©️ Transtructure Co.,Ltd.All Rights Reserved.

MENU

©️ Transtructure Co.,Ltd.All Rights Reserved.

コラム

column
社長の仕事 | 人材開発

社長の仕事

 「社長業というのは、つまるところ金勘定ですから」と自嘲気味に語ったのは、重厚長大企業グループの基幹企業を率いた元社長だった。企業人のキャリア開発のあれこれを話題にしていて、キャリアゴールとしての社長に話が及んだときに、彼が最初に口にした言葉である。だから社長業なんてつまらない、と言えるのはそれをこなしてきた自負の裏返しで、戦略も戦術もその成否が金勘定の巧拙に左右されるのは経営の常識だろう。  別の会社の現役社長は、競争に勝つ策を出し続けることが社長の仕事だと言った。IT業界で独立系企業として成長続け確固たるポジショニングを得た経営者ならでは言葉で、その言葉の裏側には、勝つための力を磨く不断の自己研鑽を日々自身に課しているという自負がある。彼は、先見力、分析力、構想力を鍛える独自の「脳のトレーニング」を毎日行っているのだった。  経営とは、端的に言えば「競争と金」である。そのバランスは、規模や歴史や市場ポジショニングによって異なるだろうが、「競争と金」を両にらみしてひとり最終判断をするのが社長の日常業務である。金勘定には、投資判断や資金調達から日日の経費状況検証まで、「木を見て、森を見て」、「過去を解釈し、未来を展望する」全方位的な計数センスが必要である。競争には、市場内での競争のみならず「ファイブフォース」との闘いや社会に対する提供価値の差別化という意味で、やはり全方位的な競争を勝ちぬく胆力(=意思と信念と知力)がなければならない。  そのように戦略の策定と推進をリードする際に、もうひとつ、社長にしかできない仕事がある。それは、ダイレクトなメッセージよる人々の触発や行動喚起だ。経営目標に向けた従業員のパフォーマンスマネジメントとは、ビジョンや方針を提示し、モチベーションを高め、方針に沿ったあるべき行動発揮を促し、成果を出させることである。グローバル標準の人的資本管理の言い方でいえば、「Engage & Align」。これは、ヒエラルキー組織のなかでマネジャーが担うべき役割だが、ときにそれだけでは充分ではない。社長が、人々への行動要請の意味と意義と覚悟を、自分の言葉で人々に直に語りかけることがあってはじめて、人々は強くエンゲージされアラインされるのだ。  そのことを自覚していない社長は、意外に多い。確かに、たくさんの人を動かす仕組みが組成され、マネジャーたちがタスクと人をマネジメントし、階層化・分業化された統制がされるのが組織である以上、現場のパフォーマンスマネジメントは現場に任せるしかないし、任せるべきである、ということは正しい。しかし、顔の見えない、雲の上の人が率いるのであっては、戦略遂行に画竜点睛を欠く。社長の顔、つまり、経営者としての意思と覚悟が全社員に見えることが、エンゲージメントの前提になるのだ。  社長が社員たちに直接語りかける場をどれだけ持つか。さまざまな階層別の会合への参加はもちろん、若手研修の冒頭メッセージ、車座セッションの全国行脚といったイベントを「コミュニケ―ション戦略として」、かつ「社長自身の意思をもって」、組み上げ、その実行に大量時間投下することもまた、きわめて重要な社長の仕事なのである。

「よくわからないけど面白そう」という気持ち | その他

「よくわからないけど面白そう」という気持ち

 小さな子どもを見ていると、彼らにとって遊びと学びは一体だと感じることがよくある。文字を練習していたはずがオリジナル文字を作っていたり、ゲームの解説動画をなめるように見ては新しい手法を学んでいたりする。新しいことを知り、それをおもちゃにして遊び、遊ぶためにまた新しい知識を学ぶ。「よくわからないけど面白そう」という気持ちが先行して、「これは何に使えるのかな?」という活用は後からついてくるようだ。  結果として、使えると思った知識は(主にクイズやゲームなど)どんどん深堀る。驚くような速さで習得し、どんどん使えるようになっていく。一方で使われないまま放置される知識(主に学校の教科書に書かれているもの)も壮大に発生してしまうので、そこは大人の目で見てまずいとなり、どの家庭でもよくあるだろうバトルが発生することになる。  このような子どもの学び・遊びは、研修事業で提供する大人のための学びとは大きく前提が違う。企業の人材育成においては会社の意図を踏まえて、研修提供側が学ぶ内容を選定する。何を学ぶかという理由は本人の側にはないので、企業の意図を「研修の目的」という形で研修開始時に本人に伝えることで後付けで内面化する必要がある。ここが多くの研修の難所になる。また、研修で学んだ知識の活用についても自主性に委ねているとなかなか継続しない。今では、知識の実践を働きかける長期的なフォローが研修設計の標準になっている。  企業研修である以上、企業の意図した内容を効率的に学ぶためのカリキュラムを会社が決めるのは当然のことだ。会社の意図を理解してしっかり学び、実践していただければ研修としてはそれで大成功ともいえる。しかし、子どものころのような学ぶ・遊ぶ楽しさを思い出せたら、大人の学びもまた飛躍的に向上するのではないだろうか?   最近の研修では、体験型やアート鑑賞といったセッションが増えてきた。感性の開発や組織開発などさまざまな目的で設計されるが、これらのセッションを通じて、学ぶ・遊ぶ楽しさを思い出し、学び方のバージョンアップを図ることができると考えている。  その時重要なのは「よくわからないけど面白そう」という気持ちだ。会社の事業やこれまでの人生の延長線上ではなく、であまり接したことのない世界に触れる。世界はまだまだ広く、自分の知らないことがたくさんあり、なんだかよくわからないが動いている。何が起きているのだろうか。自分にも何かできるのだろうか。そう感じるとき、自分も学び、新しいことを試してみたいという気持ちが高まる。それこそが、子どものころのような貪欲な遊び・学びのスタートになるのだ。

