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小売業の人的資本ROI<br /> ~労働集約型ビジネスにおける人材投資のあり方 | 調査・診断

小売業の人的資本ROI ~労働集約型ビジネスにおける人材投資のあり方

当連載では、人的資本の重要指標として「人的資本ROI」の計算法、解釈と業界別分析を行っています。末尾の関連記事と併せてご覧ください。同じ業界であっても商材や経営戦略・ビジネスモデルが異なれば、当然、人的資本ROIの水準にも差が出ますが、一般的な業界水準の理解や、動向の把握が重要です。 今回は、直近5年分の小売業における人的資本ROIについて考察します。図表1に示すように、この業態には、百貨店、総合スーパーマーケット、コンビニエンスストア、家電量販店、ドラッグストア、ホームセンターが含まれ、さらに専門店や個人経営の商店、無店舗の小売事業(ECや通販など)も含まれます。 図表1:2023年 主要な業態から見る商業販売額 出典:経済産業省「2023年小売業販売を振り返る」(2024年)より引用 小売業は典型的な労働集約型の業種とされており、他業種と比較して人件費率が高い一方で、リターンは比較的低いという特徴があります。 図表2は、小売業の資本金規模別における2018年度以降の人的資本ROIの推移を示しています。データを見ると、資本金規模や年度によって、人的資本ROIが2~6割と大きく変動していることが分かります。特に、新型コロナウイルスの影響により2019年度以降、多くの企業で売上高が大きく変動し、それに伴う人員削減などもあり、数値が乱高下しています。また、資本金規模別の比較では、規模の経済が働き、資本金規模が大きいほどリターンも大きくなる傾向が見られます。 図表2:小売業 人的資本ROI推移(資本金規模別) 出典:法人企業統計調査 時系列データを基に筆者計算 ※計算式:人的資本ROI={売上高ー(原価+販管費ー(給与+福利厚生費))}÷(給与+福利厚生費)ー1 人的資本ROIを向上させるには、売上高を増加させること、経費を削減すること、人件費を削減することが必要です。しかし、単純なコストカットは持続可能な成長に繋がりません。例えば、店舗型の小売企業では、物件費と人件費が大きなコスト要素です。利益を生まない店舗を閉鎖し、利益を出している店舗にリソースを集中する施策は一般的ですが、このような施策によって一時的に利益率や人的資本ROIを向上させることはできても、優秀な人材の流出や組織力の低下を招き、長期的な成長に悪影響を及ぼすリスクがあります。人的資本ROIを持続的に向上させるためには、人材への効果的な投資を行い、売上や利益の増加に繋げる視点が重要です。 小売業では、非正規労働者の比率が高く、最低賃金の引き上げが進む中で、人件費の増加が予測されます。従業員教育やキャリア採用による戦略的人材の育成・確保、シニア層の活躍推進など、従業員の能力を最大限に引き出し、付加価値を高めることがこれまで以上に重要となっています。一方で、人口減少による人手不足は深刻な課題であり、セルフレジや自動化を推進し、生産性を向上させることが急務です。また、現在、百貨店と家電量販店、コンビニエンスストアとドラッグストアなどにおいて、扱う商材の差異が小さくなりつつあります。小売業は規模の経済が働きやすい業種でもあるため、M&Aを活用して競争優位性を確保する方策も有効です。 個人消費が本格的に回復するフェーズに備え、人的資本ROIを今後も向上させ、経済の変動に対応できる柔軟な体制を築くことが求められます。人材への投資と並行して、DXの推進やM&Aといった重要な施策を実行できる人材の登用や育成がますます重要になるでしょう。  「人的資本ROI」が分かる!~「HRデータ解説」バックナンバー 人的資本ROIとは~人的資本経営の重要指標:人財への投資効率を知る~  人的資本ROIと労働生産性の関係性~人数から投資効率を考察する~ 人的資本ROI水準に影響する外的要因~ITバブル崩壊・コロナからの回復の早い業種・遅い業種~  

