©️ Transtructure Co.,Ltd.All Rights Reserved.

MENU

©️ Transtructure Co.,Ltd.All Rights Reserved.

コラム

column
パワハラを産む「黒い大三角」を排除するために有効な360度人事評価 | 360度診断

パワハラを産む「黒い大三角」を排除するために有効な360度人事評価

●気づきで是正できるパワハラ言動  真面目な上司がついつい部下指導に力が入ってしまって、パワハラ言動に至ってしまうことはよくあるものです。特に新しくリーダーやマネジャーに昇格した上司にありがちなことかもしれません。部下の能力を底上げしてあげたい、そんな善意が背景にあったとしても、結果として、部下のモチベーションを下げ、チームのエンゲージメントを損なう指導になってしまっていたとしたら逆効果です。力みすぎによるパワハラ言動は、それが最低最悪のマネジメントであるという気づきから、改善される場合も多いでしょう。しかし一方で、気づきによって、是正が期待できない場合もあるのです。 ●黒い大三角 〜 気づきで是正できないパワハラ気質  心理学的に次の三つの要素を兼ね備えたタイプの人間は、人としていかがなものかと思える邪悪な言動を平気で行うことができると考えられています。 ・自己利益ファースト(マキャベリズム) ・異常に高い自己評価 (ナルシシズム) ・罪悪感や感情の欠如(サイコパシー) これは「黒い大三角(ダークトライアド)」と呼ばれるものです。 図表1 邪悪な性格特性:黒い大三角(ダークトライアド) 資料出所:『パワハラ上司を科学する』 津野香奈美 ちくま新書”Dark Triad” Paulhus Delroy L., Williams Kevin M. The dark triad of personality 2002  黒い大三角をもつ社員は得てして優秀で、仕事で結果を残す場合が多く、組織の中で高い評価を得ていることが多いと言われます。特に上司に対しては表の顔しか見せず、いつの間にか成果を独り占めし、踏み台にした同僚や後輩に対して何ら罪悪感を持つことはありません。そんな人間がリーダーになると巧妙に部下を追い込み、成果を独り占めし、何ら恥じることなく堂々と振る舞います。  「追い込まれ、踏み台にされる人たちの痛みを感じろ!」と言ってみても、そもそも、このタイプは人の痛みを感じないのです。「なぜいけないのですか?私は結果を出しています」と静かに微笑むことでしょう。たとえ一時的に成果が上がっても、メンバーの身体や精神が損なわれたとしたら、組織にとって好ましくはありません。結果のために手段を選ばずメンバーを追い込み、人の痛みを感じることなく、成果だけは独り占めにするリーダーやマネジャーは存在してはならないのです。  それでは気づきを促しても無駄だとすれば、どうしたらいいのでしょう?  黒い大三角タイプはそもそもリーダーやマネジャーにしてはいけないのです。プレイヤーとしては優秀であっても、リーダーやマネジャーにする際にはスクリーンをかけ、排除することがベストだといえましょう。 ●黒い大三角社員を排除するために有効な360度評価  通常の人事評価では、黒い大三角の本当の顔は見えないかもしれません。ましてや管理職アセスメントでは逆に高い得点をたたき出すかもしれません。そもそも能力は平均以上なのですから。  そこで、周囲の人たちからの評価がとても参考になります。普段の職場の振る舞いから、ふと覗かせる裏の顔は周囲のメンバーたちが一番よくわかっています。陰湿なパワハラ言動の数々や、手柄や成果を横取りされた独り占めされたというケースが浮き彫りになってくるかもしれません。表の顔しか知らない上司の評価、高すぎる自己評価(ナルシシズム)、同僚や後輩からの裏の顔の評価、これらを総合する360度評価により、黒い大三角社員の存在を浮き彫りにして、そんな特性を持った人たちを排除していくこと、少なくともリーダーやマネジャーに昇格させないことをお勧めします。

