投稿日:2025.03.13 最終更新日:2025.03.14
新卒初任給の動向
~令和5年 令和以降の増加率は平成の倍~
令和6年の技術者の大卒初任給の平均は約22.6万円であり、令和に入り増加傾向にあります。特にベースアップ・賃上げおよび人材不足の影響を受けて、ここ2~3年の増加は急激です。
ここ最近の初任給の増加傾向を把握するため、平成16年から平成30年の15年間と令和の6年間の初任給額の推移を見てみます。
図表1は、平成16年以降の技術者と事務員の初任給額の推移を示しています。
平成16年からの初任給額の推移を大卒の職種別で見ると、15年間で技術者は8,448円増加、事務員は10,824円増加しています。同じく大卒の職種別の令和以降の初任給額の推移は、技術者は19,752円増加、事務員は18,852円増加しており、平成15年間の増加を令和6年間で約2倍増加していることがわかります。このことから、令和以降の初任給が急激に増加していると言えます。特に技術者は令和以降の増加率が、平成と比べると約2.3倍(事務員は約1.7倍)に増加しており、より顕著な増加となっています。
[図表1]大卒初任給 技術者・事務員の推移(企業規模計)
出典: 人事院「職種別民間給与実態調査」(2004年~2024年)に基づき作成
図表2は、平成16年以降の技術者の初任給額の推移を企業規模別に示しています。
企業規模別に見ると、500人以上の企業が令和以降25,005円増加(平成と比べると増加率は約2.3倍)と、500人未満100人以上の企業の令和以降14,574円増加(平成と比べると約2.2倍)と差は拡大している傾向にあります。
[図表2]大卒初任給 技術者(企業規模別)
出典: 人事院「職種別民間給与実態調査」(2004年~2024年)に基づき作成
※平成16年、平成17年の調査分類は500人未満の企業のみの為、当図表では100人以上500人未満として示している。
日本の労働市場では、人材不足が顕在化しており、特に技術者の獲得競争が激しさを増しています。その影響もあり、新卒の初任給が急激に上昇しています。これは企業が優秀な技術者を確保するために大きな努力をしていることを示しています。また、この努力の度合いも企業間や企業規模間で差が広がっていることを示しています。
政府が主導する賃上げ方針と人材不足の現状を考慮すると、初任給や賃金の上昇傾向は今後も続くと予想されます。ただし、これらのコストを商品やサービスの価格に転嫁できなければ、企業には大きな財務負担がのしかかることになります。
特に年功序列色が強い賃金制度では、新卒初任給の急上昇に伴い、賃金カーブ全体も急激に上げざるを得ません。その結果、社員全体の賃金が短期間で大幅に増加し、中長期に企業の人件費が増加します。
単に初任給や賃金を引き上げるだけでは、根本的な問題は解決しません。中長期的な人件費の管理を計画し、全体的な人事制度の見直しが必要です。社員一人ひとりが長期にわたって安心して活躍できる職場環境を提供することが、優秀な人材の獲得と定着に重要です。これにより、企業全体の成長と発展が期待できます。
以上