労働力の量と質の推移 <br />~人口減少時代に向けて~ | 人事アナリシスレポート®

労働力の量と質の推移 ~人口減少時代に向けて~

 内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」によると、日本の総人口は今後減少し、65歳以上の人口割合が今後更に増えるという推計が算出されています。少子高齢化が進むにつれて生じる労働人口の減少により、日本経済が停滞してゆくことが危惧されています。日本経済が持続的に成長するためには、労働力をいかに維持するかが社会的な課題となっています。  こうした背景の中、労働力として注目されている一つが、65歳以上の人材の労働力確保です。2021年4月の改正高年齢者雇用安定法においても、70歳までの就業確保が企業の努力義務となっています。実際、図表1にもあるように、高齢者の就業率は年々上昇しています。65歳以上の高齢者の就業率は2015年から年々上がっており、直近の労働人口全体も緩やかに増えています。このように、労働力の"量"は高齢者の就業率増加もあり、短期的には維持できていることが見受けられます。 <図表1> 労働人口と65~69歳の就業率の推移 出所: 総務省(2023)「労働力調査(基本集計) 2023年(令和5年)1月分結果 20~69歳の人口、就業者数、就業率」をもとに作成  労働力の"質”の推移を確認するため、業界別の労働生産性 (労働者1人あたりが生み出す付加価値額)の推移と平均従業員数の推移を比較しながら解説します。  飲食サービス業(図表2-1)では、労働生産性は常に減少傾向にあり、従業員数も2019年以降は落ちている傾向があります。昨今、大手飲食チェーン店を中心に注文や配膳等業務の機械化が進んでいますが、一人当たりの付加価値=”質”の面では効果が表れていません(付加価値には人件費が含まれるため)。今後機械化がさらに進み、人員数が安定・最適化されたときに高い付加価値を生み出すことができているのかが重要になってきます。 <図表2-1> 労働生産性×従業員数の推移_飲食サービス業 出所:財務省(2021)「法人企業統計調査」をもとに作成  情報通信業(図表2-2)では、2016-2017年にかけて従業員数が減った一方で労働生産性が上がっており、2017-2018年では従業員数が増える一方で労働生産性が下がっており、それぞれが逆行した動きをしています。新規就労者が多く、業界内での転職等による人の動きが活発な情報通信業では、仮に即戦力採用の中途社員だとしても、付加価値への貢献=”質”といった意味では、業務習熟するために必要な経験を得ることに時間がかかりやすい、もしくは時間がかかってしまっている可能性があります。 <図表2-2> 労働生産性×従業員数の推移_情報通信業 出所: 財務省(2021)「法人企業統計調査」をもとに作成  医療福祉業(図表2-3)では、2018年度に従業員数が減少しましたが2020年以降は上昇傾向にあります。一方、労働生産性も2019年以降で安定的に上昇傾向にあります。高度な知識や資格の基盤が前提にある医療福祉業界では、即戦力として労働生産性=”質”に寄与しやすい業種といえます。 <図表2-3>労働生産性×従業員数の推移_医療福祉業 出所: 財務省(2021)「法人企業統計調査」をもとに作成  定年延長・再雇用の活用によって短期的には労働力の”量”の維持が期待できますが、将来的に総人口が減少する日本では少ない人数でいかに労働力を維持していくかが課題となります。そのため、労働力の“質”にも目を向け、労働人口が将来的に減ったとしても安定的な労働生産性が確保されるサービス形態への変換が求められるのではないでしょうか。限りある労働資源をいかに有効活用していき、労働生産性を高めていくかの議論が各企業内でより活発化していく必要があります。自社の生産性をより高めるための阻害要因を各社で見つめ直し、DX推進やリスキリング、イノベーション推進等によって業務効率化とその価値向上に務めることが重要となります。 以上

遅れているリカレント教育<br />~企業側も理解と活用を~ | 人材開発

遅れているリカレント教育~企業側も理解と活用を~

 近年、リスキリングやリカレント教育など、社会人に対する学び直しが重要視されています。 注目され始めた背景には、DXの加速化など、企業・労働者を取り巻く環境が日々変化している一方で、労働者の職業人生が長期化しており、変化に対応するべく個人の能力を向上させることが求められていることがあります。  リスキリングとリカレント教育の主な違いは、だれが主体となって取り組むのか、そしてその学びのプロセスにあります。リスキリングは、新しい職業に就くため、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、企業側が主体となって、個人が働きながら学ぶことを支援することです。一方リカレント教育は、就業した後も個人が主体となって専門能力を向上させ、キャリアを自身で形成するために、「働く→学ぶ→働く」を繰り返すことです。両者の違いはあるものの、どちらも“学び直し”という観点では同義であり、本記事では、「働く→学ぶ→働く」を繰り返すリカレント教育にフォーカスし、現状を量と質の観点から検証し、あるべき姿について解説します。  まずは、量の観点から現状を把握します。図表1は、大学数の推移を表しています。リカレント教育における学びのプラットフォームのひとつである大学は、2010年までは順調に増加し、2010年以降800校程度と横ばいに推移しています。 <図表1> 大学数の推移 出典:文部科学省「令和4年学校基本調査」よりデータを加工 注) 大学とは、国立・公立・私立を含めた大学数の合計を表しており、短大・専門学校は含まれていない  続いて図表2は、大学院生に占める社会人学生の割合を表しており、2009年を境に増加度合いは小さくなったものの、現在も増加傾向は続いています。  今後、子どもの出生率が低下し、入学者数が減少していくことが予想されているため、大学側は学生だけでなく社会人も含めて広く展開し、社会人教育に力を入れてと想定されます。 <図表2> 日本の社会人大学院生(在籍者)の状況 出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2020」調査資料-295、2020年8月  次に、質の観点から現状を把握します。図表3は、日本における成人学習制度をOECD諸国と比較したデータです。なお、ここでの成人学習制度とは、各社会において成人とみなされているものが参加するフォーマル・ノンフォーマル・インフォーマルなど学習形態を問わない学習過程全体を指します。  財源は、他の諸外国と比較すると高く、個人が自主的に学ぶための財源は十分である一方、柔軟性とガイダンス・整合性・認識されている効果は低く、制度を柔軟に活用することが難しく、かつ効果も薄いということが分かります。つまり、経済面では補助金等の整備によって問題ないものの、個人が活用しづらく、学んだ後の効果も低いと考えられています。 <図表3> 成人学習制度の評価 出典:OECD「2019年成人学習の優先順位に関するダッシュボード (Priorities for Adult Learning, PAL)」 注) 1に近いほどパフォーマンスが高く、0に近いほどパフォーマンスが低いことを表す  今後、社員一人一人のスキルアップは必須であることに加えて、社内研修やOJTだけでなく、大学等の外部の専門機関を有効活用しながら自身の能力を向上させ、より専門性の高い人材となっていくことが求められています。 そのためには、下記2点の意識・制度改革が必要不可欠です。 ①個人が学び直す時間を確保し、自身でキャリアを選択すること ②会社側が学び直しを行うための環境づくりや処遇する仕組みを整えていくこと たとえば、サイボウズ株式会社では、「育自分休暇制度」という退職後、留学や大学院入学など、自由にスキルアップを行い、最長6年間は会社に復職できる制度を導入しています。 このような取組みを参考にし、個人が「働く→学ぶ→働く」の良い循環を行い、会社側が学び直しを行った人材を処遇することによって自社を成長させていくなど、ひとつの選択肢として取り組む必要があるのではないでしょうか。 以上