スマホレジ的DX | モチベーションサーベイ

スマホレジ的DX

 1年ほど前に、オフィス前にあるコンビニでセルフレジのシステムが導入された。 以来、そのコンビニでは、棚から商品を取って、バーコードを自分のスマホのアプリで読み込み、そのまま精算し、レジに並ぶことなく、誰とも会話する事なく店を出ている。ファミリーレストラン等でも、テーブルに設置されているタブレット端末の画面メニューを見ながら、注文をするようなシステムが導入されているが、コンビニのセルフレジは、商品を取って、代金の精算するまで、店舗のスタッフとは、まったくコンタクトせず取引が完了するので、その先を行っている。店側は、人件費削減になるし、顧客側もレジの列に並ばなくてよいし、まさに、デジタルトランスフォーメーションの代表的な例だ。  デジタルトランスフォーメーションでは、一般に、プロセスの自動化やデータ分析、クラウド移行、IOT導入など、デジタル技術の活用が前提になるが、それと組み合わせて、業務や取引プロセスを変更することで、ビジネスモデルの進化がなされる。先ほどのスマホレジの場合も、商品の代金決裁の機能の主体者を提供者からユーザーに移管させた訳である。  当社で提供している社員意識調査においても同様の効用を感じる例がある。 社員意識調査の質問項目別のポイント集計は、サーベイ対象者全員と共に、年齢別、男女別、部門別、役職別、等級別、職種別といった属性ごとのポイント集計を行っている。そうする事で、例えば、ある質問項目に対する全社員の満足度は、比較的高い結果がでているが、年齢別でみると30代、40代の社員に比べて、20代の社員が極めて低いという事がわかる。  では20代の社員だけなぜ満足度が低いのかを検討する中で、今度は、20代の特定の部門に所属している社員が他の部門と比べて低いことがわかれば、20代のなかで、特定の部門に所属している社員にターゲットを絞って固有の理由を考えればよいことになる。  こうして、年齢別X性別、年齢別X部門別、年齢別X等級別、等、様々な属性を掛け合わせて見る事で、ピンポイントの状況が把握できるので、結果として、その理由も推察しやすくなるし、対策も打ちやすくなる。当社の提供する社員意識調査では、当社で、全社のポイント集計と共に属性別のポイント集計、および、結果に対して想定される原因や想定されるソリューションを一通り提示するが、それに加えて、2つの属性の掛け合わせの集計に関しては、簡易的なダッシュボードツールも提供して、クライアントが、20代の男性、40代の課長など設定された属性の中から、ツール上で自由に選択し、その集計結果が把握できるようにしている。  こうした属性X属性の集計は、必ずしも、すべての組み合わせでやることは有効ではないし、まずは、単独の属性別での集計結果の中で、着目すべき結果に対して、原因を考察し、特定の属性X属性というクロス集計を見てみようという流れになるので、サーベイの提供者である我々が、あらかじめ一定の仮説のもとでクロス集計を行うよりも、ユーザーとしてのクライアント企業の方で、提供したダッシュボードツールを自由に使いながら、考察する方がより効果的で本質的な問題把握が可能になると考えている。  こうした機能の主体者を移管させる事が有効となる可能性は、企業内の人事部と社員の間でも十分ありうる事だろう。人事評価の過去の履歴や分布情報なども、人事が抱え込んで、分析をしようとしても、なかなかやりきれないのであれば、一定以上の管理職にデータを提供し、人事評価を行う前に、過去データを分析することで、より評価品質が向上したり、評価対象者に対する効果的な育成ポイントが見えてきたりするかもしれない。

管理職昇進を望まない社員増加は心配事ではない | スマートアセスメント®

管理職昇進を望まない社員増加は心配事ではない

 近年は労働観が多様化し、管理職になりたくないという人が増えています。厚生労働省の調査(平成30年版労働経済の分析)によれば、実に61.1%もの人が「管理職に昇進したいと思わない」と回答しており、更に直近の調査会社の結果では80%という数字も散見されます。管理職になりたくない理由として、「出世欲がない」「責任が伴う」「仕事量が増える」が上位を占めます。バブルの時代「24時間戦えますか?」というフレーズが流行り、管理職になることはキャリアにおける一つの目標であったものの、現在は誰もが出世を夢見た時代は終わり、働き方が多様化し、仕事はほどほどに、私生活の充実も重視するライフワークバランス派の増加だけでなく、専門性を突き詰めるために管理職にならない道を選ぶポジティブなキャリアを選択する社員も増えているということです。  この様な状況から、企業の人事担当者との商談で、管理職登用試験を受けない社員が増えているが他社でも同じ傾向ですか。自分が試験を受けた時は、試験を受けられなかったらどうしようと思っていたのに・・・、という場面がリピートします。  企業としては、管理職になりたくない人が今後も増えていくことを前提に人事管理を行っていく必要となるものの、一方、現状の管理職層の問題課題として、40歳前半になると管理職に昇格させてきたことで、部下無し管理職や会社貢献が希薄な管理職の扱いに苦慮している企業は少なくありません。 「2:6:2の法則」「8割を2割が生み出す“パレートの法則”」から、会社を牽引する管理職は20%が適切で、80%の社員が管理職になりたくないことは、管理職の歪な状態を見直すトリガーになり得るとも言えます。ただし、留意点としては、会社が管理職にしたい社員が管理職を目指す仕組みが整っているかです。ミスマッチを回避するために、以下のようなことを確認することをお薦めします。これが全てではないですが。 ①本人のキャリアプラン確認(入社5年・10年の節目で複数回設定) ②会社からのメッセージ(上位職から君は管理職として会社を牽引する人材だと情熱を持って伝える、情熱が欠けると意味がない) ③人事制度(キャリアプランが選択できる複線型パス、適正な評価、報酬格差等) ④能力把握の適正診断(アセスメント等) ⑤管理職候補者に絞った育成研修(社員全員の底上げでなく選抜型での育成)  働き方の多様化から、管理職昇進を望まない社員の勢いは止めることは出来ないでしょう。管理職試験を受けたくない社員がいること自体、50代の管理職は理解できないことかもしれません。この傾向を管理職の歪さ解消を中心とした組織見直しのチャンスと捉え、前向きに人事管理に向き合っていくことができれば、決して心配することではないと言えます。どの様な場面においても、プラス思考を忘れなければ、進むべき路は見えてくるものです。

