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コラム

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必須のリーダー要件 | スマートアセスメント®

必須のリーダー要件

 管理職の昇格アセスメントでは、複数のディメンション(=評価項目)で評点をつけ、総合点の降順で候補者を序列化するのが常である。それを見ながら「合否」を判断していくのだが、ある合格点ラインで単純に合否を分けるのは得策ではない。総合点がはっきり高い、あるいは低い人たちについては、能力適性判定の限りではその高低に従ってよい。あとは、社内評価や個別の期待事情を含めて総合的に判断していくことになる。問題は、ボーダーラインの前後あたりに並ぶ人々をどう評価するか、である。  アセスメントとは入学評価である。まだ経験していない管理職業務における能力発揮可能性をみる。将来管理職としてちゃんとやっていけるかどうかを、複数のディメンションで評定する手法だが、個々のディメンションには「濃淡」がある。誰しも、ディメンションごとの評点に高低のメリハリがあるものだが、これだけは低い評点であってはマズいというディメンションがあるのだ。  ディメンションは通常、①思考面、②対人面、③資質面の3カテゴリーで構成されるが、この資質面カテゴリーの項目群のなかにそうしたクリティカルなものがある。例えば、「達成指向」、「自律一貫性」」といった項目が低い評点であるなら、まず候補からはずしたほうがよい。ひらたくいえば、達成に向けてブレずにやりぬく――こうした資質は、人を率いて組織成果を出すうえでの前提要件だからである。他に際立って高い評点の項目がない、つまり総合点でギリギリのポジションにいて、これら姿勢を持たないなら、そもそも管理職に向いていないといってよい。  思考面や対人面の能力には、経験や教育によって高めていけるものがある。なかには変えることが難しい能力もあるが、その弱みは、管理職になってからの限定的アサインやサポートする上司やナンバー2の配置によって補完することもできる。つまりは、能力課題はあるけれどもそれをわかったうえで、管理職登用後の成長期待や組織的配慮を併せ合格判断をすることもできる。その場合あくまでも、資質面がOKであれば、ということである。資質というくらいで、この手の姿勢はなかなか変え難いからだ。  では、思考能力や対人能力において、マストとなる必須能力はあるか。ディメンションにはなかなか分解できないが、管理職としての優劣を分けるベース能力としては、「概念化力」と「自己認識力」のふたつに特定できるだろう。概念化つまり本質を掴み表現できれば、課題解決や方針策定から日常の業務遂行まで的確に行えるし、自己認識つまり自身の内面も外面(=行動)も客観視できれば、自分をコントロールし、周りの人々を的確に動かすことができる。  というようなことはしかし、我々がいろいろな場面で見てきた優れた経営者、管理職者、ハイパフォーマの方々を思い浮かべれば、あまりにも当たり前のことなのである。

健康経営始めてますか? | その他

健康経営始めてますか?

 今後の日本は、2030年には超高齢社会に突入し、日本国民の3分の1が65歳以上になり、働く世代と老齢人口が同じくらいの割合になると予想されています。この状況下で、どのように経済活動を維持・発展させていくのか?これが今直面している日本の課題の一つです。高齢になっても働き続けることが出来るシステムを今から作っていくこと、また、今働いている世代の方々をどのように健康にしていくのかを真剣に考えなければなりません。  そこで、今注目されている健康経営ですが、これは「企業が従業員の心身の健康に配慮することによって、経営面において大きな成果が期待できる」との基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、 戦略的に実践することを意味しています。 従業員の健康づくりの推進、健康管理は、単に医療費という経費の節減のみならず、生産性の向上、従業員の創造性の向上、企業イメージの向上等の効果が得られ、かつ企業におけるリスクマネジメントとしても重要です。  どんなに売上や利益を上げても、健康を損ない体だけでなく心身が病んでいる従業員が多くなれば、生産性もモチベーションも上がりません。いわゆる不健康経営に陥った会社は、離職率も高くなり、企業イメージも損なわれるのです。  社内で長期休業者が出ると、その分を周りの従業員が補完しなくてはいけないため、周囲に負担がかかり、全体の生産性も下がるのです。また、離職率が高いと採用費が嵩み、採用者には社内教育を行う必要が出て人件費も嵩みます。  全従業員が万全の体調で勤務できる環境を整えることは、日本企業にとってかかせない投資と言えるでしょう。何より健康経営が評価されると会社のイメージアップにつながり、採用力をつけることができ、株価も上がり会社の価値も高くなるのです。  まず、メリットが大きいのは、従業員の健康状態が企業活動の根幹に繋がる業態です。 例えば、わかりやすい例でいうと、飛行機・電車・トラック・バス・タクシーなど、乗務員や運行管理者の健康状態が「安全」に直結する運輸業などは、健康経営を目指すメリットが大きい業態の代表と言えるでしょう。  従業員の健康状態が悪化すると、判断ミス・行動のミスにつながり、最悪の場合は健康に起因する重大事故につながりかねず、健康経営の実践は待ったなしとされています。有名な労働災害に関する経験則で、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するという「ハインリッヒの法則」があります。もし、小さな異常が続くようであれば、健康経営にとり組むメリットが大きいのです。  健康経営は、今後予測されている人手不足や働き方の多様化が進むうえで必要不可欠な施策といわれています。少子高齢化が進む中、企業が人材確保に対してできる対策として、幅広い人材が仕事に就ける多様な働き方を提案し、従業員へ健康投資を行うことが求められていきます。  一人でも多くの人に「この会社で働きたい」と思ってもらうことで、人材確保や離職を防ぐ効果が期待できます。従業員の健康に配慮することは、働き方改革のテーマでもある「生産性向上」にもつながり、企業のイメージ向上や人員確保にも大きなメリットがあります。まずは、自社の従業員がどのような問題を抱えているのか、健康課題を把握して、手軽に導入できる施策から始めてみる、それが健康経営への第一歩ではないでしょうか。                                         以上