労働者の自己啓発の実施状況<br />~本人任せではなく企業の支援を~ | 人材開発

労働者の自己啓発の実施状況~本人任せではなく企業の支援を~

 日本企業の能力開発費用の割合が他国に比べて圧倒的に少ない状況です。人的資本経営の潮流の中でも、人材に対してどのように教育を施すかは重要であり、企業が社員の能力開発に積極的に取り組む必要は言うまではないですが、社員各自の自己啓発はどうでしょうか。  労働者(正社員)の自己啓発の実施状況を見ると、この10年以上、自己啓発を実施した人の割合は40%台で推移しています。特に大きな波も無く横這いの状態で推移をしており、平成21年度以降は50%を超えることがありませんでした。日本の労働者がいかに自己啓発を行っていないかがわかります。自己啓発に時間を割けない理由は多種多様かと思いますが、そもそもの仕事が忙しい、女性の場合は家事や育児の問題、そもそも何をテーマに取り組めば良いのかがわからないといった理由もあり得ます。企業側もその事情を調査するなどし、自己啓発の促進を検討する必要があるかもしれません。 図表1:自己啓発をしているもの(正社員)の割合の推移 出典:厚生労働省 能力開発基本調査より作成  労働者(正社員)の自己啓発に対する支援を実施している事業所の推移は、平成20年代前半に比べ、現在は約80%の事業所が実施しています。金銭的支援や情報提供、就業時間や休暇の配慮など様々ではありますが、自己啓発への支援自体はある程度はなされていると考えられます。しかし、自己啓発を実施した労働者の現状を見ると、これらの支援が十分に活用されているとは言えないのではないでしょうか。せっかく準備した人材への投資は確実に活用されているか、確認が必要です。 図表2:労働者(正社員)の自己啓発に対する支援を実施している事業所 出典:厚生労働省 能力開発基本調査※平成26年度調査ではこの調査を実施していない。  産業別での状況を見ると、産業ごとでの特徴が見られます。産業別のOFF-JTの実施と自己啓発を行った労働者の割合を見ると、主に企業が主催する研修などのOFF-JTを実施している割合の大きい産業では、自己啓発を行う労働者の割合も大きいのです。金融業・保険業、情報通信業などはOFF-JT実施、自己啓発ともに高めで、宿泊業・飲食サービス業などのサービス関連の産業ではOFF-JT実施も自己啓発も低めという特徴が出ています。 企業がOFF-JTをしっかりと実施したことで、社員の自己啓発意欲が高まるとも考えられますし、自己啓発が盛んな風土で組織としての取組への期待の声が多く、実施に至るということもあるかもしれません。組織で働く労働者に対しての自己啓発は自分で勝手に頑張るものという考え方ではなく、組織と労働者が相互に求めるものを共有し、自己啓発への取組推進を一緒にしていくことで、自己啓発状況が前進する可能性があります。 図表3:産業別 自己啓発を行ったものの割合とOFF-JTを実施した事業所の割合 出典:厚生労働省 能力開発基本調査 令和4年度より作成  日本企業の能力開発費用は他国に比べて圧倒的に少ない状況ですが、まさにその結果が自己啓発の状況からも見えています。しかし、企業側としてもすべて研修などを準備して学習させるのは不可能です。各個人の自己啓発への積極性を高めていくためには、学びを仕事にどう生かすべきなのかを考えるきっかけづくりが重要です。例えば、研修などの機会を通して、仕事で生せるフレームワークや手法などを学ぶことで、知識欲を高め、成長に向けた動機付けを行います。その後も実践への活用と振り返りを継続することで、学びが定着していくのではないでしょうか。また、支援を行ったならば、教育投資に対する効果の検証をして、次回の教育施策検討に繋げる必要があります。 以上