マネジャーの心理は安全か | その他

マネジャーの心理は安全か

 自社の管理職者に研修をしようと思い立ったとき、どんなスキルテーマにするかを考えるには3つの観点がある。 ①マネジメントの観点。 ここでは「目標達成」と「人材育成」が2大テーマであり、分解すれば前者は、PDCA、業務アサイン、目標設定・評価……、後者は、業務指示、OJT、後継者育成……と必要スキルが細分化される。 ②リーダーシップの観点。 同じく2大テーマは「ビジョニング」と「モチベート」。前者は、ビジョン設定、ストーリーテリング、リーディングチェンジ……後者は、動機付け、巻き込み、信頼醸成……などのスキルが想定される。 ③コンプライアンスの観点。 ここはスキルというより禁止則が、さまざまにありうる。  と書いてみると、改めてマネジャーの役割はたいへんだと思う。自組織の目標の必達をまず第一に要求されたうえで、メンバーの育成もしなければならない。イノベーションが喧伝される昨今は、環境変化のなかで新しい方向性を示し、メンバーを動かせとも言われる。教科書的な管理職役割、「マネジメント=成果をだすための組織の統制」と「リーダーシップ=変革に向けての組織の主導」が、文字通りともに求められるのだ。さらには、ハラスメントは絶対するなと脅され、メンバーの働き方改革をとにかく促進せよと強制される。    もちろん研修の趣旨は、武器=スキル/手法を与え必要に応じて使ってほしいということではあるが、研修テーマのひろがりは、管理職への役割期待が高まる一方であることを示しているともいえる。さらなる期待となりそうなのが、いまはやりの「心理的安全性」だ。グーグルの調査「Project Aristotle」で、チームの生産性に一番影響するのが心理的安全性(=誰もが率直に意見を言い合える組織環境)だと言われて以来、「心理的安全性の高いチーム作り」もホットなマネジメントテーマとなった。  心理的安全性が高い組織は、生産性向上だけでなく、離職率の低下やコンプライアンス維持、あるいはイノベーションのタネになる創発的な意見喚起などの効用があるので、その実現が望ましいのは確かである。しかし経営が、さらなる期待役割として、自組織の心理的安全性向上をマネジャーに命ずるとしたら、目標達成にむけチームをときに厳しく統制し、改革を主導・牽引しなければならないマネジャーにとってはダブルバインドになるのではないか。  「誰もが率直に意見を言い合える」とは、平たく言えば、「こんなこと聞いたら無能(無知)だと思われる」とか「批判していると思われるから黙っておこう」とか「これを頼んだら邪魔することになるからやめよう」という躊躇がなく、自分自身の意見や想いを表明できることだ。とすれば、マネジャー行動としては、個々人の意思・想いへの配慮や、まずは傾聴といった姿勢などが求められ、目標達成にむけシビアなタスクマネジメントに尽力しているマネジャーには、余計なコミュニケーション負荷にもなりかねないからだ。  たとえば、メンバー各人の意思や想いや意見を尊重すべく、マネジャーが ・報告を徹底せよと命じるより、こちらから「どうだった?」「何があった?」と部下に聞く ・上手くいかなかった原因を追求するよりさきに、まず「それは大変だったね」と共感を示す ・本筋と関係ない意見を切り捨てずに、まず「なるほど。ということは……なの?」と意見を聞く といった部下対応を意識的にやろうとするとしたら、繁忙のなかで適時的確な判断を強いられている身としてはいらだつかもしれない。もしかすると「端的に結論だけ言え!」と言いたいこのマネジャー自身の「率直な意見」は言えてなくて、「自分たちの心理的安全性はどうしてくれる」との声があがるかもしれない。  当たり前だが、業務特性やメンバー編成によっても、マネジャーの組織方針やリーダーシップスタイルの違いによっても、心理的安全性のインパクトは異なるから、とにかくその向上をすればよいということではない。実際「Project Aristotle」でも、「チームへの信頼の高さ」「チームの構造の明瞭さ」「チームの仕事の意味の共有」「チームの仕事の社会的意義の共有」が、心理的安全性とともに高生産性チームの特性だとされているから、生産性に資するチームビルディングは一様ではない。  冒頭にあげた様々なスキルと同様に組織力を高める一つの武器として、心理的安全性のメカニズムも知り、状況に応じて使う裁量こそがマネジャーに与えられなければならないのだろう。マネジャーが、自組織をどうしていくべきか経営に対して率直に意見が言え、経営がマネジャーの意思と想いを尊重し、マネジャーは裁量をもって組織マネジメントを行う。チームにおける心理的安全性とともに、経営におけるマネジャーの心理的安全性向上もまた、きわめて重要なはずである。つまり心理的安全性とは、チームビルディングの問題以前に、「全社の心理的安全性」が検討されるべき経営テーマなのである。

