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HR DATA

人事の数字管理に役立つ人事指標
~外部データを活用して継続的観察を~

 定期的に健康診断を受診することは健康管理上非常に重要です。しかし、医療機関における網羅的・専門的な検診や人間ドックの受診時だけでなく、日々、検温等で自己の体調を管理・把握することも重要です。

 企業においても同じであり、定期的に網羅的で専門的な目線でチェックを受けることが望ましいが、日々、自己管理できれば尚良いでしょう。そこで、今回は、人事が自社の状態を把握するために活用できるデータと、その使い方を紹介します。

(図表1:法人企業統計調査の見方)

出典: 財務省 財務総合研究所「法人企業統計調査 財政金融統計月報822号」
 
 財務省の財務総合研究所が発表している、業種別・資本金規模別の資産・負債・純資産及び損益計算書には、付加価値額や人件費、人員数が掲載されています。これらの数字を使って、自社と同規模・同業種の平均的な労働分配率や労働生産性を知ることができます。
労働分配率は、人件費を付加価値額で割ることで求められます。労働生産性は、付加価値額を従業員数で割ることで求められます。

 労働分配率・労働生産性は同規模・同業種の企業間であってもビジネスモデルによっては数字の出方が異なることは考えられます。外部データと自社水準の差がある場合、例えば、同業種の中でも特殊な製品を扱っているため他社より○○費が嵩むなど、その理由に説明がつくことが望ましいです。一方、外部水準と乖離している理由が分からない場合、合理的な理由で無い場合には是正施策が必要となります。

(図表2:賃金構造基本統計調査の見方)

出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
 
 労働分配率の高低・労働生産性の高低を把握すると、自社の人件費の単価が妥当なのか否かが気になってきます。そこで活用できるのが、厚生労働省が発表している、賃金構造基本統計調査です。従業員数によって区分された企業規模別、製造業・建設業などの業種別や、男女別、大卒・高卒などの学歴別、年齢別、部長級・課長級などの役職別等、多岐に渡る分類ごとに、月収や賞与の水準が公開されています。

「決まって支給される給与」が、手当や残業代等も含めた月収合計の水準であり、年間賞与等の金額も明らかにされています。決まって支給される給与の12倍に年間賞与額を加算することで、年収水準も知ることができるのです。

 こうして求めた外部の水準と、自社の各属性の月収・賞与・年収の水準を比較して自社の給与水準が高いのか低いのか、言い換えれば労働市場に対してプロテクトが効いているのか、把握することができます。

 自社の人事の定量的な状況を知るために、まずは入手可能なデータを活用し、簡単な分析を継続的に行うことで自社の状況の観察をしてください。そして、一定期間ごとにより網羅的・専門的な分析をすることで問題課題の発見や施策展開につなげることが望ましいです。

 具体的には、例えば今回紹介した外部データと自社内のデータを掛け合わせることで、社員のパフォーマンス別に望ましい処遇ができているかという人事制度上の問題課題を見つける分析や、中長期的に人件費や人員数がどのように推移するのかといった将来予測シミュレーション等さまざまな分析に応用できます。

 適切な現状把握は経営判断・健全な人事管理の重要な土台となるものですから、まずはできる範囲で、そしてより多面的・専門的に分析をする必要があるのです。