初任給を上げる企業こそが生き残る? | その他

初任給を上げる企業こそが生き残る?

 2018年前後から大卒、大学院卒の初任給を上げる企業が増えている。特に金融、メーカー、IT業界の大企業やメガベンチャー企業に目立つ。  私が、この半年で経済雑誌や人事労務の業界紙で取材したのは約10社。これらの企業は、1990年代前半から総合職全員を一律基本給22~26万円で採用してきた。ここ数年は新たに高度専門職を設け、基本給40~60万円で採用している。賞与や残業を含めた年収では500万~800万円。多くの日本企業で賃金は慢性的に伸び悩んできただけに、新しい試みと言える。今回は、これらの企業に共通していることを紹介したい。特に次に挙げる点だ。   1.業績はおおむね好調だが、新卒採用では苦戦 2.市場や環境の激しい変化を警戒 3.総合職の数を少なくし、高度専門職の採用を増やす 4.総合職よりも高い賃金だが、成績いかんでは総合職になる 5.正社員のポートフォリオの徹底  これらの企業の業績はコロナウィルス感染拡大の影響を受けてはいるが、依然として好調だ。だが、採用の担当者たちは「欲しい学生を取れない」と語る。証券会社の担当者は、こう話す。 「欲しいのは、高度金融人材になりうる学生。大学院の修士や博士課程で高いレベルの数学的な素養を身に付けた人材。例えば、弊社のデリバティブの時価・リスク計算には高度で複雑な数学モデルを理解するクオンツ人材が不可欠。このような能力を確実に持っている学生が欲しい」。  この証券会社は、1980年代後半から相当に高いレベルの数学の素養を身に付けた学生を総合職として定期に採用してきた。10年程の経験を積んだ後、高度金融人材になりうる社員を高度専門職にしている。だが、その育成のスピードでは市場や環境の変化に追いつけないという。しかも、この20年程は日本の大手証券会社よりもはるかに高い賃金を払う外資金融機関に転職するケースが増えているようだ。  来年4月入社の新卒者の総合職は例年通り、200人前後を採用する。そのうちの5%を高度専門職にするようだ。総合職の数は減らし、高度専門職を増やす。採用時は総合職の位置づけで、その中の「高度専門職」とする。状況いかんでは、例えば、会社が求める成績を残すことができない場合は総合職に戻すこともあるそうだ。その際は、収入はダウンする。ハイリスク・ハイリターンと言える。  このことは、正社員のポートフォリオの徹底を意味する。従来通りの総合職、その中に一般職、管理職、役員候補の管理職、その他に高度専門職。総額人件費を厳密に管理する態勢が整いつつあるのだろう。  この動きが本格化すると、40~50代になっても管理職になれない人や管理職になったものの、部下のいない人は肩身の狭い思いをする可能性が高くなる。今後、この類の社員は配置転換や職種転換になるケースが活発になるだろう。賃金の大幅減やリストラもあるのかもしれない。  会社員にとって、初任給が高くなる動きは「危機」であり、「好機」を意味する。それでも果敢に取り組む企業が優秀な人材を獲得し、やがては生き残るのではないだろうか。  