「どうしましょう?」ではなく「こうしたい!」 | その他

「どうしましょう?」ではなく「こうしたい!」

『「どうしましょう?」ではなく「こうしたい!」』は前職の会社のDNAである。  多くの人事の責任者や担当者から「どうしたらいいですか?」と話をいただく。「こうしたほうがいいですよ」とか、「一回正確に現状を把握したほうがいいですね」などアドバイスをさせていただく。「目的はなんですか?」「どうありたいですか?」など確認をさせていただく。目的や問題の本質が明確にならないと、有効な解決もできない。その点しっかり確認させていただかないと始まらない。ただこの目的や問題が曖昧なことも多く、明快かつ意志をもって語られる方は意外と少ない。「どうしましょう?」が多く「こうしたい!」がまだまだ少ない。  テクノロジーの進化のスピードが速く、ERPから人事システム、タレントマネジメントシステム、BIツールなどと、人事管理のテクノロジーは進化してきた。AIなどの活用したシステムも急激に増え、カオス状態だ、今後もこの状態が続くのかなとは思う。私自身、当時社内のSEなどをしていたのでシステムに触ることに抵抗はないが、使いこなせるほどその仕組みを正確に理解し、使いこなし、アドバイスができるかといえば、相当学習が必要だ。しかしシステムの目的や本質は当時私が社内SEをやっていたい時代と、さほど変わっていないと感じる。多くの人事の責任者や担当者とシステム化の状況なども話す。「データをどう分析すればいいですか」など質問は多い。また「まだデータをためている段階で目的はこれからです」など、びっくりするような回答もいただく。そんなことわかっているのだが、データを溜めることが目的ではない。必要がないのならデータなんか溜めなくてもよい。結局、この何年も人事管理のレベルは高くなっていないと感じる。「どうしましょう?」ではなく「こうしたい!」が進化していないということだ。    人事の重大な課題解決には時間がかかる。人事領域が法的な制約を受けており、ドラスティックな解決が難しく、社員の気持ちの面など影響が計り知れない。よって慎重に進めることになる。法律の改定、目先の問題に追われ、本来時間をかけて取り組むべき課題への対処が後回しになりがちだ。  「こうしたい!」を進化させるために、大切なことは意志と能力だ。日々のマネジメントの中でのひとりひとりへの関り方が重要になる。すべての仕事に目的意識を持たせること、しつこいくらい。これが無いと考える力が身につかない。またしっかり対話する、誠実に。そうしないと信頼関係が生まれない、組織に自分の意志をささげたいという気持ちは醸成しない。 「こうしたい!」の実現には時間がかかる。どうしても目の前の仕事に追われ、それが実現できない。体制づくり、業務の割り当てが重要だ。先の読めない時代であるからこそ、多くの企業の「こうしたい!」を進化させる、巧妙なマネジメントと強力なリーダーシップが求められている。