学びのポイント | 人材開発

学びのポイント

 ある企業で技術職として採用された新人のOJTでの話だ。  OJTトレーナーが今週一週間の業務経験からのどのような学びが得られたか、特に重要と思うものは?と聞いたところ「書類を届けるため初めてひとりでA社へ往訪しました。その経験からA社へ行くときは○○駅から歩いて行った方が早いという学びがありました」とのこと。技術職なのにその視点はさすがにおかしいだろう、それに初めてひとりで客先を訪問するという経験からはもっと他に学ぶべきポイントがあっただろうになぜそこなのか、さすがに空いた口が塞がらなかったそうだ。  これは経験からどのような教訓を引き出すか学ぶべきポイントがずれている極端な例だが、往々にして、経験が少ない者ほどそういう傾向がある。物事をとらえるときに思考のバリエーションが少なく近視眼的になりがちなのである。また、新人に限らず、問題の原因を深堀するのが苦手、議論の場でポイントのずれた発言をしてしまうといった人がいるがこれも同じような課題を抱えている可能性が高い。共通する解決策は物事をとらえるときの視点、視野、視座を意識させることである。  視点とは見るべきところのことであり、一度特定の箇所に注目してしまうと他のところに目が行きにくい。この新人のケースであれば、往訪する際にどのような準備をしたか、客先ではどのような会話があったのか、といった他の視点があることを気づかせることだ。  視野は、単に書類をお届けするということだけに限らず、相手企業と当社はどのような関係か、この書類を届けた後の仕事の流れはどうなっているか、など範囲を広げて考えることである。  視座は物事を見る立ち位置のことで、自分以外の立場に立って考えることだ。書類を持たせた先輩社員の立場、書類を受け取った担当者の立場などに立って考えるのである。  物事の視点、視野、視座を変えることで物事の本質が見えやすくなり、学ぶべきポイントが浮かび上がってくる。勘所は自分自身で自分の頭で考えることである。他者から言われたことは情報としてインプットはされるが、学びにはなりにくい。自分で考えてこその学びなのであり、そこに導いていくのが先輩社員の腕のみせどころとなるわけだ。  さて、OJTトレーナーを唖然とさせたこの新人、現在は中堅社員となり自身もOJTトレーナーとして新人の育成にあたっている。当時の話をしたところ、「いやー、あれは往訪時間ギリギリになってしまったので先輩に聞いたら○○駅から歩いた方が早いと言われまして、それからは都内で効率よく移動するためには往訪先の最寄駅の情報だけじゃなく、地図上での位置も把握しておかないといけないなと思い、都内の鉄道・地下鉄の駅・路線の位置関係を覚えたのですが、今でも結構役に立ってますよ。」とのこと。本人に聞いてみれば思いのほか自分なりに考えていたようではあった。

変わったヤツだね、あいつ | 人事制度

変わったヤツだね、あいつ

 東京に本社を置くその会社は、600人ほどの従業員を擁する大手企業傘下のシステム開発会社だ。管理職と専門職の複線型人事制度を設けている。この専門職というのをどう位置付けたらよいのか、ずいぶん長く議論してきたが明らかな結論が見えてこない。曰く・・ 「40代後半にもなって、ポストが無いという理由で管理職に昇格できない人材を遇するには、専門職という立場がどうしても必要だ。」 「いや、ちょっと待て。専門職というのは、他人に無い高い専門性を持つ人材を処遇するためのものだ。単に優秀な総合職社員を格付けるものとは違うのではないか。」 「優秀ではあるが管理職には向かないという人もいる。こういう人も、それなりに処遇しなければ辞めてしまうだろう。」 「ところで、管理職に昇格させてみたがうまく成果の出ない人材は管理職ポストから外したいのだけれど、格付けを一般社員まで落とす訳にもいかない。専門職に移ってもらえば収まりが良いな・・。」 そうこうするうちに、若くて優秀な専門人材と管理職リタイア組が混ぜこぜになった、妙な人材集団が出来上がった。多くの若手社員から声が上がる。 「いったいこの専門職というのは何なのだろうか? うちの専門職に何かの専門家はいるのですか? 年功序列の大義名分に過ぎないのでは?」  さて、同じICT系の会社だけれど、地方都市に本拠を置く新興の会社がある。まだ200人ばかりの会社だが、クルマの先進情報技術を武器に急成長を遂げている。前述の会社と同じような複線型制度を設けているが、少し違った景色が見える。 ここで働く人は、全員が非常に高い専門技術を持っている。例えば、この会社のコーダー(コーティングを仕事とする職種)は、ふつうのプログラマーの5人分から10人分もの仕事をするのだそうだ。彼らは、あたかも日本語とコーディング言語のバイリンガルだ。部下に帰国子女がいれば、辞書を引きつつ汗かきながら英語で会話をしなくても倍のスピードで仕事が片付くのと似て、注文主が「こんなシステムがあるといいな」と夢を語れば、たちどころにコンピューターと話をつけてくれるのだそうだ。 コーダー職以外にも、AIのアルゴリズムを考える人、巨大なデータセンターを切り盛りする人など、数多くの専門家が腕を振るう。綺羅星のごとき人材たちが数多く働く専門家集団だ。 ここでは、専門家としてのウデの良さでグレードが決まる。誰もが、自らの専門分野で、もっともっとウデを磨きたいと考えている。だから、ポスト不足の悩みなどない。そもそも管理職という仕事への憧憬が無いのだ。若い技術者たちが仲間のうわさ話をする。「あいつ、次のワンオンワンで管理職コース希望するんだってさ、変わったヤツだね・・」  根拠の無い直観だが、二番目に述べたような会社がにょきにょきと姿を現しているように思う。その半面、数多くの人事部門で、一番目に述べた会社のような議論が依然として交わされている。技術の急激な発展があり、産業構造やビジネスモデルの地殻変動が起こる。そして、わが国の人事管理は、その後を周回遅れで追いかけているように見える。  ところで、人事制度を刷新するとき、経営者は社員にそのいきさつを語る。米国の経営者の多くは、『私はこんど、このような制度を導入することを決心しました。』と言う。日本の経営者の多くは、『わが社では、こんど、このような制度を導入することになりました。』と言う。両者の表現には微妙なニュアンスの違いを感じる。 マスコミがそのことについて盛んに論評し、業界の多くがそれに賛同し、有識者の協力を得、従業員の皆さんの大方のご理解が得られ、十分に環境が整い、機が熟したときに、日本の人事管理は漸く、一歩、前に進むのだろう。熾烈なグローバル競争の中で、遅きに失することがないとよいが。

