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吉岡 宏敏

YOSHIOKA HIROTOSHI

シニアパートナー

PROFILE

東京教育大学理学部応用物理学科卒業。
ベンチャー企業経営、ウィルソンラーニング・ワールドワイド株式会社コーポレイト・コミュニケーション事業部長等を経験後、株式会社ライトマネジメントジャパンに入社。
人材フローマネジメントとキャリアマネジメントの観点から、日本企業の組織人材開発施策の企画・実行支援に数多く携わる。ライトマネジメントジャパン代表取締役社長を経て、現職。 

開かれた場としての企業を
ともに創りたい

企業や組織の意味合いは、ずいぶんと変わりました。
企業は、単に営利装置として継続的に在り続けるだけではなく、すでに、規模的にも影響的にも「社会構成単位」です。働く人々にとっては、組織が、単に仕事に就いて報酬を得る場だけではない、自身の可能性と想いを拓く「機会開発環境」でなければ参加したいとは思いません。

そうした、「社会に開かれ人々が交通する場」としての企業、その経営に資する人事施策をともに創っていきたいと思います。

書籍

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  • 『職はインターネットにあり』
    NTT出版 (1996.6)
  • 『ソシアル・リプレイスメント仮説』
    ユー・ピー・ユー

執筆コラム

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評価100本ノックのすすめ(評価品質を高めるために②) | 人事制度

評価100本ノックのすすめ(評価品質を高めるために②)

 前回(「正確な測定」をあきらめるなー評価品質を高めるために①)提起したような評価基準を明快に定めた評価項目設計をおこなったとしても、評価のブレは必ず発生する。評価基準の抽象性を完全にはなくせないこともその原因ではあるが、最大の問題は、管理職の評価スキルが低いことだ。いや、正確にいえば、評価のスキルを鍛えられることなく、評価の実践を強いられていることだ。逆に、現行の評価項目定義があいまいだったとしても、まず評価スキルのレベルをあげれば、評価品質はかなり高めることができる。  なぜ、評価スキルが鍛えられないか。確かに新任管理職研修の一環として、評価の仕方は学ぶものだが、多くは自社の評価制度の理解と一般的な評価留意(基準と事実に即した評価原則やよくある評価エラーなど)の学習にとどまる。あとは実践の中で、せいぜい二次評価者チェックなどを経つつ、自分なりに評価スキルを身につけていくから、スキルレベルはばらつき、結局、「あいつはデキる奴だ」といった印象評価が幅を利かしたりする。  管理職者の評価スキルを向上させるために、新任・既任含めて徹底した評価力向上トレーニングを行えばよい。「研修」ではなく「トレーニング」、つまり座学ではなく反復練習によって、確実なスキル向上を図ることである。有効な方法は、以下の3つのフェーズで構成される。     1.課題の特定と確認     2.実践トレーニング     3.実践フォロー  第一フェーズは、評価者たちの課題を明らかにし、トレーニング内容をそれに合わせチューニングするとともに、本人たち「何が問題か」を突きつけることを狙いとする。常套的な課題抽出の方法は、評価情報を集計分析し、各評価者の甘辛や評点分布といった「クセ」を見える化することだ。360度診断やエンゲージメントサーベイを行っていれば、そこからも上司の評価行為の問題は見える。  さらに我々が推奨するのは、「評価力アセスメント」の実施。同一のシミュレーション下で、部下行動をいくつかの評価項目で評価するテストで、評価定義に示される基準に照らして部下の行動事実を評定することが、いかにできていないか、また、その原理原則をいかにわかっていなかったか、が如実に浮き彫りになる。  第二フェーズは、正しい評価ができるようなスキル習熟のための評定トレーニング。さきの課題を踏まえて、100本ノックのように、評定をくりかえす。そこでのポイントは、共通ケースを使ってのウォーミングアップののち、実際の部下を評価し、互いに相互検証し、講師の指摘も踏まえ、正しい評価を決定するセッションを時間の許す限り行うことだ。とくに評価者同士の侃侃諤諤の議論での気づきが効く。  同様に、目標設定についても、現状の目標の品質状況を総覧し、共通課題を明らかにし、適切な目標の要件を繰り返し教え込む。  そのうえで、各評価者は実際の評価に臨む。その実践のなかで、評価品質向上をはかるのが、第三フェーズ・実践フォローだ。たとえば、「目標設定レビュー」。実際に期首にたてられた目標をレビューし、その是正を指導する。目標はなんども立ててきていて自己流が身に沁みついているから、適切な目標設定の原則を学んでもなかなか実行できない。なので、実際の目標そのものを「添削」するほうが効果的なのだ。同様に、期末の「評価票レビュー」を行う場合もある。  もうひとつは、実践しての課題を採取し、その解決をはかるというフォロー施策。半期末か期末のタイミングで、評価者からアンケートをとる。実際の評価をしていくうえで、評価者が直面した問題やリアルな悩みを把握し、それに対してフォロートレーニングを行うということである。併せ、被評価者アンケートも行うとさらにシビアな実践課題が得られる。  「正確な測定」のためには、①評価の仕組み ②評価の運用 ③評価のスキル でそれぞれ打ち手があり、前回は①仕組みの観点、今回は③スキルの観点での提起を行ったが、②運用の観点での施策に触れる余裕がなかった。この運用上の施策もまた、きわめて実効性の高い評価品質向上策なので、追加でもう一回書く予定だ。 お役立ち情報→【人事評価運用のお悩みはトランストラクチャが解決】