働く事の過去と未来 | モチベーションサーベイ

働く事の過去と未来

 古代ギリシャでは、労働は“卑しい”ものだった。肉体的労働ばかりか、医師や会計士などの知的労働も、奴隷が行うべきものであり、市民は、労働による苦役がない環境で、自由に思考し、生きることが望ましいとされた。「アダムとイヴが禁断の果実を食べた罰として、神が人間に苦役たる労働を課した」というキリスト教的観念と共に、ヨーロッパに「労働はできればすべきでない」という考え方が広がっていた。  その後、中世に入り、教皇や聖職者の堕落により、ローマ・カトリック教会への不信が広がる中で始まったルターやカルバンらによる宗教改革の過程で、人々の労働への価値観に大きな変化が起きた。彼らは、腐敗した教会や司祭を通じて神と向き合う事を止め、神から与えられた仕事を天職として、一生懸命励み、成功することでこそ、神の救済を得られる、と考えるようになった。  神の救済を求めて、まじめに働き、その結果として得られた利益を、神へのより大きな奉仕のため、生産の拡大へと充てて行ったため、次第に資本が蓄積され、それが近代資本主義へと発展して行ったと言うのが、20世紀初頭の社会学者のマックスウェーバーの主張である。宗教的な無欲思想に基づく勤労精神が、現代の資本主義的社会構造を築く源泉だったという事だが、その過程で、生産性や効率性を重視する合理的思想が強調されていく一方で、いつしか、神への奉仕という、本来の宗教的倫理感は色褪せ、結果として、利益の追及を優先的に考える現代的資本主義へと変化していった。  人々の崇高な倫理感が欠けたまま、暴走を始めた資本主義が、地球環境を破壊し、人々の貧富の差の拡大をもたらし、社会自体を傷つけている事に、我々もようやく気付き始めている。SDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」等の新たなルールを事業経営にも持ち込み、社会全体の利益を考える企業が増えて来たり、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=企業統治)の3つの観点から企業の将来性や持続性などを分析・評価した上で、投資先(企業等)を選別する、ESG投資が若い世代を中心に注目を集めているのもその表れと言ってよいだろう。企業も人々も、単なる財務的利益を追求する従来型資本主義の軌道修正を今、はかろうとしているのだ。  こうした変化は、企業と労働者との関係も大きな影響を与えることになるはずだ。多くの企業で、近年のAIやテクノロジーの発達による従来業務の機械化・自動化に伴い、企業も人も将来、「どんな仕事を行うべきか」を模索し始めているが、こうした資本主義のトランスフォーメーションというもう一つの社会変化が、同時に進行する中では、「人がなぜ働くのか」、という根源的な問いにも同時に向き合った対応も求められているという事だ。いやはや、人事にとっては本当にチャレンジングな時代がやってきた。

会議の時間を劇的に短縮する方法 | その他

会議の時間を劇的に短縮する方法

 かつて昭和のころは「部長は会議で、いつ席にもどるか分からない」という状況がざらにあった。それから年号が二回変わっても「会議の時間が長すぎる」「大勢の人を集めて話をするのは数人だけ」「何も決まらない」など、非効率的な仕事の代表としてやり玉にあがるのが「会議」である。  生産性の向上が経営・人事の目標として重要視されるなか、会議の運営スキルについてよくご相談をいただく。どうすれば会議を最小限の長さに留め、かつ物事が決まり、皆の意見を吸いあげた質の高い内容とすることができるだろうか? ファシリテーションのクラスなどで紹介することもあるが、本日はすぐ実行できるポイントをご紹介したい。 ・時間を短く取る ・アジェンダを明確にする ・前向きな発言に絞る  まず時間について。会議を劇的に短くするには取る時間を短くすればよい。例えば社内の打ち合わせは20分~30分、長くても45分。時間を短く設定すると、その時間に収まるのか不安に苛まれるので、事前準備や進行方法を必死に考えるようになる。会議を短くして運営を部下に任せ、ファシリテーションプランを綿密に考える訓練するのもよいかもしれない。  次にアジェンダについて。限られた時間で会議を目的のゴールに導くには、参加者の意識を集中させる必要がある。「アジェンダ」や「ゴール」を会議室のホワイトボードに書く。リモートであればチャットなどに表示させておく。それにより、話が横にずれないよう意識させたり、ずれかかった時に引き戻しやすくなる。  最後に発言について。ファシリテーションの技術の1つに発言のルールを決めるというものがある。「建設的な意見交換にするために、提案に対して代案のある人に発言してほしい」と宣言する。すると、代案のない人は発言をしないし、代案が出ればそれに集中して議論することができる。  このようにお伝えすると「いろいろな意見が出にくいのでは」という質問をいただいたり、「そんな会議は怖い」と言われることもある。会議の目的が、決定なのか、発散なのかによって時間やルールの緩さ厳しさを設計することが重要だ。  また、そもそも発言する人がいない、常に人事が「社内の活性化」に悩んでおられるような会社では、「会議運営のスキル」とは別の施策が必要であろう。それについてはまた次の機会にご紹介したい。