経験者採用に即戦力を期待しない | 人材開発

経験者採用に即戦力を期待しない

 昔は35歳を過ぎると転職は無理と言われたものだった。しかし今や35歳以上の転職は全転職者の過半数を占める(2019年「労働力調査」)。倒産などの外的理由だけではなく、よりよい条件を求めての転職が増えているという。経験を積んだ専門性の高い業務や役職者といったベテラン勢が、さらなる活躍を求めて転職するキャリア採用・経験者採用が増えていると思われる。  経験者採用が増える一方で、「凄い経歴の方が採用できたが、数カ月で辞めてしまった」というミスマッチ・早期離職の話もよく聞く。筆者自身、30歳を過ぎてから3回転職をしたが、1社は半年で退職した。苦い経験だった。どうすればミスマッチ・早期離職を防ぎ、経験者採用の活躍を促せるだろうか。  ミスマッチを防ぐために、入社前の情報開示や何の仕事を担当してもらうのかのすり合わせの重要性はよく語られている。しかし、事前に伝えることには限界があるので、むしろ入社後の対応の方が決定的だろう。入社後の対応のポイントとして、私は「即戦力を期待しないこと」「ビジョンをすり合わせること」の重要性を挙げたい。  経験や知識が重視される経験者採用において即戦力を期待しないのはおかしいと思われるだろうか。実際、私も「入社後3カ月のハネムーン期間に、目立つ成果が出せると良いね」というアドバイスを受けたことがある。  しかし、本来、経験や知識があるということと、それを業務で発揮できるというのは別の話だ。新しい会社のシステムの使い勝手や、使えるリソースなどの制約は入ってみないと分からない。経営者から「これまでの経験を生かしてぜひわが社を変革してほしい」と口説かれても、現場のメンバーからは冷ややかな視線。意思決定の流儀などの「仕事の仕方」も学ばないといけない。能力発揮以前に乗り越えるべきことが多々存在するのだ。  であれば、いっそ入社後しばらくは、「成果は出さなくてよし」と宣言して、能力発揮のための環境整備と適応に専念する期間としてはどうだろうか。これが「即戦力を期待しないこと」の意味だ。  その代わりに、この期間にはこまめに上長とミーティングを持ち、ビジョンをすり合わせることに時間を使うべきだ。会社の現場を知った上で、改めて自分は何ができるのか、会社は何を期待するのかを話し合う。今の業績を上げることだけでなく、中長期的な会社の成長のために共に考える。転職者からすれば、そのように自分の経験や知見を聞いてもらえることは、入社してよかったという思いにもつながる。  役職者として転職し活躍されている方に話を伺うと、3年、5年というスパンで成し遂げたいことの計画を描いている。また上司と中長期的なビジョンを話し合っている。いずれも「即」ではないのだ。経験者採用に「即戦力」という呪いをかけるのは、もうやめよう。