低い日本企業の能力開発費用<br />~リスキリング時代到来の必然性~ | 人材開発

低い日本企業の能力開発費用~リスキリング時代到来の必然性~

 「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」が令和3年11月19日に閣議決定されました。厚生労働省では、デジタル人材育成の強化等を目的に、令和4年度から3年間で4,000億円規模の施策パッケージを創設しました。人材開発支援助成金に「人への投資促進コース」が設けられ、高度デジタル人材の輩出のため、海外の大学院での訓練を含む職業訓練や定額制訓練が助成の対象で、1社あたり年間最大1500万円が支給されます。  背景には、国際競争力の低さや、日本の労働生産性の低さに対する強い危機感があり、これを克服するには、スキル量の向上や保有するスキルの転換が必要だと考えられています。例えば、2021年の世界経済フォーラム(WEF)の 世界ITレポート(The Global Information Technology Report)によると、日本の弱点として、ICT Skills(68位/130か国)・ICT services exports(86位/130か国)・ICT environment(95位/130か国)、Growth rate of GDP per person engaged(100位/130か国)が挙げられています。「リスキリングした方が良い」という論調より、「リスキリングしなければ先が無い」と表現すべき状況です。  国内でも、産業構造は絶えず変化しています。第3次産業に従事する労働者は労働者全体の7割を超え、第1次・2次産業で働く割合は減少しています。さらに、第3次産業の中でも内訳は変化しており、職種別に見ると専門的・技術的職業従事者・サービス業従事者・事務従事者が増加しています。限られた労働力の中で、成長分野の競争力を強化するためには、(A)衰退産業の労働力を如何に新規分野の労働力に転換するか、(B)現在既に新分野に従事している人材の質をいかに引き上げるかしか選択肢はなく、リスキリングが迫られるのです。 (図表1:職種別労働人口割合の推移(長期時系列)) 出典: 総務省統計局「労働力調査」  能力開発の重要性・緊急度が高まる一方で、GDPに占める企業の能力開発費用の割合は諸外国と比較をすると著しく低水準です。アメリカ・フランス・ドイツ・イタリア・イギリスでは、GDPの1%以上を能力開発費として投資していますが、日本は0.1%程度であり、OJTや個人の自主的取り組みに頼っている状況です。日本では、新しい技術の獲得や付加価値の追求に対する積極性が十分ではないことが分かります。 (図表2:GDPに占める企業の能力開発費の割合の国際比較) 出典:平成30年版 労働経済の分析 -働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について-(厚生労働省)  世界中でビジネスの高度化が進み、産業構造の変化もスピードアップしています。一方、日本国内では、少子高齢化により労働力が減る一方です。企業は、生き残りのため・競争力の強化のために、絶えずビジネスモデルの変革と変革を牽引する人材への投資を続けねばならなりません。競争力ある労働力を生み出し、競争力向上をしなければ、日本の国・日本の企業の先は厳しいと言えましょう。 以上

教育研修費<br />~変化対応のための人への投資~ | 人材開発

教育研修費~変化対応のための人への投資~

 日本企業のこの数十年での世界における競争力の低下の原因として、「人への投資」不足があげられます。日本は世界の中でも、能力開発費用の割合が他国に比べて圧倒的に少ない状況です。このような状況を打破するためには、「人への投資」の抜本強化が必要と言われています。  各企業、従業員に対する教育研修をコストと捉えるか、投資と捉え有効な施策を展開できるかが非常に重要なポイントとなります。  これまでのOFF-JTに支出した企業割合と、一人当たりの額の平均の推移を見ると、企業割合は徐々にではありますが増えていました。しかし、コロナウィルス蔓延という経験のない社会情勢となり、その影響から支出した企業割合、労働者一人当たりへの平均額は減少しています。コロナウィルスにより一変した社会、生活、そしてそれを契機に労働者の働き方への価値観も変わりました。この社会の変化と価値観の変化に対応した人材育成の指針策定と実行が求められるのではないでしょうか。つまり、いままで毎年やってきた研修を繰り返すのではなく、今後数年を見通して、会社の経営計画とそれを実現するために必要な人材はどのような人材なのかを明確にし、それに則した研修の組立がより重要となるのです。 図表1:OFF-JTに費用支出した企業割合とOFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額の推移 出典:厚生労働省 令和3年度能力開発基本調査  教育予算を策定する際に最も優先する基準としては、「前年度の実績額」が最も多いという調査結果があります。前年度の予算額と合計すると61%となり、前年度ベースでの教育予算策定が圧倒的に多い結果です。  人を資本と捉え、激しい時代に対応できる人材を育成することが企業の成長につながると考えるのであれば、適宜適切な教育研修の提供が必要です。それが予算策定は前年度踏襲であると、施策を実行したくてもできない可能性も出てきます。 図表2: 教育研修費用予算を策定する際に最も優先する基準 出典:産労総合研究所 2021年度 教育研修費用の実態調査  コロナ以降、劇的に変わった社会の中で、勝ち抜いていくためこれまでの教育研修を見直すのは必須です。企業に必要なスキル-保有スキルで不足する部分を埋めるためにどのような教育を施すのか、それは人事部だけの課題ではなく、企業全体としての課題と捉えるべきです。企業として、この先どのような経営をし、何を生み出すのか、そこにはどのような人材が必要なのかを明確にし、会社全体として教育研修にどれほど力を入れていくのか、未来と人への投資を結びつけた考え方がより一層重要となるでしょう。 以上