エンゲージメント向上 ~会社と従業員が離婚しないために~ | モチベーションサーベイ

エンゲージメント向上 ~会社と従業員が離婚しないために~

 「エンゲージメントの向上」に注目している企業が多いようです。エンゲージメントが向上すると企業経営にプラスの影響をもたらすと言われ、関心が寄せられています。  そもそも「エンゲージメント」とは何か。「エンゲージリング」という言葉には馴染みがありますが、これはいわゆる婚約指輪です。この場合、結婚の約束の意味で用いられています。それでは企業活動においてはどうでしょうか。会社と従業員の関係で言えば、会社は、この人はどういう人なのかを知り、一緒に仕事したいと思えるかを考えます。従業員は、就職活動の際には企業研究をし、自分が生き生きと働くことができるかどうかを検討します。それらがマッチングした時に入社が決まり、会社と従業員は結ばれ、苦楽をともにすることになります。入社は「結婚」と言ってもいいかもしれません。  ただ、残念なことに、離婚ということもあります。有名人が離婚した際の報道で「価値観の違いが原因だった」と報道されることがよくあります。結婚生活がうまくいくか、いかないかは夫婦が歩み寄り、互いの価値観を理解し、同じ方向を向いて一緒に人生を進んでいけるか否かという点が重要なのです。  これが企業と従業員の関係でも当てはまります。従業員が会社のビジョンに共感し、それに向かって組織と従業員が一体となってお互いに成長し、貢献しあえる関係、まさにこれがエンゲージメントの根幹と言えます。  組織から一方的に貢献、成長を求め、そのための機会を与えるだけでなく、従業員からも貢献したい、成長したいという意欲を見せる、つまり双方向の関係を見つめる必要があるのです。この関係性がうまく機能するときに、従業員は意欲的に生き生きと仕事に邁進し、仲間や会社に深く思い入れを持つようになるのです。  エンゲージメントが向上すると「従業員が辞めない」「生産性向上」「自らが積極的に働く」結果、業績が向上すると言われています。採用関連でも、エンゲージメントの高い組織では、たとえその会社を退職しても、退職者が転職クチコミサイトにネガティブな投稿することは、エンゲージメントが低い組織に比べて少なくなると予想されます。また、注目されているリファラル採用も、従業員が会社に対して貢献意欲があれば「この人は会社にとって力になる」と思うような人材を推薦してくれるでしょう。    このようにエンゲージメント向上は企業にとって、とても重要な観点です。注目されているのも大いに頷けます。しかし、エンゲージメント向上だけに着目していればいいわけではありません。 弊社のH Rデータ解説「労働者の就労に対する意識(年齢階層別)~時代で変わる「働く目的」、やはりお金が一番?~」 https://www.transtructure.com/hrdata/20210316/ にもあるように、労働者の大半が「お金を得るため(=金銭的報酬)」に働いているのが現実です。「給与はいらないので働かせてください!」なんて言う人はおそらく存在しないでしょう。いくら働きがいを感じ、働くことが楽しい状態であっても、給与を切り離すことはできません。エンゲージメント向上と同時に、適正な給与や福利厚生、職場環境等、組織から与えるものについても綿密に検討し、従業員を幸せにする手立てを考えることで、企業と従業員は結びつきを強め、互いの成長が図れるのではないでしょうか。

百人の賢人 | 人材開発

百人の賢人

 哲学者で数学者でもあるバートランド・ラッセルは、1920年代、日本や中国で講演活動を行った。1920年代の中国といえば、清朝が滅んだ後、中国国民党と中国共産党が共に立ち、諸外国と対抗する混乱の時代であった。ラッセルが北京大学の学生に向けて講演を行ったとき、学生の一人から質問が発せられた。「我が国は2億人余の国民を擁する大国であるのに、現在はこのような混乱状態だ。我が国はこのまま無くなってしまうのだろうか。」  これに対して、ラッセルは答えたという。「君の国に、行く末を真剣に思う100人の賢人が居れば、君の国は必ずや栄えていくことだろう。」  選りすぐられたリーダーが居れば、それがごく少人数であっても、組織はその目的を果たすことができる。これは1920年代の中国に限らない。現代の企業組織においても同じようなことが言えるだろう。こうしたリーダーたちは、組織の方向と未来の姿を明確に描き、これを具体的な言葉で表し、「普通の人々」にわかりやすく伝え、魅了し、彼らの一人ひとりがその実現に貢献できるよう、仕事を組み立て、標準化し、訓練し、士気を鼓舞する。そして、そのようなことを、諦めず粘り強く行うのだ。  問題は、そんなことのできるリーダーが簡単に見つかるのか、ということだ。毎年の人事評価の結果を吟味しながら、成績の良いエリート社員を選んで手厚い研修を行うか。利益貢献に大きなインセンティブをぶら下げてリーダーシップをひっぱり出すか。ヘッドハンターの会社に高いリテイナーフィーを支払って、適当な誰かが見つかるまでひたすら待つか・・。どれもあまりピンとこない。  ひと昔ほど前のことではあるが、旧来型のいわゆる「メンバーシップ型」の雇用と人事管理でやっている会社の経営者と話したことがある。大卒の社員はだれでも四十の声を聞くと管理職に昇進できる、給料は年を経るごとに上がっていく、そんなあなたの会社では、なかなかリーダーは育たないでしょう、と突っ込んだ。  思いがけない答えが返ってきた。育ちますよ、と言う。 「うちの会社は、経営者も一緒になって、新卒学生の中から優秀な者を選りすぐって採用してきます。大卒の社員は三十になると一斉に係長に上げます。四十になると課長にします。給料は、同期ならばよっぽどのことがない限り皆同じです。・・そうするとね、30人の同期入社の社員のうち、ひとりかふたり、必ず、『これじゃいかん』と考える者が出てくるのです。」  「これじゃいかん、というのは給料の話ではありません。会社のビジョンが、会社の戦略が、会社の能力が、これじゃいかん、と。将来を憂えているわけです。周りの社員の仕事ぶりが不甲斐なく見えるということもあるのかも知れません。」  「こうした社員は、悩み、考え、行動し、牽引します。30人のうちひとりかふたり、真のリーダーが生まれれば、うちのような単純なビジネスの会社は何とか経営していけるものですよ。」  会社への帰属意識、そこから生じる強い問題意識、そして仕事への情熱は、会社を引っ張るポテンシャルを形成する。そして、こうした要素は、高い報酬だけからでは引っ張り出せないのかも知れない。職務・成果型人事制度の効用は真正面から検討していかなければならない課題だが、それだけではないのだろう、と思う。  新宿副都心に程近いある大学のキャンパスに、ラッセルのエピソードに因んで、「百人創新」と記した扁額が掲げられている。私たちは、知恵を絞って百人の賢人を生み出し、新しい時代を切り開いていかなければならない。

