望)が、その目的の意味に共振・共感して初めて、寝食忘れてコトに対峙し考え抜き試し続け、結果、「なにものかを創りだす」ことができるからである。

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