経営者の高齢化が招くリスク<br />~事業継承と変革~ | 人材開発

経営者の高齢化が招くリスク~事業継承と変革~

 2021年の全国倒産件数は6015 件(前年7809 件、前年比1794 件・23.0%減)と、2000 年以降で最少、1999年以前と比較しても、1966 年(5919 件)以来半世紀ぶりの歴史的低水準でした。ところが倒産原因の中で「後継者難倒産」は466 件と、全体の7.7%を占めており、特殊要因倒産の中では最も多い状況です。(「帝国データバンク全国企業倒産集計」)  後継者不足率のデータによると、2021年には61.5%の企業で後継者がいない状態であり、後継者難倒産の数も納得がいくものです。(帝国データバンク全国企業「後継者不在率」動向調査(2021年))  事業継承の継承経緯別のデータを見ると、同族継承が全項目の中では最も多いですが、2017年からゆるやかに低下傾向です。M&Aは2017年と比べて上昇しています。中小企業庁は2021年 4 月に「中小M&A推進計画」を策定し、後継者難などによる中小企業の休廃業防止に有効な手段としてM&Aを主軸に据える方針を明確に打ち出しており、今後内部昇格やM&Aでの事業継承は増えることが予想されます。  外部招聘は横ばいで変化がない状態です。そもそも日本では優秀な経営者を外から迎え、望ましい経営状態を作るという発想が少ないのが現状です。昨今の激しい環境変化に対応しうる経営のために、外に目を向けることも必要と考えます。 (図表1:就任経緯別 推移) 出典:帝国データバンク 全国企業「後継者不在率」動向調査(2021 年)  後継者難という点と関連が深い経営者の年齢を見ると、年々経営者平均年齢は上昇し、2019年には62歳を超え、今後さらに高齢化すると思われます。経営者の高齢化は事業に影響があるのでしょうか。  経営者年齢別に2017年から2019年の間の新事業分野進出への取り組み、投資の実施、会社にトライ&エラーの風土があるかについて調べた結果、経営者年齢が若い企業ほど、積極的な企業の割合が高いとされています。(中小企業庁2021年版中小企業白書)経営者年齢が若い程、新たなチャレンジをする企業が多い傾向にあるということは、裏を返せば経営者年齢が上昇し続けている今、日本企業の新たなチャレンジは減っていると言えると考えます。経営者の高齢化は事業継承の問題だけでなく、その事業自体にも影響を及ぼす大きな問題といえるでしょう。 (図表2:経営者年齢推移) 出典:(株)東京商工リサーチ  社員数が限られる中では仕事の生産性は上がりづらく、新しいことへのチャレンジもでき辛いものです。たとえ雇用を拡大したとしても、技術、スキルはすぐに習熟するわけではなく、即座に生産性向上にはつながるわけではありません。  そこでM&A、外部招聘などを加速させる必要があるのではないでしょうか。M&Aによってそれぞれの企業の技術・ノウハウなどを統合させることが、事業継承および、生産性向上に寄与し、規模の経済のメリットを活かし、効率よくビジネスの拡大、事業継承を展開することとなります。また、外部招聘により、外部から経営者を迎え、事業継承、変革を講じるのも一つの手段です。これらを通常の施策として選択肢に入れ、事業継承とともに、時代に応じた経営をしていくことが重要だと考えます。 以上