ハラスメント研修の常識を疑う | 人材開発

ハラスメント研修の常識を疑う

 ハラスメント研修でこんなことを聞いたことはないでしょうか? ・ハラスメントでは「グレーゾーン」の判断が難しい ・ハラスメントは職場のコニュニケーションをよくすれば防止できる  もちろんその通りですし、筆者も研修の場で同じように申し上げることもあります。しかし、職場でハラスメント問題の実務を数多く扱った経験から考えると、「グレー」というのはちょっと違うんじゃないか?と思えます。また「コミュニケーションの問題」と言いますが、職場のトラブルのほとんどは人間関係の問題で、人間関係の問題は、全てコミュニケーション問題であるのです。 「グレーゾーン」「コミュニケーションの問題」という陳腐な決まり文句(クリシェ cliché)で思考停止してしまっては、職場での真の問題解決には至りません。もう少し深く考えてみる必要がありそうです。 ●グレーゾーン? 「彼/彼女のあの行為ってどうなの?」「うーん、グレーだよね〜」 「これっていかがなものかな...」と感じたらそれはやめてもらうべき行為です。ハラスメントに当たるのか当たらないのかの二者択一、白か黒かという判断基準は訴訟や裁判でのことでしょう。私たちの職場は法廷でも裁判所でもありません。皆が安心して力一杯働くことができる、そんな職場を作るためには、いかがなものかな?と思われる行為であったら、ハラスメントであるとかないとかよりも「今後はやめておきましょう」と判断すべきです。 「それこそまさに『グレー』なのでは?」と思われましたか?違います。職場で「いかがなものか?」「今後はやめておきましょう」という行為は、実は、アウト・ブラックなのです。ただ、処分を行わない、軽い注意に留めるという外観がグレーであるという印象を与えているに過ぎません。 グレーはグレー、ホワイトではないのです。 ●ハラスメントはコミュニケーションの問題? 「コミュニケーションが良くなればハラスメントはなくなります!」と研修講師がドヤ顔して言ったとしてもそれで問題が解決するわけではありません。 誰と誰の間で、どのようなコミュニケーションを、何のために行うのか。そして、そのコミュニケーションの背景にどのようなマインドを持ったらいいのかを、腹落ちするレベルで理解することが必要です。  もちろん、ハラスメントにならないための、NG言動や行為を知る必要はあります。「敬語を使いましょう」「あだ名はやめましょう」「男性にも女性にも皆お互いに『さん』づけで呼び合いましょう」「下の名前で呼ぶのはやめましょう」そんな「べし・べからず集」を参考にすることは無駄ではありませんが、本質的ではありません。では何が本質なのか?  それは自分の価値観や意見と違う相手やその行動に対して「敬意」を持つことです。その相手の「人としての存在を認める」ということです。これは筆者が14年間働いた任天堂で当時の社長であった故岩田聡氏から学んだことです。敬意を持つということは、ご自身の考え方や価値観を変える/改めるということでもなければ、相手に譲歩する、妥協する、ということでもありません。自分と違う価値観や意見を持つ人たちの存在を認めるということ。自分と違う価値観や意見を持つからこそ、自分にはできないこともできてしまう能力がその人にはある。そんな能力を集めて、一緒に働くことこそが組織/会社で働くことの意味であって醍醐味であるのだと。それが岩田さんの教えでした。  ハラスメント研修から発展して、職場でのコミュニケーションを深く考えてみることは、とても有意義だと思います。

2023年は卯(うさぎ)年 | 調査・診断

2023年は卯(うさぎ)年

 十二支それぞれの相場格言に(辰)(巳)天井、(午)尻下がり、(未)辛抱、(申)(酉) 騒ぐ、(戌)は笑い、(亥)固まる、(子)は繁栄、(丑)はつまずき、(寅)千里を走り、 (卯)は跳ねるがあり、卯年の相場は上昇相場と言われています。  昨年の2022年は寅年であり、「千里を走る」でした。この「千里を走る」は政治や経済で波乱が起こりやすいとされていましたが、その格言通り、ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮によるミサイル発射の脅威、世界的な金利の急上昇、さらには安倍元総理の事件、その後は宗教と政治の関係が政権を揺るがしかねない状況を招くことになりました。 まさに波乱の1年であったと言えるでしょう。 この状況に沿って考えると、卯年の2023年は産みの苦しみを経て、新しい視界が開けてくるという流れになってほしいと思います。  人事関連に目を向けると、人事制度や人事施策には、社会情勢やIT化の急速な進行に伴い様々な課題への対応が求められています。「同一労働同一賃金」や、「育児・介護休業法」「パワハラ防止法」といった法改正、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方の「テレワーク」や、仕事を同時に手がける働き方の「パラレルワーク」等を代表する働き方の変化など、企業は世運隆替に即した、かつ自社の風土にフィットする制度への変革が必要とされているのです。  昨今、急速している人的資本経営に対する動きに注視すると、人事施策を打つだけでなく、人材を「資源」から「資本」へ、人件費や教育費を「コスト」から「投資」へと、考え方の転換が求められています。人材の情報管理状況をいくつかのクライアントに聞いてみると、「人事考課」「異動・経験部署」のデータは一元管理していますが、「キャリア志向や目標」「スキルや強み」のデータを一元管理している企業はまだまだ少ない状況です。大抵は基本的な属性情報の一元管理に留まり、実際に異動配置などに活用できるレベルの人材情報は蓄積できていません。 また、戦略人事の認識度と進捗度合を聞くと、「データドリブンな意思決定」や「HRテクノロジーを使いこなす」は認識度及び実現度とも低いです。残念ながら、人材情報の一元管理・活用が戦略人事に非常に有効と考えつつ、実行できていないという状況です。  一方、先進的な企業では、「デジタル人材」を人事部に配置する流れが進んでいて、人事データを分析して活用するピープルアナリストも生まれています。今後は、人事のDX化を推進していくため、人事部にデータ系のスペシャリストを設置する企業が増え、「データ分析」や「AI活用」がさらに進んでいくのではないでしょうか。 今年は、これまで以上に「人事部のパーパス」が問われる1年になると思います。これまでの給与計算や労務管理といったオペレーション中心の人事は、DXによって置き換えられつつあります。また、働き方の選択や変化により、副業がよりメジャーになっていくため、さらに個人主義の時代になっていくと考えます。それに伴い、「やりがい」のある会社が選ばれるようになるでしょう。人事部には、報酬の考え方、会社へのエンゲージメント、今後の人事戦略立案がより一層求められるようになります。より優秀な人材を採用し、引き留めておくためには従来の労務管理型の「人事部」では対応しきれないのです。 2023年に跳ねるには、「旧型人事部」からの転換期として、まず「人事部とは何のためにある部署なのか」という再定義が必要になるでしょう。

