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上司のモチベーション | その他

上司のモチベーション

 とかく制約の多い職場環境になり、役員や管理職の方はさまざまな気遣いが必要になりました。時間管理の厳格化、パワハラやセクハラへの注意、多様な雇用形態への配慮、退職リスクの回避など、部下に対していろいろと気を使わなくてはなりません。ある意味では成熟した社会になったと言うことですが、逆に言えば個人の権利主張が強くなり、会社の方針の徹底や部下への指導がゆるくなってしまうのかもしれません。  上司の方針や指示を十分に理解して積極的に業務を推進する社員ばかりであればよいのですが、残念ながら社員一人一人個性や特徴があるので、上司の考えに賛同して、上司が求めている行動をとる人ばかりではありません。期待しても裏切られることも多くあるでしょう。このように期待する行動や成果が出ない社員に対しては、十分なコミュニケーションをとることは教科書的に重要ですが、平穏で対等なコミュニケーションをとり続けても、なかなか行動変容しない、成果が現れない社員に対しては、強い指導になっていきます。しかし指導の強弱の度合いは、部下のモチベーションを配慮しなければなりません。あまりにも強い指導をする事で、モチベーションが低下して離職してしまうリスクもあるからです。部下のモチベーションを過度に気にすると、上司のフラストレーションも上昇します。そもそも組織の目標を明示して、妥当な計画を提示し、日常の業務の指示を行う中で、ついてこれない、ついてくる意思が稀薄な社員に、ある意味迎合しなければならない状況とも言えます。  企業がより活性化しより成長していくためには、役員や管理職の能力が高いとともに、モチベーションが高くなければなリません。組織内では上司部下ともモチベーションが高いことが理想ですが、敢えて優先順位付ければ、上司のモチベーションのほうが重要ではないでしょうか。上司のモチベーションが低ければ、その組織は目的的でなくなり、パフォーマンスは向上しないでしょう。事業に対する高い意識があってこそ、活性化した組織になるのです。しかし現実には権利主張が強い、能力が足りない、モチベーションが高くない部下が存在します。その部下に対して多くの制約を感じながら指導しなければならないことが上司の組織運営のモチベーションを低下させていいます。 人事管理の議論の中でモチベーションに関する議論は非常に多く見られますが、部下のモチベーションよりも上司のモチベーションがあまり重要視されていないように感じます。流動化が進んだ現在においては、仕事への意欲や能力が足りない社員、しかもいつ辞めるかわからない社員に対し、上司のモチベーションを減殺してまで、雇用をする必要があるのかという議論までも耳にするようになりました。企業が営利団体である以上、方針や計画を徹底することが重要なマネジメントとなります。まさに企業の生命線です。世の中のあまい就業意識やローパフォーマー社員への過度な配慮で、役員や管理職の貴重な時間や能力を使うのは全くの無駄です。部下のモチベーションより上司のモチベーションが重要ではないでしょうか。

キャリアコンサルタントの憂鬱 | その他

キャリアコンサルタントの憂鬱

 平成28年に、キャリアコンサルタントという国家資格が発足した。ベトナム帰りの若者向けの職業相談の仕組みを米国から輸入し、改造してできた制度のようだ。訓練された専門家が、職場で悩みを抱える人々の相談に乗り、問題解決の後押しをする。我が国において、このことは、政府の働き方改革の政策と軌を一にしている。すなわち、女性、高齢者、外国人、病気治療者等の労働参画をより容易にしようとする狙いが、その底流にある。    国家試験に向けて訓練中の人に話を聞く機会があった。キャリアコンサルタントは、「傾聴」をそのスキルの中心に置くのだそうだ。悩みを抱える人の話をひたすら聞く。本人の立場にたって、本人と思いを共有しながら聞く。そうしたプロセスを通じて、本人は悩みから解放され、課題に立ち向かう勇気を得、自ら解決策を見出すという段取だ。  数多くの傾聴演習をこなしてきた30代の彼は、しかしながら、相談者が投げかける悩みに寄り添うどころか、早々に愚痴を吐露する。  「彼らは甘いですよ。『定年後のキャリアプランって一体何のことだ、考えもつかない』とか、『事業を閉じるから別のキャリアを考えろ、なんて約束が違う』とか、自立的にキャリアを考えることを放棄して、全部会社や世の中の仕組みのせいにしているんですよ。」  このキャリアコンサルタントと相談者との間には、キャリア形成に関する大きな断層が生じてしまっているようだ。  今定年を迎える年代は、経済成長期の終わりごろに会社に入った人々。定年まで勤め上げ、職場のみんなから花束で送られて、普段は入れない会社の迎賓館で食事をしたり、二泊三日の旅行券をもらったりして、ハッピーリタイアをするのが当然のシナリオだ。しかし、高齢化と産業構造転換の時代にあって、様子ががらりと変わってしまった。「約束が違う」と感じるのも無理はない。  だが、考えてみると、仕事上の事柄であれ、何であれ、ものごとが思いどおりに運ぶことなどあまり無いではないか。仕事の九割方は、何やら予測もつかなかったことが起きて、邪魔が入り、思わぬ苦労を強いられたり、失敗したりするのが常だ。まして将来のキャリアプランなど、うまく行かなくて当たり前だ。  特定のキャリアゴールに強く固執し過ぎると、環境が変化するたびに右往左往し、文句を言い、気を落とすことになる。これでは、幸福な職業生活など望むべくもない。何かが起こった時、自ら考え、自らの価値観に立ち返り、キャリアゴールを変化させられるような柔軟性と胆力を身に付けることが、今の時代の職業人に必須なのではなかろうか。  さて、「傾聴」の技が、どこまで相談者のキャリア問題の解決につながるのか、筆者にはどうもよく解らない。だが、もし、キャリアコンサルタントが、「人生何が起こるかわからりませんから、今のゴールにそんなに拘らなくてもいいのですよ」と語りかけてくれるのならば、きっと多くの相談者の役に立つことだろう。  俳人の正岡子規は亡くなる一年前から日記をつけたが、その中に、「悟りというのは平気で死ぬことかと思っていたのは間違いで、何があっても平気で生きることであった。」というような意味のことを書いている。何があっても平気で生きているようなビジネスマンが増えたら、仕事の世界はもう少し活き活きとした場所になるかも知れない。 以上