学び続ける日々 | その他

学び続ける日々

 「職場とは、仕事の成果を上げる場である」かつて、そのように教わったことがある。 スポーツに例えると、職場は実際に仕事をして成果を上げる試合の場であり、勉強や仕事を行う上で必要な知識を習得するのは練習である。練習は試合の合間に行うものだから、試合の場である職場で練習(学習)をしているようでは、そもそも試合を捨てているようなものだ、試合に臨むのであれば、日々自らを磨き上げる努力をし続けなければならない。というわけである。  そういわれ続け、プライベートでも仕事のことを考えなければならないのか、と憂鬱な気にもなったものだが、確かに職場だけではなかなか学習する時間が取れない。プライベートの時間を割いて"練習"をしなければ成果に結びつかない、ということはすぐにわかった。  調べたわけではないので、正確な割合はわからないが、ここで人は大きく2つのタイプに分かれると思っている。プライベートの時間を削って、練習の時間にあてることができる者とそうでない者だ。平たく言えば、自分で勉強する人と、しない人、ということである。勉強をしない人も、勉強が重要であるということは理解しているのだが、実際にすることができない、というのは、勉強や練習という行為の特性によるところが大きい。すなわち、成果がなかなか目に見えない、ということだ。  学習したことは脳にまずは短期記憶として記憶されるが、この短期記憶は、1日たてば70%以上失われると言われている。やってみても覚えられない、身に付かない、成長している実感が得られないともなれば、勉強なんてやりたくない、となるのも仕方がないかもしれない。忘れないためには、日々繰り返し反復して学習することが重要なのである。  自分で勉強する人としない人を1週間、1ヶ月間という短い期間で見ると、両者にあまり差は生じない。仕事の中でもある程度は学習ができるので、自分で勉強をしなくても一定の成長はできるからである。だが、日々の勉強を続けることで、効果は着実に積みあがっていく。数年も経過すればその差は歴然となり、学ばざるものには、もはや容易には追いつくことができないほどの差が生まれるのである。  とはいえ、短期的に成果が見えないことに取り組む、というのは継続することが難しい。ダイエットがうまくいかないのと同じだ。自分がどうありたいか、半年後、1年後にこうなっていたい、将来のイメージを具体的に、かつ明確にもっていないと続かない。ゴールを常に意識し続けることが重要なのは言うまでもない。  かつては、職場で勤務時間は自らの業務を行い、仕事が終われば、研修や有志の勉強会に参加したり、書籍やネットで情報を収集して学習するといった学習スタイルが主流であったと思う。しかし、コロナ禍において、人が集まって学習するということが難しくなった現在、代りにネット上のバーチャル空間が学習の場として拡大してきている。学びの場や機会は以前より増えていると捉えるべきだろう。  このような学習リソースを活用するものとしない者ではいずれ大きな差が生じることになるだろう。職場という概念が希薄になり、試合と練習の区別があいまいになりつつある現在、"練習不足”にならないよう、今まで以上に、自ら、効率よく学び、かつそれを継続し続けることが重要な時代になったのである。

在宅勤務で労働生産性は本当に上がったのか? | 人事アナリシスレポート®

在宅勤務で労働生産性は本当に上がったのか?

