
2025.03.27
外国人労働者の実態~雇用状況と共生の道~
現在日本において、労働力不足は深刻な問題となっています。年々人口は減少し、高齢化の進行は止まりません。そのような中でも経済を止めるわけにはいきません。女性活躍、定年延長、Wワークなど労働力確保のための対策がなされています。その中で、外国人労働者の活用にも期待がかかるところとなっています。 2023年の10月時点の集計で、日本で雇用されている外国人労働者は過去最高の200万人を超えました。対前年増加率は12.4%、人数としては約22万人増加と、コロナ禍を経て多くの外国人が日本で就労しています。また、外国人雇用事業所についても年々増加しており、外国人労働者の活用は拡大しています。 【図表1: 外国人雇用事業所数及び外国人労働者数の推移】 出典:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況に基づき作成 産業別で賃金を比較すると、各産業の正社員・正職員の平均賃金よりも低く、正社員・正職員以外と同等かまたは少し高いという水準です。 外国人労働者の賃金は月額約24万円で、これは一般労働者の約7割に相当します。外国人労働者にも日本の法律が適用され、最低賃金も日本人同様です。しかし、一般の水準に比較して低いのは、在留資格区分による賃金の違いがあります。「技能実習」の区分は月額17.7万円と低く、それにより外国人労働者の平均賃金が下がってしまっていると言えます。技能実習生の問題は多く耳にするところですが、人材育成を通じた国際貢献を目的とした制度にも関わらず、労働力確保の手段として利用されるケースがあり、低賃金、長時間労働、ハラスメントなどの事実もあり、失踪してしまうケースもあるのが実情です。 高水準とは言い難い賃金ながら、わざわざ日本に来て就業するのは、自国の平均所得と比べれば日本は母国よりも高いためです。国籍別で見ると、ベトナムからの労働者が最も多いですが、ベトナムの平均月収は約4万円です。 【図表2:第一次産業年齢別就業者数】 出典: 「令和4年 賃金構造基本統計調査」に基づき作成 日本で稼いで、自国に仕送りをするなど、「稼ぐため」に日本での就業を選んでいる労働者も多い一方で、在留外国人に対する基礎調査では、就労関連での困りごととして、「給料が低い」というものが最も多く選ばれています。再度ベトナムの例をあげると、ベトナムは近年経済発展が見込まれ、賃金が上がってきています。そのような発展途上国と呼ばれていた各国の賃金が上がり、日本は賃金が上がらないという構造が続けばわざわざ日本で働く魅力は無くなってきてしまいます。 【図表3:就労に対する困りごと】 出典: 出入国在留管理庁「令和4年度 在留外国人に対する基礎調査」に基づき作成 賃金に対して不満がある外国人労働者が多いということは事実ですが、それでも日本に来て働こうという理由は他にもあるでしょう。外国人労働者を雇用するのであれば、外国人労働者と「共生」を考え、そのサポート、フォローアップを徹底する体制を整え、やりがいを持って働いてもらう基盤と意識を作ることが重要です。ただ、日本人のみの会社においても、定着してもらい、気持ちよく働いて活躍させるのは苦労するところです。外国人労働者を雇用するならば倍以上、社員の働きがい、働きやすさについて意識を向ける必要があるのではないでしょうか。 以上