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HR DATA

現代の退職金制度と未来への展望
~データから見る退職金制度の動向と労働市場の要請に対応するために~

 多くの企業では、一般的に退職後の生活保障・功績報奨(リテンション)などを目的とし、退職金制度を導入している。また、採用魅力の向上として制度を設けている場合もある。本記事においては、現在の退職金制度の実態統計データから、現在のトレンドを把握し、今後の退職金制度の在り方について考えることとする。

 図表1は、2003~2023年における5年毎の退職金制度の有無および支給額の推移を表したものである。”退職給付制度がある”と回答した企業は減少傾向にあり、支給額も減り続けている。以前は、新卒~定年まで1つの企業に勤め続け、その対価として退職金を受け取る流れが一般的であった。しかし、近年は転職求人数が転職希望者数を大幅に上回るなど、転職しやすい環境となってきていることも影響し、定年後の生活保障やリテンション対策としての退職金制度は、効果が弱まり、退職金制度の導入・支給額が減少していると考えられる。また、再雇用などのシニア社員への人件費転嫁によって、給付額が減少している可能性もある。

(図表1:退職給付制度の有無・一人平均退職給付額)
2003~2023年における5年毎の退職金制度の有無および支給額の推移

 
 出典:厚生労働省「就業条件総合調査」よりデータを加工

 ここで退職金制度の一部である企業年金をさらに詳細に見ていくと、図表2のような結果となっている。
図表2は、確定給付型企業年金制度(DB)と企業型確定拠出年金制度(企業型DC)の制度数・規約数および加入者数の推移である。DBとは将来受け取る給付額を企業側が負担することに対し、DCは拠出額を企業が負担し、運用自体は個人が行う仕組みである。傾向としては、DBは、2004年頃から順調に増え続け2018年をピークに横ばい状態である。一方企業型DCは、DBと比較して加入者の増加数は少ないものの、近年も順調に増加している。先程も触れた転職のしやすさや”貯蓄から投資へ”という政府のスローガンもあり、転職時も持ち運びができ、個人で資産形成できる企業型DCを導入する企業や加入者が増えてきていることが分かる。また、今後もこの流れは続くと予想され、企業年金だけでなく、個人年金である個人型確定拠出年金(iDeCo)についても加入者は増加している。

(図表2:DBおよび企業型DCの制度数・規約数、加入者数の推移)
確定給付型企業年金制度(DB)と企業型確定拠出年金制度(企業型DC)の制度数・規約数および加入者数の推移

出典:下記複数のデータを加工
DB制度数(2013~2019年) 厚生労働省「厚生労働白書」
DB制度数(2020~2022年)およびDB加入者数 生命保険協会・信託協会・JA共済連「企業年金の受託概況」
企業型DC規約数および加入者数 運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計調査」我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」経済産業省・国土交通省・農林水産省(2022年)

 以上のことから、企業側は、自社の退職金制度を再定義することが求められている。退職後の生活保障や勤続年数による功績報奨としての意味合いだけでなく、職務の貢献度に応じた制度など、属する労働市場の特性に応じて変革していくべきである。極端な例で言うと、退職金制度は廃止し、その分毎年の給与で分配する方法であっても、社員にとっては魅力的に感じる可能性もある。

よって、企業側は社員の退職金に対する考えや転職事情など様々な情報をキャッチアップしながら、会社としての雇用方針に応じて、退職金制度の有無および制度としての魅力について考え続ける必要がある。

以上