 昨年(2020年)4月前後に新型コロナウィルス感染拡大が本格化してから1年が経つ。この間、在宅勤務に取り組む企業が増えてきた。それに伴い、新聞や雑誌、テレビ、ネットニュースが「在宅勤務で労働生産性が上がった」と報じるケースが目立つ。  この1年間の企業社会を観察していると、そこまで言いきる根拠は乏しいのではないか、と私は考えている。確かに一部の大企業やメガベンチャー企業など人事の態勢が整っている場合は、「労働生産性が上がった」と言えるのかもしれない。だが、それは企業社会全体では少数ではないだろうか。  この1年間に取材で接した企業(出版、新聞、広告、IT、メーカー、サービス、小売、商社、教育などの中堅、ベンチャー、中小企業が多い)120社ほどを見ると、少なくとも以下の問題点を挙げることができる。 ■電話やメールの返信が遅れる    担当者へ連絡すると、新型コロナウィルス感染拡大以前の時期よりも返信が遅れる傾向がある。その理由を尋ねると、例えば、「上司からの回答がない」「上司が経理課に確認しているが、今なお返事がない」と答える。担当者だけでなく、上司や他の部署も錯綜している様子が見えてくる。1年近く経った今でも、意思疎通のルートが社内で混乱しているケースは120社程の5割前後になる。 ■共有の意識が低い    これらの企業は、以前から個々の社員が独自の判断でバラバラに動く傾向がある。チームや部署として機能していない面があるようにも見える。これでは、ムリ・ムダ・ムラが増える。新型コロナウィルス感染拡大を機に共有意識が一段と低くなっている可能性がある。  例えばふだんから、上司と部下の1対1で話し合う機会が月に1回ほどしかない場合もあるようだ。これではオンラインミーティングをしようとも、スムーズには進まないだろう。必要以上の話し合いの場は設けるべきではないが、共有態勢は作らないといけない。 ■上司の部下育成力に課題    管理職の部下育成力に課題や問題点が多いために、在宅勤務になると社員間で意思疎通が一段と難しくなり、空中分解してしまうのではないか。  本来、管理職は自ら率いる部署やチームのメンバーを丁寧に観察する。部下がぶつかっている壁を見つけ、タイミングのよいところで適切な言葉や指示を投げる。部下の反応を見つつ、さらにどのような助言をするか。こんなシナリオを描き、部下と課題を共有し、納得感を高めていく。だが、これらのアプローチをしているようには思えない上司もいる。部下に漫然と仕事を与え、その進捗を確認しているだけの人も少なくない。 ■社員間の差が大きい    在宅勤務をすると、IT・デジタル機器に慣れている社員とそうでない社員との間に意思疎通のレベルの差が生じる。そして、上司と部下の間のコミュニケーションもスムーズに進むケースと、そうとは言えないケースも生まれる。部署内でもコミュニケーションギャップが目立つ。これでは、チームとして動くのは難しい。  コロナウィルス感染拡大は危機だが、労働生産性の問題点を見つめ直す好機でもある。読者諸氏の職場は、労働生産性が上がっているだろうか。

「型破り」と「形無し」の違い | 人材開発

「型破り」と「形無し」の違い

 タイトルの「型破り」と「形無し」の違いを知ったのは、18代目中村勘三郎の言葉からだ。元々は無着成恭(むちゃく せいきょう)という僧侶が、子ども電話相談番組で「型破りと形無しの違いはなんですか?」という質問に対して、型がある人間が型を破ると「型破り」、型がない人間が型を破ったら「形無し」。と回答した内容となる。  歌舞伎の世界、芸事の世界では幼少期のころから徹底的に基礎を叩き込む。おそらく、その弛まぬ習練によって作り上げた基礎があるからこそ、「型破り」は見るものを魅了するのだろう。洗練された「型」の先にしか「型破り」は存在しないのである。  この「型」は人事制度においても存在する。会社1社1社に経営理念があり、事業規模も業種も様々ではあるが、人事制度に共通する点はないのかと問うと、そうではない。  例を挙げると、同業種、事業規模が同等の企業であれば、組織構成は類似し、給与水準は採用競争力の観点から同水準となる。また、社員に求める知識、スキルも同等であることを想定すると、教育体系は相似し、実施しなければならない研修も似るだろう。  では、人事制度の「型」をどの様に構築すればよいのか。それは適切なプロセスに沿って、人事制度を構築することになる。例えば、以下の様なプロセスで行う。 1.現状把握のための多角的な分析の実施 2.分析に基づいた問題・課題の抽出 3.人事制度設計方針及び領域別施策の検討 4.人事制度設計の構築  「ひらめき」や「勘」ではなく、事実に基づき、適切なプロセスに沿って人事制度を検討していくことを推奨する。抽出した問題や課題は企業によって様々ではあるものの、業種、事業規模、現在の人事制度及び人事制度の運用状態などの観点から分析をすると、傾向があることに気が付く。その傾向から方針・施策を検討することで人事制度の「型」に行き着くのである。  人事制度を構築する上でも、この「型」は非常に重要となる。この「型」がなければ、会社の風土や慣習、経営理念に沿ったオリジナリティの高い人事制度を構築しても、それが正しいどうかの判断がつかない。「型」は新旧の人事制度の比較だけでなく、構築した人事制度が正しいか否かを判断するためにも重要な役割を果たすのである。  一方で、他社の人事制度改定の成功事例から、自社に合った人事制度を導入したいと考える企業もあるだろう。インターネットで検索をすれば、他社の成功事例を目にする。オリジナリティに富んだ、様々な人事制度が存在している。ここで注意をしなければならないのは、成功した企業の事例が絶対の正解とはならない点である。成功した企業の事例を後から分析し、成功要因を抽出することは出来ても、再現性があるかどうかに疑問が残る。成功した企業と自社の状況が異なる以上、同じことを実行し、同じ様に成功するとは限らないのではないだろうか。  改めて伝えると、人事制度設計において重要な事は、適切なプロセスを徹底的に実行していくことである。他社の成功事例をそのまま自社に導入する「形無し」人事制度ではなく、現状の問題や課題を改善するための方針、施策に基づいて人事制度の「型」を固めた上で、社員の従業員満足度や勤続意向を向上させるための「型破り」な人事制度を構築していく。  オリジナリティのある人事制度、洗練された人事制度を構築するために、まずは「型」から固めなければならないのである。

