投稿日:2025.03.03 最終更新日:2025.03.03
企業規模別賞与月数比較
~令和5年 大企業約5カ月、中堅企業約4カ月、中小企業約3カ月~
採用時の要件として提示される「賞与月数」は、応募者にとって関心の高い情報となっています。今回は、この「賞与月数」に焦点を当ててご紹介します。
公的な統計データにおいて「賞与月数」がわかるダイレクトな情報はありませんが、賃金構造基本統計調査を基に、近似値を算出することが可能です。そのデータを解釈し、現状の「賞与月数」を見ていきます。
正確な情報を得るためには、賞与額とその算定基礎となる月収額が必要です。今回は、賞与の算定基礎に所定内給与額を使用しますが、多少の誤差が生じる点に留意してください。理由として、所定内給与額には、少額ながら賞与の算定基礎に含まれない属人的な手当が含まれているためです。
図1では、企業規模別に賞与額と所定内給与額を示し、賞与額が月収の何カ月分に相当するかを示しています。企業規模が大きくなるほど、所定内給与額水準、賞与額、賞与月数いずれも多く、大企業では4.3カ月、中堅企業では3.6カ月、中小企業では2.7カ月となっています。また、かっこ内に記載している数値は、所定内給与額に含まれる賞与の算定基礎に含まれないであろう属人的な手当を所定内給与額のうち1割と仮定し、その額を除いたうえで、再計算した賞与月数を示しています。この場合、大企業では約5カ月、中堅企業では約4カ月、中小企業では約3カ月となります。

「厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査(学歴計)」(2024年3月27日公開)に基づき作成
賞与月数=年間賞与その他特別給与額÷所定内賃金
図2は、企業規模別に年齢階層ごとの賞与月数を示しています。どの企業規模でも、年齢が上がるにつれて賞与月数は増加する傾向にあります。20~24歳は、入社直後で夏の賞与が満額支給されない場合が多く、賞与月数が低くなっています。25~29歳では、年功序列的な運用をしている企業が多く、賞与月数が抑えられていると考えられます。30歳以降は、年齢とともに等級や職位が上がり、組織への貢献度が増すことで、賞与月数も増加していきます。このように、実力主義による成果報酬の傾向は見られず、依然として年功序列が強く反映された推移が特徴的で、特に大企業のほうがその特徴が顕著にみられます。
一方、従業員数が100名未満の中小企業では、50歳を過ぎると賞与月数が減少に転じる傾向が見られます。従業員数100名を基準にすると、賞与月数の絶対値にも明らかな差があり、その推移の傾向にも違いが見られます。

「厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査(学歴計)」(2024年3月27日公開)に基づき作成
賞与月数=年間賞与その他特別給与額÷所定内賃金
人手不足が叫ばれる中で、優秀な人材の定着や獲得を考える際、賞与月数に限らず、報酬全体の魅力をどう高めていくかが重要です。また、業績との連動を考慮し、賞与など変動給の割合を高めることは、経営の安定性を高めるだけでなく、社員への還元を通じて企業の成長につなげる手段ともなります。業種によって水準や傾向に違いがあるため、外部水準を定期的に把握、ベンチマークに対して、利益配分や報酬設計の見直しに役立てることが有効となるでしょう。