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column

「45歳定年」発言の何がいけないのか?

 ※今回のコラムは、フリーランスのジャーナリスト吉田典史氏の執筆です。内容は個人によるもので、当社を代表するものではありません。
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 この原稿を書く数日前、「45歳定年」発言がネット上で炎上していた。時事通信社によると、サントリーホールディングスの新浪 剛史社長が経済同友会の夏季セミナーにオンラインで出席し、ウィズコロナの時代に必要な経済社会変革について「45歳定年制を敷いて会社に頼らない姿勢が必要だ」と述べたという。

 私の印象で言えば、「今さら感」がある。1980年後半には、著名な経営コンサルタントや経営学者が新聞やテレビで「40代の定年」を指摘していた。私は、そのころからこの指摘は正しいと思っている。各自が遅くとも40歳前後で会社員人生を振り返り、少なくとも次のことは会社側と話し合いをすべきだろう。

  1,現在の会社に残るか否か
  2,残るならば、どのようにして貢献するか
  3,その具体的な仕事や実績

 1から3についての合意形成を定年まで毎年1回はすべきだ。年に数回でもいい。合意ができないならば、つまり、会社の求める仕事や実績に応じられないと判断された場合は、次の対処が必要になる。

  ・他部署への配置転換、職種転換
  ・グループ会社などへの出向・転籍
  ・賞与を中心に大幅な減額 

 40代になっても管理職になれない人や部下のいない管理職には、退職勧奨を盛り込むこともやむを得ない。活躍の機会はほとんどないだろうから、他社でチャンスを切り拓く道も考えたほうがいい。ただし、退職強要は不当な行為である以上、避けるべきだ。

 「45歳定年」発言を批判する人は、会社を取り巻く状況にあまりにも鈍感ではないか。少子高齢化が加速する以上、日本経済や各市場の規模は確実に小さくなる。多くの企業の業績はダウンする。海外展開し、危機を乗り越えようとするが、難しい業種や職種はある。すでに海外市場で日本企業は苦戦を強いられている。管理職になれない人や部下のいない管理職を多数抱え、総額人件費が適性ラインを越えているのだから当然だろう。一方で、海外企業の日本への進出や競争は激しくなる。シェアを次々と奪われる。間違いなく、倒産や廃業、吸収合併などの再編は猛烈に増える。会社が真剣に生き残ろうとするならば、人事のあり方を大胆に変えざるを得ない。少なくとも、次の取り組みは必要になる。

  1,総額人件費の厳密な管理、圧縮
  2,役員報酬規定の明確化、役員数の削減
  3,管理職への昇格の明確化、厳格化、管理職数の削減
  4,年齢給や勤続給の廃止、役割給や業績給の基本給に占める比率を拡大
  5,管理職定年(40代後半~50代半ば)の導入やリストラの実施、大胆な人事異動
  6,一般職(非管理職)の削減、リストラの実施、大胆な人事異動
  7,総合職を減らし、専門職を増やす

 1~7までは、バブル経済が崩壊した1990年代前半には取り組むべきだった。私の取材の限りでは、2や3に今なお取り組んでいない会社のほうが多い。だからこそ、40代になっても管理職になれなかったり、部下のいない管理職にしかなれない人が多数いる。多くは60歳の定年、そして雇用延長が終わる65歳前後、もしかしたら70歳までいるだろう。その総数は、すさまじいものになる。それで経営が成り立つのか…。

 想像の域を出ていないが、「45歳定年」発言の背景にはこのような危機感があったのではないか。本来は、新聞やテレビ、雑誌、ネットニュースは発言の真意や背景について冷静で、深い議論の場を提供すべきだった。それができないところにも、沈む国の深刻な現状が見える。

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