鶏が先か、卵が先か ‐経営戦略と人材戦略の関連性‐ | 人事制度

鶏が先か、卵が先か ‐経営戦略と人材戦略の関連性‐

”組織は戦略に従う” ”戦略は組織に従う”  前者は1962年にアルフレッド・チャンドラーが提唱し、後者は1979年にH・イゴール・アンゾフ提唱した考え方である。 各企業が中長期計画を立て、その中長期計画の中には人件費、今後の採用計画等が当然の如く織り込まれている。 戦略を立てる順序としては、先に経営戦略、後に人事戦略を立てる企業が多い。”組織は戦略に従う”と言える。  VUCA時代と言われる今、予測困難な未来に対して経営戦略を立てることは困難を極め、 新型コロナウィルスによるパンデミックは、まさにその象徴と言えるのではないだろうか。  新型コロナウィルスが発生したここ1、2年で、クライアントからの相談は下記の様なものがあった。 ・リモートワーク下でのマネジメント ・設定した目標の下方修正 ・賞与原資の確保 ・雇用調整による人件費の削減 不測の事態への対応が後手に回った反省から、人事制度の設計だけではなく、人事戦略を考えたいという企業の相談が増えてきている。  多くの企業は経営計画を立てたものの、急激な環境の変化までは想定しておらず、経営計画の下方修正を余儀なくされ、それに伴い人事戦略の見直しを図る。中には複数のシナリオをプランニングし、この未曽有の事態に対処している企業もあるだろうが、その数は非常に少ない。“組織は戦略に従う”という考え方であれば経営戦略→人材戦略の構図に違和感はないのだが、VUCA時代において、この構図が正しいと言えるのか。  DX化、AI化が進み、ビジネスの潮流が非常に速く流れる中、競合他社との差別化に成功したとしても、その優位性は瞬く間に埋まってしまう。矢継ぎ早に新しい商品やサービスを企画しなければならないが、企画している間に競合他社が商品、サービスを提供し始めている。 ・MBO(Management by Objectives)では新たな商品やサービスは提供できない。我が社はOKR(Objectives and Key Results)を導入する! ・PDCAサイクルでは間に合わない。変化に対応するためにOODAループを活用する!  この様な声をよく耳にする。経営計画を実現するために、制度や仕組みを変更し、変化に対応していく体制を整えることは重要である。しかし、“経営戦略が下りてくるのを待ち、人事戦略を立てる”では間に合わない。先に記載した通り、長期的な経営戦略はこの様な時代では有り得ず、ビジネス変化に対応するために絶えず経営戦略を練り直さなければならない以上、人事戦略は経営戦略を先読みして作る必要がある。  人事部門に求められるものは、流動的な経営戦略にも対応できる人事戦略を立案することである。 つまり、“戦略は組織に従う”という考え方が非常に重要になってくる。 どちらが鶏でどちらが卵かではなく、人事戦略は経営戦略を実現するために立てられ、経営戦略は人事戦略に基づき立てる必要があると考える。  これからの人事部門の役割は、“経営のパートナー”としての役割が大きくなる。 しかし、企業が人を選ぶ時代は終わり、人が企業を選ぶ時代となった今、 “従業員のパートナー”であることも決して忘れてはならない。