新卒社員の離職率<br />~企業のキャリア教育に対する責任とは~ | モチベーションサーベイ

新卒社員の離職率~企業のキャリア教育に対する責任とは~

 新卒採用しても一戦力化する前に離職してしまうという課題を抱えている人事担当者の方は多いのではないでしょうか。日本はゼネラリストとして育成することを前提とした採用が中心のため、一人前として成長する前に離職となると企業にとって大きな損失となります。離職防止策として初任給の引き上げが行われることも多いですが、社員がモチベートされる理由は賃金以外にも様々な理由があります。そのため、各企業は賃金以外についても課題がないか実態を把握する必要があります。  新規大学就職者の3年以内離職率は企業規模が大きいほど低くなるものの、最も離職率が低い1,000人以上の企業でも約25%と4人に1人は入社3年以内に退職しており、非常に高い傾向にあります。企業規模が大きくなるほど退職率が低くなる理由としては、大企業ほど社員への雇用責任が強く求められ、雇用者が手厚く守られているということが挙げられます。 (図表1:新規大卒就職者の企業規模別3年以内離職率(平成30年3月卒)) 出典:厚生労働省「令和3年 新規学卒者の事業所規模別・産業別離職状況」を加工して作成  そして、最も離職率の低い大企業でも約25%もの新規大卒就職者が退職しているということは、採用の際に企業側と学生側で職務に関するミスマッチが起きていると考えられます。  現に、自己都合退職した20~24歳の離職理由として、「満足のいく仕事内容でなかったから」が約4人に1人おり、「賃金が低かったから」を若干上回ります。この背景として、日本におけるキャリア教育は不十分であり、実際に働くことを想定した講義は多くないということが挙げられます。キャリア教育が不十分な結果、仕事を通じて実現したいことは何か曖昧なまま就職活動を行い、働くにつれ「想像していた仕事と違う」となった結果、離職に繋がっているのです。企業側も、新卒一括採用で一度に多くの候補者の中からポテンシャルを重視して採用することも多く、その人が本当に適性や業務遂行する十分な能力を有しているのか正確に判断することは難しい状況です。 (図表2:20~24歳における自己都合退職者の離職理由) 出典:厚生労働省「令和2年 雇用の構造に関する実態調査(転職者実態調査)」を加工して作成注)上記データは「最終学歴」「直前の勤め先での就業形態」「現在の勤め先での就業形態」による区分はされておらず、また、新卒者以外も含まれる。  また、20~24歳の転職者が今の勤め先(転職後の勤め先)を選んだ理由として最も多く、約半数を占めるのは「仕事の内容・職種に満足がいくから」です。「自分の技能・能力が活かせるから」が次に続いていることからも、就職前ではなく働き始めてから、自らの適性や仕事を通じた目標などキャリアが明確になり、新たな環境を選択する社員が増えていると推察されます。 (図表3:20~24歳の転職者における今の勤め先を選んだ理由) 出典:厚生労働省「令和2年 雇用の構造に関する実態調査(転職者実態調査)」を加工して作成注) 上記データは「最終学歴」「現在の勤め先での職種」「現在の勤め先での就業形態」「事業所規模」による区分はされていない。  職務に関するミスマッチを減らすために、企業・教育機関は連携して、学生が働くことに対して向き合う機会を積極的に提供しなければなりません。例えば、長期休暇期間だけの補助業務や体験業務のような短期インターンシップだけではなく、より実務に近い業務を担う長期間のインターンシップ制度を充実させることで、企業・学生共に適性を把握することができます。また、学校は働くことを意識した講義の充実に加え、学生がインターンシップで認識した不足しているスキルを補えるような環境を整備しなければなりません。 また、採用担当者は、選考段階から入社後に担う職務と目指すキャリアゴールを説明しなければなりません。説明するためには、どのような方針をもとに人事制度が制定されているのか採用担当者は理解を深める必要があります。そもそも人事制度のコンセプトと会社方針が連動していない場合は人事制度そのものを見直さなければなりません。経営目標を達成するにはどのような人材が求められ、各人材群はどのようなキャリアを描くことができるのかが整理されて初めて、採用すべき人材が明確になります。  新卒社員の離職率を下げるためには賃金以外にも、「どのような能力を発揮し、キャリアを歩んでもらいたいのか」という企業側の思い、そして、社員一人ひとりの「職務を通じて達成したい目標」の双方が合致するよう、採用までの在り方を見直さなければならないのです。 以上

伸びない女性管理職割合・男女差が埋まらない育児休業率<br />~女性活躍推進への一歩は意識改革と即実行~ | モチベーションサーベイ

伸びない女性管理職割合・男女差が埋まらない育児休業率~女性活躍推進への一歩は意識改革と即実行~

 社会における女性活躍を軽視している人はいないでしょう。様々な手で女性が活躍できるようにと努力がなされています。しかし、実際の女性の活躍、男女の雇用機会均等の実現は想像以上に厳しい道のりです。  管理職に占める女性の割合は女性活躍を測る重要な指標の一つです。そして大きなライフイベントの一つである出産・育児についてもキーポイントとしてとらえる必要があります。  管理職に占める女性の割合は緩やかな上昇傾向ではありますが、男女雇用機会均等が実現しているとは言い難いのが現状です。特に実務の中心を担う部長、課長相当職の女性割合の低さが顕著であり、いかに女性管理職が生まれていないのかがわかります。  データで見ると、最も高い係長職に占める割合でも17.9%、部長相当職に占める割合にいたっては6.2%といまだに10%にも満たない状況です。 図表1: 企業規模30人以上における役職別女性管理職割合の推移 出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」注1)平成23年度は岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果  女性の活躍が進まない背景の一つの理由として出産・育児があげられるのではないでしょうか。育児休業を取ることができる労働環境は必須ですが、いまだに男性は育児休業を取りづらい、取るべきではないという意識があるのではないかと推察します。  育児休業者率の推移データを見ると、女性は平成19年度以降、80%を超える水準で推移していますが、男性は平成29年度に5%を超え、そこからやや上昇、令和2年度は12.7%となっています。依然として男女での差が大きい状態が続いており、男性の育児休業取得が進んでいないことがわかります。 図表2:育児休業取得率 出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」注1)平成22年度及び平成23年度の比率は、岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果  また、この育児休業取得率を産業別に見ても、男女の差は明らかです。  金融業,保険業が男性の取得率で最も高く30%を超えていますが、女性のとの差は50%以上です。電気・ガス・熱供給・水道業の男性取得率が最も低く、2.95%という状況です。業種による人材流動性の高低や雇用環境、職種など様々な要因がありますが、男女の差がなく、かつ高い水準であることが理想でしょう。 図表3:産業別育児休業取得率 出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」注1)平成30年10月1日~令和元年9月30日に出産した者又は配偶者が出産した者のうち、調査時点(令和2年10月1日)までに育児休業を開始した者(開始の予定の申出をしている者を含む。)の割合  労働力不足の中、多様な人材の活用が必須の現代で、女性が活躍できないことは大きな問題です。これを脱却するポイントは、男性・女性、既婚・未婚、子どもを持つ・持たないに関わらず、優秀な人材の育成と登用、働く環境の整備をしていくことです。育児休業に限って言えば、まずは企業として男女関わらず育児休業を取ることや、復帰後も活躍することはごく普通のことであるという意識改革、そして社員に子どもが生まれたら育児休業を勧めるような、即時実行が必須です。  また、企業側の努力のみならず、働く側の意識改革と実行が重要です。男女の雇用機会均等は、家事分担や育児分担がなされていることが前提です。特に共働き世帯では、家事や育児について家庭でストレートに話し合い、育児をしながらも活躍できる、または活躍するという意識を持つことで、道は拓けていくでしょう。  誰もが平等に活躍できる社会の実現は、意識改革からの実行にあるといえます。 以上