水を飲まない馬 | 人材開発

水を飲まない馬

 正月に里に帰るでしょ、田舎だから親戚が集まるんですよ。こたつで蜜柑食べながらテレビ見てるときにね、「このCM作ったとは俺ばい。」って教えてやると、みんなが目を丸くして「嘘じゃろう!すごかね!」って驚く。それが面白くて今の会社で仕事しとるんですよ。・・TVコマーシャルの制作をしている友人が、にやにや笑いながら、ぼそっと語る。  企業で働く人々に出世欲が無くなったという。パーソル総合研究所の調査によれば、アジア太平洋地域の14の国、地域の主要都市で働く人々の中で、管理職になりたい、という人の比率が、日本は14番目だったとのことだ。また、日本生産性本部の調査によれば、「どのポストまで昇進したいか」という質問に対する答えで最も多かったのが、「専門職」の17.3%、その次が「どうでもよい」の16%だ。  終身雇用のわが国企業では、管理職人材をそれ専用に雇ってくるということをしないから、内部昇進によって管理職を生み出す。プレーヤーたる実務者の中から優秀な者選び出して、マネージャーたる管理職に昇進させるという方法が長く採られてきた。このシステムの下では、いきおい、「良い成果を上げたら褒美として管理職に上げてやろう」というセリフで実務者層の士気を上げてきた。いわば論功行賞としての昇進である。「昇進」をがんばりの動機付けにしていたということだ。  昔は、これでも会社がうまく回っていたのだろう。今の企業組織の基礎が出来上がった大量生産、高度成長時代には、会社の業務は大いに標準化され、社員の一人ひとりは今日何をすればよいか、よくわかっていた。だから、管理職がこと細かな指示をしなくても、組織として成果を上げることができていた。加えて、管理職の給料はそれなりに高く、名誉もあった。 ところが、今の時代、買い手の志向が多様化して、売るモノ、提供するサービスが複雑化した。そして管理職は、部下の一人ひとりに細かい指示を与えなければならなくなった。管理職に昇進した「トッププレーヤー」にとっては、全く違う職種に乗り換えたようなものだ。 よくやった、と褒められて、管理職に昇進したとたん、君はなぜきちんと部下を指導しないか、と責められる。だが、部下を指示指導する訓練など受けていない。これはどうしたものか、と混乱する。これまでより広範で重い責任、慣れない人事評価、ワークよりライフのほうに興味がある部下たち、残業代で部下には抜かれてしまう程度の月収・・・魅力の無いところばかりが目立ってしまう。もはや、昇進なんて「どうでもよい」訳だ。  「昇進」よりは「キャリアアップ」やろうね、と件のCMクリエーターは言う。彼にとっては、「昇進」という言葉には責任だけが重くなって好きな仕事ができないネガティブな印象があり、「キャリアアップ」という言葉には、自分の腕一本で成果を上げ、より面白い仕事を得られるといった、ポジティブな印象があるのだろう。  これを聞くと、「管理職への昇進」を動機付けの主たる因子に置いて能力を発揮させよう、成果を上げさせようとする従来型の仕組みには、限界があるように思える。キャリアゴールは一流専門職であり、それに向かって切磋琢磨しろ、と言ったほうが、より強い動機付けになるような企業が数多くあるのではないだろうか。社員ががんばろうとする意識の源泉に何があるのか、「昇進」に代わる魅力的な誘因は何なのか、時代の変化をよく見定め、人事制度の全体を見直す必要がある。古いイギリスの諺に曰く、馬を水辺に引っ張っていくことはできても、水を飲ませることはできないのだ。