パトスを演じる | 人材開発

パトスを演じる

 子会社の責任とは、自立的に自社の成果をあげグループ経営に貢献することである。グループ力に依存したり、企業グループという大きな組織の一員といった意識で、受動的にグループトップのマネジメントに従ってはならないのだ。自社が成果をあげ貢献するには、親会社の見解や指示などに耳を貸さずに自社の社長たる自らが経営判断しなければならない。親会社がいかに子会社たる自社を環境分析しその戦略を描こうとも、自分以上に意思とリアリティのある判断はできないからだ。  そう考えて多国籍企業グループの日本法人の代表に就いていたから、当時は、自ら策定した事業計画や予算を親会社に認めさせるべく、戦略的プレゼンテーションをもって、親会社との交渉という闘いに臨むことが期首の正念場だった。日本は業績低迷下であっただけに、ヘッドクォーターの管理担当役員からの横やりや掣肘、COOからの米国感覚の戦術指南をかいくぐって予算を通さなければならない。そのプレゼンのポイントは、ロゴスとエトスとパトスを駆使して、納得せざるを得ないと思わせることだった。  予算確定のグローバルミーティングで難しかったのは、説得力あるパトスの表明だった。ロゴスは、構想主導型の予算が立てられ、明快に示せれば問題はない。前年踏襲の積み上げ式予算など出したものなら、一発退場だが、まず意思ある戦略があり、それを裏付ける予算計画であればよい。エトスもさほど難しくなく、「いやいや日本は違うのだ」との常套句を、ビジネス倫理や社会性の文脈で語れればよい。  パトスの表出は、態度と言葉による。「内なる闘志」など忖度されないから、結果へのコミットメントを、はっきりと態度と言葉で表面的に示さなければならないのだが、その大仰で芝居がかったプレゼンテーションはなかなか抵抗あってできなかった。グループCEOは、そこは物足りない風情ではありながらも最終的には当方の予算を認めてくれた。  そしてすべて国の予算策定が終わると、おもむろに傍らに近づいてきて私の両肩に手を置き、眼を見据えて、 「日本は、お前のリーダーシップにかかっているんだからな」 と英語でなければ、気恥ずかしくなるような言葉をかけてくれたのだった。すかさず、両手を添えた力強い握手を返しつつ、感に堪えないといった表情をつくって大きくうなづく。ときに身に染まぬ演技をするのも大事な仕事なのだ、と自身に言い聞かせながら。  パトスを演じることはしかし、ピープルマネジメントをうまく行う基本でもある。その後、複数の会社の優秀なマネジャーたちにインタビューしたことがある。聞いたのは、「人を育てるマネジメント」の秘訣。各人各様の、経験のなかで独自に編み出した「日常の理論」は、実に興味ふかく示唆的だったが、共通していたワザは、相手に対する熱意や思い、相手の意思や感情への配慮が、はっきりと伝わる言動で示すこと。要は芝居がった言葉遣いで大げさにふるまうことの効用が大きいということだった。  なるほど、リーダーという役を演じる割り切りをもって、パトスを目に見えるように伝える姿勢が優秀なマネジャーに共通する。彼の地のCEOはそのことを、つまり、マネジャーとしての私の課題を教えてくれていたのかもしれない。

目的追究型コミュニケーション ~Quiz:珍しい緑色の木の実とは?~ | 人材開発

目的追究型コミュニケーション ~Quiz:珍しい緑色の木の実とは?~

 自然豊かな山道を歩いている。友人に「あっ!見て!緑色の実だ!珍しいね?!」と声を掛けられた私は「あぁ、本当だ。珍しいね。」と答える。  文字で見るとおかしな会話だ。植物に詳しいわけではないが、緑色の木の実は珍しくない。多くの種類の実は、熟れる前は緑色をしていることが多いのではないか。素直に「緑色の実は珍しくない」「実が熟れる前は大体緑色なのでは」と伝えるべきだっただろうか。  実は、先の会話は次のような光景を目前に交わされたものであった。 図表1 出典:photoAC  友人の方を振り返ると、発見の喜びに満ちた笑顔を浮かべている。  おそらく、鮮やかな紫色のような、この色の話をしたかったのだ。重要なのは彼女が発したワードの音が“MIDORI”だった事実ではない。見たことがない色をした実の存在に驚き、その驚きの度合いを伝えると共に、同じくらい驚いて欲しい、という彼女の発言の背景にある願望こそが重要だ。たまたま発された音が少し違っただけなのだ。  言葉は、人間が複雑な情報を伝えるための共通の道具として使っているにすぎないのだから、道具の精度よりも、まずは、何のために道具を使っているかという目的が最も重要だ。もちろん、目的を達成できるのであれば、道具の性能や優美さを追求したって構わないが。  従って、緑色というのは目前の木の実の色を正確に描写するための言葉としては誤っている、若しくは、緑色は珍しくない、という返答は、ここで交わされたコミュニケーションの目的に沿っていないと思われる。言い間違いを正すという意味では極めて正論だが、本人の願望に応えられているかという尺度ではナンセンスだ。  スムーズに物事を遂行するため、生産性や正確性が求められることが多いが、一見無駄に思われる、状況や雰囲気を自然に読むことこそがスムーズな遂行につながる。  「目前の木の実の色は紫色であるから、緑色としたあなたの発言は誤りだ」と指摘をすれば、2人が認識した物体と、それを表現する言葉が一致したことを即座に確認でき、短期的には非常にスムーズである。しかし、そうした返事をした場合、彼女が次回また新たな発見をした時に、情報を共有してくれるだろうか。長期的にみると、一瞬で得た正しさよりも機会損失の方が大きいだろう。  コミュニケーションを通じて状況を正しく理解し、認識の一致を測ることは大切だ。しかし、文字面の正しさに終始し、コミュニケーションの目的を見失うことがあってはならない。 より概念的に言えば、局所的かつ短期的な正しさを求めるあまりに、長期的な機会を損失すべきではない。  仕事柄、数字や文字情報に向き合うことが多い。単なる数字や文字の正誤や良否のみならず、情報の背景にある目的を緻密にデッサンしながら問題課題の解決に取り組みたい。