労働力人口<br />~多様な人材の活用と労働力需要の抑制がカギ~ | 適正人員・人件費算定

労働力人口~多様な人材の活用と労働力需要の抑制がカギ~

 現在、日本の人口は減少傾向にあり、同時に労働力も伸び止まりを見せています。今回は労働力人口の推移や、年齢別や性別といった属性ごとの就業者数について解説します。  労働力人口の過去の推移をみると、1990年代半ばまでは増加傾向にあり、1990年以降は伸び止まり、そして若干の減少傾向にありました。2010年代半ばからは僅かながら減少に歯止めがかかっています。女性や高齢者の活用により労働力の内訳を変えることにより、大幅な減少は免れている状況ですが、いずれは減少傾向に転じるでしょう。 図表1:労働力人口(単位:万人) 出典: 総務省統計局 「労働力調査」注)労働力人口の1952年以前は14歳以上人口のうちの該当する者 労働力人口とは、満15歳以上のうち、労働する意思と能力を持った人口を指す。具体的には、実際に働いている人のほか、労働の意思や能力があるものの失業中の人が含まれており、満15歳以上であっても専業の学生や主婦は除かれている。  そこで、年代別の就業者数と就業者に占める60歳以上人口の割合を見てみると、就業者全体の数は1995年をピークに減少傾向にあるものの、60歳以上の就業者は増加しています。60歳以上の就業者は1980年時点で約540万人でしたが、2015年には約1270万人と2.3倍の伸びを見せています。就業者全体に占める割合においても、1980年ごろまでは9%前後で推移していたものの、2015年時点では21.5%とやはり大きく増加しています。  今後は、少子高齢化により59歳以下の労働力の確保がますます難しくなるため、労働力を充足すべく定年延長や定年再雇用はますます進み、60歳以上の就業者は増加するでしょう。 図表2:年齢別就業者数・60歳以上割合 出典: 総務省「国勢調査」  続いて、男女別の就業者数と就業者に占める女性の割合を見てみます。男性の就業者数は、労働力人口・就業者数全体の推移と同様に伸び止まり、1995年以降は減少傾向にあります。  一方、女性の就業者数は1995年から近年に至るまで2600万人弱の水準でほぼ横ばいに推移しており、労働者に占める女性労働者の割合は増加傾向にあります。労働力人口の減少に伴っていずれは女性就業者数も伸び止まりを見せると思われますが、当面は女性労働者の割合が増え、労働市場全体や各企業内の労働力構成が大きく変わっていくでしょう。 図表3:男女別就業者数・女性割合 出典: 総務省「国勢調査」    女性・高齢者の他に外国人労働者の活用も年々進んでおり、2008年の48万人から2020年の172万人へと約3.5倍に増えています  少子高齢化により日本全体の人口が減少する中、今後も労働力人口が大きく増加することは考えづらい状況です。国内労働力の減少や構成の変化を受けて企業内のポートフォリオも大きく変化をしていくことでしょう。例えば1980年以前は外国人や高齢者の労働者は割合的にはほとんどおらず、女性も1/3程度でしたが、近い将来、男女が5:5の割合となり、外国人労働者が労働者全体の10%を超え、高齢者の割合も現在と比べて非常に高くなるでしょう。  今後に目を向けると、労働力の需給のコントロールが重要性を増します。前述の通り労働力は減少傾向になるので、女性や高齢者・外国人の活用によってダイバーシティを促進し供給量を増やすことが必要です。そして、ITやロボティクスなどの先端技術の活用や生産性向上施策によって、そもそもの労働力需要を抑えることも重要となります。  迫りくる労働力人口の不足を前に、各企業は女性・高齢者、外国人を戦力化しやすい労働環境の整備と、従業員の生産性向上施策、そして先端技術の活用による労働力需要の抑制を両立しなければなりません。