「正確な測定」をあきらめるな(評価品質を高めるために①) | 人事制度

「正確な測定」をあきらめるな(評価品質を高めるために①)

 階層別の能力課題を定量的に把握するためには、評価情報を経年で集計分析するとよい。個々人の評価結果は、その資格等級で発揮すべき能力に対しての現状レベルを示すから、各資格等級における共通する能力課題や、その経年変化、部署ごとの違いも浮き彫りになる。この「スキルギャップ」をもとにして育成策を練るのが、合理的な研修設計の常套手段だ。  だからまず、評価情報を分析しましょうと言うと「いやぁ、でも上司の評価だから、ブレもあるしデータとしてどうかな」との声が返ってくることがある。結果を見る業績評価ならまだしも、能力評価については、その正確性をハナから信じていないかのような反応。経営サイドが、自社の管理職には「正確な評価」はできないとはあきらめているのではないか。そんな印象をうける機会は、実は少なくない。  能力評価は、通常、昇給・昇格に反映させるが、評価結果に差がある二人の人材について、「この二人同期だし、実際のところ、仕事ぶりはそんなに違わないし、両方昇格させません?」などという情景も珍しくない。それが、年功的運用を助長しているわけだが、そこには「しょせん評価は評価で、実態は別」という暗黙の共通認識さえうかがえる。  まず、この状況を変えねばならないのではないか。人材の能力や動力(エンゲージメント)を高め労働の成果を最大化すべく人的資本に投資するのであれば、現場での評価はその検証と駆動の道具であり、評価品質のレベルは人的資本経営の品質を左右するからだ。ゆえに「正確な測定」としての評価の実現が愚直に追及されなければならない。  また、じつに多くの企業が評価運用の問題を抱えている。社員の不満(=評価の不公平感や不透明感)がエンゲージメントを下げる、処遇決定だけで育成には使えない、マネジャーの評価負荷が高すぎる等々さまざまだが、それらを解決するには、評価フィードバックの技法や育成前提の評価運用の工夫以前に、まず「正確な測定」が出来なければ始まらない。  評価品質を向上させるには、①評価の仕組み ②評価の運用 ③評価のスキル の3つの観点で手を打つ必要がある。   最初の観点、①評価の仕組みでいえば、正確な測定のためには「評価項目をいかに明快な基準たりうるものとして設計するか」が勘所となる。正確な測定=絶対評価(基準に照らした評定)であり、評価項目定義が、照らすべき基準だからだ。ともすれば、能力評価項目は抽象度が高く、基準としてはあいまいになりがちなので、その項目で「なにを評価するのか」がきちんと概念整理され、記述されることがポイントになる。  たとえば、G3等級(管理職手前)の「課題設定力」が以下と定義されていたとする。  ■方針を踏まえ自組織の課題を抽出・整理し、上位者へ的確に提言している   これはどの会社でも使えるような一般的な記述だが、自社においてどのような「抽出・整理」を評価するのか、どのような「的確」を評価するかは、見えない。これがA社ではこう書かれている。  ■方針を踏まえ自組織の現状の問題に対して原因を深く考察し、信頼性の高いデータなどで検証しながら、具体的にやるべきことを上位者に提言している   このような定義文は、A社のG3等級の課題設定は、「原因を深く考察」「客観的な検証」「施策の具体性」がなければいけないというメッセージになっており、その観点で部下の行動事実に照らせばよいから、判断基準足りえている。   ついでにいえば、ここでは提言する施策の妥当性は問うていない。妥当な施策を定めるのは上位者たる管理職者で、それは管理職用の「課題設定力」項目定義で問われることだからだ。G3には、提言する施策の具体性とそのもとになる問題の考察と検証の行動だけを問うている。つまり、A社では、「課題設定」のプロセスの何を評価するかが階層的に定まっている。  こうした評価項目の設計は、人事部門だけではなく、現場の管理職を巻き込まないと難しい。評価項目が抽象的だから職種別「行動例」をつけるという設計をする場合もあり、現場への依頼というと行動例作成としがちだが、実はそうではない。細かい行動例は、むしろ評価のブレを増大しかねない。大事なことは、さきのA社の例のような概念整理にこそ現場管理職の知見をいれ、評価定義自体を実際の行動事実と照らしやすい、いわば「使える基準」として仕上げることである。  以上は、評価制度の設計や改訂する場合の留意だが、評価の仕組みはもうできあがっていて、確かにあいまいな評価項目ではあるが、現時点で変えようがないという場合でも、評価品質を高める方法はある。次回は、運用のなかで品質を担保し、また確実に評価スキルをあげる手法を提起したい。