社長の任期 | 人材開発

社長の任期

 「経営者の任期」ということについて、常々考えさせられることがあります。あくまで私見ですが、日本企業の競争力低下の原因の1つに、役員を含む社長の任期が短いことがあるのではないかと考えています。  象徴的な事例を2つ紹介します。第一は、ある企業グループの製造子会社の事例です。 この会社の社長は、歴代、親会社から転籍して着任します。1期2年で2期4年を目途に、3~5年の在任期間で交代しています。着任した社長のほとんどは、部分的あるいは抜本的に人事制度を変えるという施策を行ってきました。半ば慣習的に実施されていました。理由は、それによって、各々の経営のスタイルを実現なさろうとしてきたのだと思います。 ところが、社員からしてみると、この期間での人事制度の変更は、現制度がようやく定着しつつある時期なので非常に混乱します。その結果、社員のモチベーションは低く、不平不満が高まる一方でした。 人事部は、社員のモチベーションの低さがどこからくるものなのか、その原因を確認することができずにいました。今回、初めて調査することになりました。私たちが実際に行ったモチベーションサーベイの結果でこの事実が確認できたのです。  第二の例は、別のある情報通信業の会社の事例です。社長の在任期間は2年間でした。 業績悪化が続き、今後の予測も決して明るくない状況で、短期的にコストを削減しなければならない。様々なコスト削減を行いましたが、それでもまだ足りません。もはや、雇用、つまり人件費を削減する以外に手段は残されていませんでした。希望退職を募って、まとまった人件費を削減し、V字回復に向けて、早期に舵をとることが求められていたのです。  しかし、当時の社長は、自身の短い任期の中でそのような施策を行うことができず、必要な手を打たずに去っていきました。結果として「問題の先送り」になりました。 後日談としては、その次の社長の時代に希望退職が行われました。しかし、前社長時代に試算された削減規模の2.5倍の人件費、削減数となってしまいました。  どちらの事例も、社長の任期の短さが影響した事例です。前者は、中長期的視点に立てば、短期間での人事制度改定は、よほど悪しき制度でなければ、通常は行わないところ、それを繰り返し行われてきたことを考えると、何のための制度改定なのか疑問だと言わざるを得ません。後者の場合は、例えば中期経営計画2サイクルで6年間程度あれば、一時的には血を流したとしても、中長期の計画の中で、再建策を描けたに違いありません。雇用調整は会社が生き残るために必要な施策であることは言うまでもありません。それを経て、V字回復を実現することが、経営責任を全うするということになるのではないかと思います。  神戸大学大学院経営学研究科教授の三品和広氏の著書、「経営は10年にして成らず」の中で、「経営には10年の大計が必要である」と記されています。10年と言わずとも、ある程度の中長期間耐えうる経営をしなければ、本質的は経営課題の解決には至らないと考えます。  それでは、中長期間耐え得る経営者を生み出すにはどうしたらいいのか。早期に、経営の素養のある人材を選抜し、ベースとなる経営リテラシーを身に着けさせる。さらに、経営の経験を積ませるような配置を行い、チャレンジングなポストに抜擢する。成果を生んだものを上に引き上げるというプロセスを繰り返すことだろうと思います。また、そうした経験のうちのすべて成功する訳ではないので、ある程度の失敗は許容する組織風土が必要だろうと思います。つまり、年齢、性別、人種にかかわらず能力あるものに責任を負わせることが当たり前という風土が、中長期間耐えうる経営者を生み出すことになり、日本の企業競争力を上げていくことにつながると考えます。

