投稿日:2025.02.14 最終更新日:2025.02.17
5大業種別年収水準比較
~令和5年 月収は増加するも、賞与は減少する業種も~
魅力ある給与水準設定のため、同業他社はどのくらいの給料を払っているのか、あるいは直近で給与水準がどう動いているのか、常に注視すべきです。人事管理上非常に重要な論点です。1つの拠り所として、厚生労働省の賃金構造基本統計調査が活用できます。この統計からは、毎年地域別や業種別、職階別、年齢別など様々な角度から月収や賞与の支給実態を把握できます。今回は、令和5年度の調査結果から、業種による年収水準の違いや前年との比較について解説します。
賃金構造基本統計調査では、大分類で16業種、より詳細に業種を分けた中分類では91業種の賃金統計を見ることができます。今回は大分類のデータを使用し、従業員数が多い順に卸売小売業・製造業・医療福祉業・宿泊飲食業・建設業の5業種の年収水準と昨年度対比の動向を確認します。
賃金構造基本統計調査では、きまって支給する現金給与額と呼ばれる月例給与と年間賞与額が得られるため、きまって支給する現金給与額×12か月+年間賞与額により年収を算出できます。図表1は当該業種の令和5年度の年齢階層別年収を示しています。賃金構造基本統計調査では、さらに企業規模別や学歴別、職階別に詳細データを確認することができますが、情報量の都合上、企業規模計・学歴系、職階計のデータを用いています。
令和5年の年齢計平均年収は、卸売小売4,949千円、製造業5,135千円、医療福祉業 4,553千円、宿泊飲食サービス業3,752千円、建設業5,669千円です。建設業は年収水準が最も高く、宿泊飲食サービス業と比較すると200万円弱の乖離があります。これは、そもそもの年収水準の高さに加えて、建設業においては年齢による年収の伸び率が大きいこと、平均年齢が他業種より平均値で2~3歳高いことが影響しています。
年齢による年収の伸び率は、20代前半を基準とすると建設業194%、製造業185%、卸売小売業179%と伸びが大きい業種と、医療福祉業150%、宿泊飲食サービス業148%と伸び止まる業種に分かれます。いずれも若年層より中高年層の方が年収が高い年功序列の傾向はありますが、医療福祉業・宿泊飲食サービス業では40歳ごろに伸び止まっています。

出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和5年)に基づき作成
図表2では、月収・賞与の前年比較を見てみます。グラフは令和5年の令和4年からの増減を示しています。青色は増加、赤色は減少を表しています。いずれの業種も月収は増加しています。人手不足や働き方改革、最低賃金引上げなど外圧が掛かる状況で労働力確保のために賃上げをせざるを得ない状況であったと言えます。特に建設業では5%と大きな増加がみられます。
一方で賞与は、卸売小売業ではマイナス10.4%、医療福祉業でマイナス2.3%、宿泊飲食サービス業でマイナス1.7%と前年比較で減少しています。

出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和5年)に基づき作成
外部水準を考慮し月収引き上げ策を講じても、なかなか賞与が上がらず年収の増加にはつながらない厳しい現状があります。目先のベア議論も重要ではありますが、持続可能な利益追求により、処遇改善と企業成長を両立することが重要です。
以上