内部公平性という呪縛 | 人事制度

内部公平性という呪縛

 人的資本経営の重要性の認識が高まる中で、人事制度の見直しに着手する企業が増えている。人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、企業価値向上につなげる経営のあり方だ。具体的には、企業理念・経営戦略を実現するための人材価値や人材像が言語化され、事業戦略・経営計画と合致した視点や時間軸で目指すべき人材ポートフォリオが明確にされ、その姿を目指して、要員計画・人件費計画や、採用、配置、育成などの各人事機能別方針・施策が統合的に展開されるアプローチと言えるだろう。 経営理念や経営戦略と連動した明快な人事戦略の下で、人事マネジメントを行っていく事であり、当然、人事制度もその方針に合致したものとなる。  この人的資本経営という概念を大きく否定する人はあまりいないが、実際の人事制度の設計プロセスにおいて、スムーズに事が決められていくかと言えば、実際はそうならない。「多様な働き方へ対応するために地域限定の総合職を導入するか?」「優秀なITエンジニアを中途採用で採用可能にするために、他の部門よりIT部門の給与水準を上げるか?」こうした問いに対する判断の論点は、外部競争力を優先させて、世代間や部門間の公平性を犠牲にすることを許容するかどうかにかかってくるが、同一企業の経営層や人事部内でも意見は様々で、共通の人事ポリシーや判断軸を持ち合わせている企業は多くない。  管理職役職定年の是非、定年延長やシニア世代の処遇の在り方等、多様な人材の柔軟な働き方を許容していくトレンドが進む中で、こうした従前からの人事制度上の検討事項が、改めて着目され、見直しを迫られている状況だが、制度見直しをすれば、既存社員の特定の誰かにしわ寄せがきて、不利益や不満が発生する事を恐れ、容易に意思決定に至らない。本来、こうした見直しの判断の拠り所も、企業の人事戦略で謳われた方針であるはずだが、社内の内部公平性を重視する日本的マネジメントの足枷は、思いのほか強く、様々な人材セグメントが持つ既得権益を否定するまでには至らず、議論が長引く事が少なくない。  結局のところ、人材や働き方の多様性を受け入れていく中で、それぞれの立場で、既得権益を持つ既存社員も含めて、一律的な公平性を追求していけば、当然ながら、どこかで袋小路にぶつかる。どこかでゲームのルールを変えていかざるを得ない。  内部公平性は、人事制度設計において、外部との競争力の強化と共に主要な視点であり、社内の多様な人材を公平に扱うという考えは尊重すべきものだが、それぞれの人材セグメント上で発生した既得権益を温存しがちな、従来からの日本的社内公平性の概念からの転換が必要だ。  例えば、リスキリングやキャリア形成支援等、各人材セグメントに即した最適なキャリア成長の支援を、公平に提供していく事を前面に出していく等、人的資本経営時代にふさわしい新しい公平性の在り方を社内外に提示し、粘り強く、内部公正性という意味合いの転換の必要性に理解を求めていく事が、それぞれの企業文化や経営戦略に即した人的資本経営を具現化していくうえで、カギとなっていくだろう。