会社に貢献できる偏人を評価できますか? ~スペシャリストを評価し育成することが必要~ | 人材開発

会社に貢献できる偏人を評価できますか? ~スペシャリストを評価し育成することが必要~

 彼のバランス感覚は本当に素晴らしいね。彼女の技術知識はすごいけど、少し変わり者だから組織には向かないね。日本企業は、バランス感覚の秀でた人材を好み、ゼネラリストを創ることに重点を置き、評価してきました。ゼネラリストとは「広範囲にわたる知識を持つ人」のことを差し、ビジネスの場においては、総合職やプロデューサーなど、現場を広く見まわして、オールマイティに活躍できる人材です。ゼネラリストに最も向いている仕事といえるのが、部署の上層部やマネージャーといった管理職です。そのため、企業は挙って管理職になり得る人を育ててきましたが、バランスよく全てが秀でた人などなかなかいないはずで、バランスよく全てが平均的な人の集団になってしまいます。  人事コンサルティング会社が提供するサービスの一つに「人材アセスメント」というサービスがあります。適性検査やシミュレーションを行うことで、本人の現在の業務以外の能力分野、いわば潜在している能力について客観的な診断をするサービスです。日本企業の特徴は、「金太郎飴」です。一人前の(バランス感覚のある)管理職を育てるために、定期的な人事異動で様々な部署を経験させ、網羅的な教育研修を受講させる。そして、長年の社風や社内文化の中で育ってしまった結果です。  高度成長期、好調な米中経済に引っ張られてきた日本経済の中においては、バランス感覚に優れ、金太郎飴(調和に優れ)でも問題がなかったのかもしれません。しかし、技術革新、他業種からのコンペティターの出現、グローバルでの競争など、世の中の動き・変化が想像以上にスピードアップしている中では通用しなくなっていることを皆さんが気づいているはずです。その中で戦うためには、自社の強み・技術を駆使して新たな商品やサービスを創造し市場に投入できる、新たな武器を備えることが必至です。 そこで必要となるのが、自社における技術力や特殊技能力、特に個の力です。 彼の技術力は社内だけでなく業界においても右に出る者はいない、彼女の研究開発の経験と情熱は真似できない、彼の人脈・交渉術・営業力は他社には渡したくないなど、マネジメントは不向きでも会社に多大の貢献ができる人材は少なくないはずです。社内に埋まっている宝を見つけ、その人達を評価する仕組みを創り、会社へのエンゲージメントを高め、彼らの能力から会社の武器を生み出す。その第一歩として、“バランス感覚がなくてもいいでしょ”という考え方を社内に取り入れてもらいたいと思います。  バランス感覚に秀でた人を評価してきた人事制度も一工夫、必要です。一つの箱に入ってもらい(単線型)、“皆さん管理職を目指してください”と、会社からメッセージしている企業から、マネジメントコースとスペシャリストコースの複線型に変更されている企業が多くなりましたが、スペシャリストコースの基準(定義・評価等)が明確でなく、報酬についてもマネジメントコースに比べると劣ることが少なくありません。基準は企業によって異なりますが、社員のモチベーションが上がり、会社貢献に繋がる人材を育むための基準を追求することです。人事管理に注力している企業においては、複線化から更に進化し、職種の基準を明確化にするため複々線化で運用する企業もあります。技術職だけでなく、営業職も立派な専門職です。営業職の箱(基本、ずっと営業職)を設けることが得策な企業もあると思います。  最後になりますが、とは言っても、バランス感覚のある社員は一定数(管理職ポスト程度)必要であることを付け加えておきます。 以上

タレントマネジメントの導入 | 人材アセスメント

タレントマネジメントの導入

 最近、クライアントの担当者との会話で、タレントマネジメントについての話題になることが増えた。このタレントマネジメントは、多様な人材が在籍する大手企業を中心に導入が進んでいるが、タレントマネジメントを行う理由とは何だろうか。  タレントマネジメントは、自社のタレント(社員)に、自身が保有している能力やスキルを最大限に発揮してもらうことにより企業成長につなげていく取組みで、採用~配置、育成、評価等々の人事施策を戦略的に行うことを指す。人材の流動化が激しいアメリカで、優秀な人材の定着を目的として1990年代に考案されたと言われている。  かつて日本は大量採用が主流で、企業はできるだけ多くのポテンシャル人材を獲得することに注力していた。入社すれば定年までその企業に在籍する終身雇用制度が一般的であったため、入社後にじっくりと時間をかけて企業が求める人材へと育成していく余裕があった。  しかし現在は、労働人口の減少により、企業が求める経験やスキル、素養を備えた人材を採用することが必要になってきている。このタレントマネジメントを活用すれば、募集するポジションの人材要件や配属先のタレントの傾向を確認できるため、採用活動を今までより円滑に行うことができる。また、個々人のスキルや思考、価値観を把握することで、誰をどのポジションに配属すれば生産性が上がるのかが分かり、最適な人材配置が可能になる。  また、雇用形態や働く環境の多様化も導入理由の一つだ。今は転職することが普通になり、ひとつの企業のために働くという考え方が薄れ、業務委託やフリーランス、あるいは副業なども普及してきた。企業はいっそう自社の方向性や経営ビジョンに共感し、成長を支えてくれる人材を確保することが必須となっている。そこで人的資本となる社員の思考や価値観を把握し、企業が求める人材の発掘や定着に生かすため、タレントマネジメントに注目が集まるようになっているのだ。  一方、タレントマネジメントシステムを導入してもうまく機能しない、期待した効果が得られないと悩む企業も少なくない。 タレントマネジメントを行う際に注意しなければならないことは何だろうか。何よりも重要なのは、「タレントマネジメント」を自社に取り入れることによって何をしたいのかを明確にしておくことだ。社員をデータベースで管理するからと情報だけ蓄積しても、活用しなければ宝の持ち腐れとなってしまう。また、その目的を理解できなければ、個人情報を集めるということに不信感を持つ社員、なかなか情報を提供しない社員も出てくるだろう。そのため、タレントマネジメントの目的をできる限り開示して、社員にアナウンスする必要がある。自社の組織課題を整理した上で、取得した情報を何に活用するのか、データを蓄積し、どのように管理していくのかを考え、それによって何を成し遂げたいのかを明らかにする。そして人事、現場、特に経営陣としっかりと事前にコンセンサスを取り、計画的に実施していくことが大切だ。