イノベーション人材をどう発見するか  | 人材アセスメント

イノベーション人材をどう発見するか 

 数年前からほとんどの企業の中期経営計画には、「イノベーション」という言葉が書かれ、期首の社長メッセージでもイノベーションの要請は常套句のように頻出する。しかしいま、日本企業でイノベーションが続々起こっているという状況とは程遠い。掛け声だけで終わっている要因の一つは、イノベーション創出の、もっとも基盤的な手が打たれていないからではないか。基盤とは、イノベーションを駆動する人材の確保・育成であり、そのための人的投資の戦略。イノベーションの起点になる新しい発想は、人々の頭のなかからしか生まれないからだ。  たとえば、国が提起し、各企業が濃淡はあるものの一斉に取り組みつつある「人的資本経営」には「イノベーション」が見えない。契機となった人材版伊藤レポートが斬新だったのは、「資本市場の力を借りて人事・人材変革を起こす」との目論見。投資家が着目するのは、収益性のみならず成長性だから、そこに資する人事戦略、つまりイノベーションのための人的資本経営こそが勘所のはずだが、多くの企業は、国から例示された定型一般的な指標情報の開示に留まり、女性管理職比率や働き方改革といった「雇用面のSDGs」遵守、いわば「守り」は見えるが、「攻め」(=イノベーション)のストーリーは一向に見えない。  「攻め」のための人への投資とはなにか。製造業でいえばR&D人材への投資、業種の違いを超えていえば、DX人材への投資はひとつの鍵になるものだが、それだけではVUCA時代の成長にはつながらない。未来が予測不能に変化するのであれば、会社のどの部署、どの機能であっても、同じことをやっていることがリスクだし、成長もない。新商品・新事業開発の職務はもちろん、営業職や管理職であっても開発的に新しいことに臨む能力が求められ、またどの仕事であっても「前提を鵜呑みにせず自分の頭で考える」能力が共通して必要になる。  イノベーションの基盤であり起点になる、こうした能力開発への投資が攻めの人的資本経営の橋頭保だとすれば、まず最初にやるべきことは、社内のイノベーション人材を発見することではないか。こうした「新しい領域を切り開く能力」は、階層と分業で合理的効率的に組まれた企業組織では原理的に見えなくなってしまうからだ。多くの企業では、誠実と協調を旨とし、役割とルールに従い、組織として成果を出すことが行動原理であり、出る杭はうたれ、斬新な発想や価値観の異質性は捨象される。そうした根強い協働スタイルによって、持っていたかもしれない人々のイノベーティブな能力は身を潜め、摩耗していったかもしれない。まず、現有のイノベーション人材リソースを把握し、新たな調達や効果的育成を計画化するとよい。  では、日常の仕事ぶりや人事評価では分からない、隠れたイノベーション人材をどう見極めるか? イノベーション人材に必要な思考力とは、正しい答えに到達する収束的思考ではなく、VUCA状況のなかで、俯瞰し様々に発想し仮説化する発散的思考力。そうした思考力レベルの、第三者視点による評定には3つの方法がある。 ① 行動から思考力を「推察」する(=シミュレーション演習によるアセスメントセンター方式で「創造性」 や「変革指向」といった思考系ディメンションに着目する)  ② 過去の経験から思考力を「判定」する(=インタビュー・アセスメントにより定性的に判定する) ③ 思考力そのものを「評定」する(=正解のない問いに対する回答を評定する)  ひとつめのセンター方式アセスメントは、「思考=頭の中でどう考えているか」は見れないので、発揮行動からの「推察」にとどまり、二つ目のインタビュー方式は、例えば、創造性を発揮するような仕事経験が一切なければ、創造力は判定し得ないといった限界がある。有効性が高いのは三番目の思考力そのものの評定である。これは、自身の考えを結論だけでなく、どう考えていったかを含めて書きだした文章を解析する方法(Think Aloud Assessment)だ。  ここで使われる、「正解のない問い」とは、たとえばこんなものだ。  下記は、武将・伊達政宗が残した言葉と言われています。これは、彼のある苦い経験、あるいは成功体験に基づいているとします。その具体的体験をあなたなりに想像し、できるだけ様々な可能性を書いてみてください。 「大事の義は、人に談合せず、一心に究めたるがよし」(意味:大切なことは人に相談せず、一人で悩みぬいた末に結論を出すほうが良い。)  この答を、結論だけではなく思考プロセスを含めて、文章として書かせる。そこで、どれだけ発想を広げ、推論し、仮説をつくれているかを評定する。この方式が変わっているのは、制限時間を設けないことだ。好きなだけ考えて書いてもらってよい。ときに次々にいろいろ思いついてやめられなくなる人がいる。問いの答えを考えること自体が面白くなってしまうのだ。つまり、内発的動機付けが働き、たくさんの言葉を書き連ねてしまう。  内発的動機付けが創造性発揮のエンジンであることが創造性研究で明らかになっていることを考えれば、この方法の妥当性はあきらかなのである。 ※この手法=Think Aloud Assessmentについては、 下記当社セミナー・外部イベントにて詳しくご紹介をいたします。 ・2024年10月17日開催 : 当社主催セミナー 「イノベーション人材をどう発見するか?」 ・2024年11月  6日開催 : 日本の人事部主催 HRカンファレンス