評価制度に求められる「誠実さ」「真摯さ」とは | その他

評価制度に求められる「誠実さ」「真摯さ」とは

 時代の変化に対応すべく、従来の横並びの人事評価から、メリハリのある人事評価へと舵を切る企業が増えている。組織の期待に応え、高い成果を上げる社員には高い評価と処遇を、期待に届かず、成果の振るわない社員には低い評価と処遇を行う人事制度が主流となりつつある。  人事評価が自身のキャリアや収入、ひいては人生設計に、これまで以上に影響を及ぼすことになると、評価に関する不平不満の声も強まることは想像に難くない。制度上の公平性や透明性の担保、運用面の評価スキル向上は当然のことながら、組織および評価者のスタンス・マインドセットにおいては「誠実さ」「真摯さ」が極めて重要になると考える。  例えば、被評価者の昇格がかかった評価において、残念ながら低評価を付けざるを得ない場面がある。そのとき、低評価を付けるに至った理由・根拠を、可能な限り抜け漏れなく指し示すことができるか。また単に事実を羅列するのではなく、等級定義の深い理解に基づき、評価制度を貫く思想を正しく汲み取るとともに、さらに事業環境や経営状況、経営計画等に照らした複眼的な見地から、血肉の通ったフィードバックができるか。社員一人の評価にかける熱量(思考の広さ深さ)が組織における評価の「誠実さ」「真摯さ」として現れる。  これは低評価者に対する温情や納得させるための方便ではない。単に手間暇をかければ良いという話でもない。社員が「組織の理念・戦略・方針・価値観を体現できるか」の問題である。従って高評価者に対するフィードバックにも同様のスタンス・マインドセットが求められる。評価時期になって慌てて準備するようでは足りない。  時代に即応した厳しい人事評価を「誠実さ」「真摯さ」抜きで運用したとしたら、組織はどうなるだろうか。低評価者はふてくされて管理者の見えないところで組織に悪影響をもたらすかもしれない。高評価者は見切りをつけ、より年収水準の高い同業他社に転職するかもしれない。はたまた、厳しい評価をつけて辞められでもしたら困るからと、どうにかして評価を調整しようと間違った努力に走るマネージャーが出てくるかもしれない。この点、評価をする側、される側、それぞれに求められる基本姿勢や考え方を「評価者研修」「被評価者研修」という形で学ぶ機会を提供することも組織力向上の有効な手段となる。  厳しい外部環境に対応するために、企業は絶えず変化を求められる。その中でも変わることのない理念や価値観、そして変化に即応した戦略や方針を、人事評価において忠実に体現する。新たにパーパスを策定したり、組織的な1on1を行ったりするリソースがなくても、組織力を向上させるチャンスは私たちの身近なところにある。

役職定年は「消化試合」をもたらす | 関連制度設計

役職定年は「消化試合」をもたらす

 多くの日本企業で高齢化が進むなか、高齢化対策として導入されてきたのが「役職定年制度」です。役職定年制度は、1986年に施行された高齢者雇用安定法により55歳定年から60歳までの雇用を努力義務とされたことを契機に拡大してきました。  定年が引き上げられ、1つの役職に長く留まる人が増えると、世代交代が滞り、若手のモチベーションダウンにつながります。また、年功型の人事制度の場合、時には実際のポスト数より多くの役職者が発生し、総額人件費も増大化します。そこで、一定年齢(多くは50代前半)になった段階で、役を外し、それによって若手にポストをあけ、賃金を抑えることを目的としているのが役職定年制度です。  しかしながら、役職定年制度の実態をみるとさまざまな問題が生じています。  役職定年後の当事者は、ほぼ同じ仕事で、給与は6-7割にダウンするのが通例です。当然モチベーションダウンは避けられず、生産性も低下します。シニア人材は定年までの「消化試合」をして過ごすということにたとえられるのではないでしょうか。バブル層が今55歳前後に差し掛かり、5年後に60歳の定年を迎えます。大量の人材が「消化試合」状態になる姿を、経営側は望んでいるはずがありません。  一方で、優秀な方においては役職定年を機に離職するという負のスパイラルを生み出します。  また、役職定年制は年齢差別であるという批判もあります。外国に目を向けると、米国や英国では、年齢を理由に雇い入れや労働条件を差別することを原則禁じられている例もあります。  そんな中、最近においては、55歳前後で管理職から外す役職定年制度を廃止する企業が増えています。例えば、大手の某電気メーカーにおいては、役職定年を迎えた約1,000名を、成果実力主義に則り管理職に復活させました。  さまざまな状況を踏まえ、今後を見据えた場合、「もはや、年齢を理由にした人事管理は限界にきている」と考えています。  しかしながら、若手が相変わらず役職に就けないというのも望ましくはありません。これらを解消するためには、仕事内容を明確にするジョブ型雇用が考えられます。 管理職の登用については、管理職の役目を担えるスキルや能力があって、パフォーマンスが発揮できる方であれば、男性、女性、高齢者、若年者、外国人などに関係なく昇格できる評価制度が確立されていることが重要になります。つまり、ペイフォアパフォーマンスを徹底することです。  シニア人材のモチベーション低下も、仕事と成果レベルによって処遇パターンを変えることを合意の上で雇用を継続すれば、一律ダウンは避けられるはずです。  シニア人材を消化試合化させず、誰もがモチベーション高く活躍できるために、成果・能力・貢献を評価基準とした制度設計と、それを明確に正しく厳格に評価できる評価者の育成こそが求められています。