適切な管理職の割合は約10%|業種・企業規模別の管理職比率 | 人事アナリシスレポート®

適切な管理職の割合は約10%|業種・企業規模別の管理職比率

 管理職は経営陣と一体となり、会社を牽引する非常に重要な役割を担うポジションです。重要性は極めて高く、指揮指導により組織を牽引する社員が全社員に占める割合は決して多くはないはずです。管理職比率の妥当な水準はどの程度なのかを探るべく、企業規模別・業種別の管理職比率のデータを解説します。  図表1は、企業規模別の正社員に占める部長比率・課長比率を示しています。企業規模が大きいほど部長比率は低く、課長比率は高い傾向にあることが分かります。部長比率に関しては、大企業であれ、中小企業であれ、部として設ける機能の数に大きな差が無く、必要な部の数に大きな差が無いため、大企業の方が社員に占める部長の数が少なくなることが考えられます。  一方の課長比率については、中小企業では組織規模が小さいことから、部長が課長の役割も兼ねるケースがあることや、大規模な組織では課長代理・課長補佐など、ラインマネジメントを担わないものの年功的な観点から課長級として処遇される社員を抱える余裕があることなどが影響していることが考えられます。  こうした傾向があるとは言え、部長比率・課長比率の合計はいずれの企業規模においても10%程度と、顕著な差がある訳ではありません。この数字は、実感とかなりの乖離があるのではないでしょうか。管理監督者の比率という観点では、特に年功的な人事管理を行っており平均年齢の高い会社では、30~50%という会社も散見されます。単に組織の管理者という視点では10%程度で足りるのに対してかなりのギャップがあることが分かります。   (図表1)管理職比率(平成30年) 出典:厚生労働省『賃金構造基本統計調査』  次に、図表2で業種別に管理職比率をみてみると、産業計や他の業種と比較して、建設業では突出して高く、運輸業・郵便業は低いことが分かります。建設業では、1つの現場に対して元請け、下請け、孫請けがあるなど、ビジネスの構造が多重構造となっており、関与社数が多く、各社ごとに管理職社員がいるため、業界全体としても管理職比率が高くなっているのです。  一方の運送業では、管理職は運送・配送という単一の業務を担う人材を取りまとめるため、管理する部下の数を多く持てること、収益性の観点から管理する社員よりも現業に関わる社員を多くする方が効率的であることから、管理職比率が低く抑えられているのです。   (図表2)産業別部長比率および課長比率(平成30年) 出典:厚生労働省『賃金構造基本統計調査』  管理職比率が図表1や図表2の水準並みである場合も、管理職比率と管理監督者比率の間に大きな乖離がある場合には、総額人件費や労務的の観点で問題があり、早急な見直しが必要です。  また、最適な管理職比率はビジネスモデルのあり方や正社員比率などにも依存するため、外部の水準によらず、ユニークな場合もあります。定期的に生産性の指標や、管理される側の従業員の働きやすさなどをモニタリングし、自社に合った水準を探り、上手くコントロールすることが望ましいです。 以上

日本の人口ピラミッドから、会社の社員の年齢構成と人事課題を再認識する | 人材開発

日本の人口ピラミッドから、会社の社員の年齢構成と人事課題を再認識する

 今後の日本の人口ですが、現在2020年から2050年に向かい大幅に減少します。この現象と同時に高齢化が驚くほどのスピードで進行することになります。このトレンドはすでに十分に認識されていますが、今後の日本企業、人事管理に決定的でかつてない影響を与えることを再認識する必要があります。マクロトレンドとしての人口推移が個別企業の人事管理にどのような影響を与えるかを、現時点で十分に認識し、今から備えなくてはなりません。  下図は2050年の日本の人口ピラミッド予想です。一見して生産年齢人口が減少し、老齢人口が激増、年少人口が減少します。重要であるのは生産年齢人口比率で、2050年はほぼ50%の比率まで低下します。生産年齢人口比率が高いレベルにあった1990年と比較すると、一見してそのインパクトは想像以上であるとわかります。1990年は生産年齢人口は約70%でした。   出典:総務省統計局『国勢調査』及び『日本の将来推計人口(平成29年推計)』出生中位・死亡中位仮定による ※2015年以前は総務省統計局『国勢調査』, 2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口(平成29年推計)』[出生中位(死亡中位)推計]による    少子高齢化が進行するとともに。生産年齢人口の負担が激増することも非常に重要な論点ですが、個別企業の人事管理上最も大きな影響があるのは、人手不足となります。新たな人材を採用しようとしても、若手社員の採用は今よりも驚くほどハードルが高くなります。 中高年社員、ないしは60歳~65歳の前期老齢人口の戦力化は避けて通れない極めて重要な施策です。さらには65歳以上の社員の活用も視野に入れなくてはなりません。  人手不足、老齢社員の徹底活用に加え女性活用、外国人活用、BPRの推進なども含めて、30年後に向けて現時点から改革を進める必要があります。日本全体としても、個別企業としても人口問題はゆっくりとしたスピードで深刻さを増すことになりますので、改革改善のタイミングがとりづらいといわれています。しかし今からこれらの施策を実施しなければ、若手社員は離職していき、再教育や意識改革ができていない中高年、老齢社員のみが在籍する企業となってしまう可能性が非常に高いと言わざるを得ません。今一度日本の人口ピラミッド及び自社の社員構成を再認識する必要があります。