「言葉にする」ための教養 | 人材開発

「言葉にする」ための教養

 美や感性を表現する仕事、写真家や画家、デザイナーといったクリエイティブな職業のスキルのアセスメント(=ポテンシャル把握)は、「言葉にできるかどうか」でなされるという。たとえばこんな試験で、プロフェッショナル予備軍が選別される。   1.有名無名を問わず、自分が好きな作品を50~100点選び出せ。   2.そのそれぞれについて、その理由を記述せよ。  なぜ好きなのか。なにがどうなっているから魅力的なのか。なぜ美しいのか。それをきちんと言葉にできていれば、マネすることができる。良し悪しの理由がわかっていれば、あとはやってみるだけだからだ。テクニカルスキルが問われるのはそのあとだ。言葉にできることは、プロとして「クリエティビティの再現性」を獲得する第一歩ということである。  リーダーシップトレーニングのエクササイズに、「持論を書く」というものがある。管理職たちは、それぞれに経験のなかで、自分なりのマネジメントスタイルや部下をうまく動かす経験則を得ているものだが、それはおうおうにして暗黙知にとどまる。持論として書いてみることによって、それは方法論として形式知化する。つまり、人に教えられるようになる。神戸大学教授の金井さんは、リーダーたちの持論はTPOV(=Teachable Point of View)の宝庫だといった。  言葉にするということは、自分の見ているもの、自分の感じていること、自分がやっていること、を客観化することである。それが、方法論化につながり、再現性やTPOVを可能にする。しかし、その言葉が、個々人の独りよがりの見方ややり方であったらそうした効用には至らない。普遍性を踏まえかつ独自性ある言葉でなければ評価されないし有用でもない。  写真には写真の文法があり、絵画には絵画のスキームがある。リーダーシップにはセオリーがある。絵画の美を、普遍性をもった言葉で語るためには、スキームを知らなければならないし、確立されたリーダーシップ理論を学習しそのうえで自身の経験を意味付けることで、リーダーたち個々人の持論は有効性をもつようになる。  近年、経営リテラシーのなかで「真善美」が語られるようになってきた。ビジネスは、不断の価値創造の取り組みだが、VUCAの時代には、既存の価値の横展開や再利用では通用しない。原点から社会への価値創出を考えなければならない。原点とはつまり社会における自社の有用性の追求。だから真善美からの検討は避けられない。経営リーダーたちはいま、真善美について自分なりの言葉にすることが求められているのだ。  それには、スキームがいる。世界や人間や社会の認識と在りように関して繰り広げられてきた論議の数々、知の格闘の歴史といえる蓄積抜きには、社会に対峙する普遍的な言葉たり得ない。リベラルアーツとは、自分なりのかつ普遍性をもった言葉を書き出すために不可欠のスキームなのである。

コロナがきっかけ | 調査・診断

コロナがきっかけ

 新型コロナウイルス感染症は収束どころか「第3波」の到来が、日増しにはっきりしてきました。厚生労働省の12月17日付発表では、全国の新規陽性者数は3,211人と、1日の新規陽性者が過去最多を更新し、また同じ12月17日の東京都の新規陽性者数は800人を超えて822人となり、過去最多となっています。  このようなコロナ感染拡大の状況をきっかけとして、ワークスタイルの変革に取組んでいる企業がますます増えています。各社の取組みポイントは、リモートワークにおける業務の効率化、社員一人ひとりの行動の把握をシステムの構築とともに可視化する点です。Web会議などのITツールを使用し、上長と部下がキチンと話し合って、やるべき業務を週・日単位でシステムに登録し、その進捗を部内で共有、確認されていくといった仕組みです。実装されれば、部内の全員の仕事が見える化され、リモートワークでの日々の業務内容やプロセスも把握できるし、成果物も明確になります。ただ、評価の視点としては、特に部下とのコミュニケーションでは、以下のSTARの意識が必要で、それぞれの事実を確認することが大事となります。   ■Situation(状況) :どのような状況だったか?   ■Task(役割)    :どのような役割だったか?   ■Action(行動) :どのような行動をしたか?   ■Result(結果) :その行動/言動によって得られた結果は?  一方、今後のリモートワークを主眼に置いた働き方に合わせて、ジョブ型人事制度の導入を検討している企業も増えています。 一般社団法人 日本テレワーク協会も、7月1日に「経営・人事戦略の視点から考えるテレワーク時代のマネジメント改革」についての研究成果レポートを発表し、「テレワーク時代のマネジメント改革日本型の人事制度」を改定し、欧米で主流の「職務範囲が明確で成果に応じて評価されるジョブ型」への移行へ言及していて、2020 年以降、「ジョブ型」の人事制度や職責や成果に基づいた報酬制度への移行に関する議論がより一層活性化するだろうと予測しています。  グローバルの視点に立った場合、日本の「終身雇用」や「年功序列」は極めて特異な制度と言われています。企業活動の範囲が日本にとどまらず、世界中に広がっている現代において、ジョブ型雇用の浸透は時間の問題ともいえるでしょう。 さらに、前出のコロナの影響もあり、直接仕事のプロセスを見ることが難しいテレワークやリモートワークなどへの対応や新しい働き方が普及しつつあります。 働き方の変化に伴い、「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ、人事制度を見直すきっかけになるかもしれません。  ただ、「ジョブ型」のメリットの中には、専門的なスキルや知識を持った即戦人材を採用できる、成果にコミットしやすい、評価体制が確立しやすい等々がある反面、デメリットとしては、事前に職務範囲を定義することが難しい、契約外の仕事を依頼できない、予想外の業務が発生した際に担当者がいない等々があるのです。このメリット・デメリットを比較しながら、さらに「メンバーシップ型」でも課題のあった部下の育成や上司のマネジメントスキルの向上、働き方改革での自律型人材の育成課題をクリアにしていかなければなりません。  人材育成の課題を含めた長期的な人材戦略をしっかりと持たずに、「ジョブ型」への安易な設計・導入を進めていくのはリスクがあることを忘れてはいけないのです。                                                             