「大学3年の4月から採用活動をしたい」 大企業やメガベンチャー企業の人事部管理職の本音 | 適正人員・人件費算定

「大学3年の4月から採用活動をしたい」 大企業やメガベンチャー企業の人事部管理職の本音

※今回のコラムは、フリーランスのジャーナリスト吉田典史氏の執筆です。内容は個人によるもので、当社を代表するものではありません。 ============================================  最近、人事労務の雑誌で新卒(主に大卒)採用をテーマに大企業やメガベンチャー企業の人事部管理職10人程に取材した。これら8社は売上や経常利益、正社員数で金融、IT、メーカー、商社など各業界で最上位の3社以内に入る。銀行や信用調査機関からの評価は全業界で最も高いグループに位置する。  それだけに、新卒採用での母集団形成は大成功している。ここ10年、総合職の年平均のプレエントリー者数は10~12万人、本エントリーは1~2万人という。この中からセレクトに次ぐセレクトで、約30~40人を選ぶ。1万人とすると、倍率は300倍を超える。  定着率も概して高いようだ。30歳前で退職するのは毎年、同期生全体の3割以下という。年によっては2割以下になるとも聞いた。レベルの高い人材が多数ひしめく、「密度の濃い競争の空間」になっているのだろう。  人事部の管理職たちは、人材を育成するのは次の仕組みが必要だと強調していた。 1、大量のエントリー者の中から自社にとってメリットの大きい人を厳選 2、定着率を高め、密度の濃い競争の空間を作る 3、互いに刺激し合い、競争の空間を作る  ここで筆者が読者に投げかけたいのは、新卒採用における「通年採用」だ。通常、この場合の通年とは就職協定を守るならば大学4年の4月からスタートし、1年後の3月までに繰り返し、試験を行うことを意味する。  今回取材した人事部管理職たちは、この意味での通年採用に関心がないようだった。1年かけて採用活動をしなくとも、4~5月に数万人の学生が押し寄せ、狙い通りの人材を獲得できているのだ。その後、夏や秋、冬に採用する理由がないのだろう。人事部管理職たちは、自社の新卒採用試験の自己採点を「80~90点」と話していた。  欲しているのは、現在よりも採用活動スタートの時期を1年程前にすることだった。大学3年の4~8月には内定を出したいのだという。この時期に、日本に進出する外資系企業(特に金融やコンサルティング業界)が、優秀な学生を獲得する傾向が年々顕著になっているからだ。  ただし、大学2年にまで前倒ししようとはしていないようだった。その大きな理由には、内定を取り消し、裁判などに訴えられると企業側が不利になるケースが多いことを挙げていた。また、現時点で4年4月からスタートしており、2年にまで前倒すことが想像できないとも話していた。  取材した8社のうち3社は大学3年の8~12月には特定のウェブサイトを使い、そこで学生と接点を持つことがあるという。学生から質問を受けると、サイトの掲示板で人事部員が答える。やりとりを繰り返す中、親睦を深め、双方の合意でじかに会う機会を設けるようだ。  人事部員が会うと、就職協定順守の姿勢を打ち出している以上、問題になりうるとして学生の在籍大学のOB・OGが1対1で会うようだ。人事部員から渡された評価シートに、OB・OGは学生の印象などを書き込む。人事部員数人でそれを確認し、その後、さらに違うOB・OGが会うケースもあるらしい。そこで、4年の4月以降の本試験を受けるように誘う場合があるという。ここまでくると、筆者には採用活動にしか見えないのだが、人事部管理職らは「あくまで社会貢献活動」と説明する。  今なお、「一括採用」「通年採用」の議論をしているメディアや識者がいるが、少なくとも今回取材した大企業やメガベンチャー企業の人事部管理職はそれとは違うことを考えている。「大学3年の4月から採用活動をしようとしても、それができない。いざ、採用活動を始める4年の4月に、欲しい学生が他社に内定となり、私たちの前にいないようにならないか。それが、怖い」。こんなことを語っていた。そこに強い不満と疑問、焦りを感じているようだった。  新卒採用のあり方をあらためて見つめ直し、大胆に変えるべきと痛感した。急がないと、取り返しのつかないことになりかねない。もう、遅いくらいではないか。