階層型組織で失敗を奨励されても… | その他

階層型組織で失敗を奨励されても…

 「今の私の夢は…新しい機能や優れたデザインの製品を考えて、真面目で緻密な作業をするという日本企業にそれを製造してもらうこと。そして、私の考案した製品が世の中に広まることです。」  2年くらい前、東南アジアのトップクラスの理工系大学に所属する学生は、このように語り、周囲の学生も、「それは良いね!」と賛同していました。あなたは、この状況をどう感じられるでしょうか?  イノベーション(創新普及)が重要と言われるようになって久しいですが、外国の方からすると、「日本企業≒誠実で信頼できる外注先、下請け業者」という印象を持つ人が一定の割合で存在するようになっていると捉え、私は残念に思いました。  いろいろな切り口から検討できる話ですが、このコラムでは、次の視点で考えてみましょう。  ・「立派な外注先」に適した組織構造・組織風土のままで、「イノベーションの推進」がうまくいかないと悩んでいないでしょうか?「失敗を奨励する組織構造・組織風土」になっていますか?  さて、ここまでの話を踏まえ、国内に目を転じると…例えば、「テレワーク導入を急ぎすぎて【失敗しないため】には?」などと、「失敗を避けましょう」という意図の表現を数多く目にします。  そして…「繰り返し起こる同じ失敗」は無くすべきですが、「新たな可能性を探求した結果としての失敗」は奨励するなど、「失敗を区別して扱う」ことに慣れていない組織が多いとも感じています。  イノベーションの推進を得意とする組織では、例えば、「小さなグループでいろいろな実験を行ってみて、【失敗=学びの機会】を踏まえて改善を図るという学習サイクルを高速で回すことによって、その時点における最適解を確立し、組織全体に展開していく」というやり方を採用しています。  「規則を検証せず、マニュアルに盲目的に従って職務をこなす」、「上司が言うことには絶対に従う」、「不確実性を減らし、予測可能性を増すために、何事にも稟議書や上司の承認を求める」ということが重要な組織、すなわち「間違ってはいけない」という文化の根付いた「着実に実行する組織」には、階層型の構造が適しますが、イノベーションの推進には適さないのではないでしょうか。  また、プロジェクト・マネジャーは、プロジェクトのマネジメントという機能を果たす人というだけで、常に正しいわけでも、すべての領域でメンバーよりも優れているとも限りません。「マネジャーの言うことは絶対に正しい」と思考停止していては、現場での協創は起こらず、事前の計画以下の価値創出しか見込めないため、イノベーションの推進には繋がりづらくなってしまいます。  この頃は、「Yさんは、プロジェクトAではマネジャーだけれど、プロジェクトBではメンバー」といった場面も増えてきています。目的に応じて、組織における役割が柔軟に変更されるようになってきているため、常にYさんが上位職者という認識は実状に合いません。(再雇用等により、かつての部下が上司になる例なども増えています。)  誠実な作業者集団にとどまらず、イノベーション推進組織になるのであれば、「お互いに、挑戦的な失敗を奨励したり、創造的な摩擦を新たなアイディアに昇華させようとしたり…」ということを重視することにして、もう「上司と部下」を卒業してはいかがでしょうか?  イノベーションの推進に力を入れるのであれば、「上下関係を基盤とするマネジメント」ではなく、「多様性のマネジメント」、すなわち、テクノロジーの活用により容易となることが見込まれる「異才に個別対応するマネジメント」にシフトしていくのが有効ではないでしょうか?  改めて、自組織の方向性と、構造や風土が合致しているかどうか、確認なさってみてください。 以上