投稿日:2024.10.28 最終更新日:2024.10.28
従業員意識調査に見る会社への不満
~社員の多くがキャリアと評価と処遇に満足していない~
人的資本経営という考え方、その開示についての話題は様々なところで目にします。開示項目の一つに社員の満足度/エンゲージメント/コミットメントといったものがありますが、それらを開示項目として使用する場合には、数値化する必要があります。
弊社では、組織分析サービスとして従業員意識調査(サービス名「モチベーションサーベイ」)を提供しています。社員のモチベーションを数値化・見える化することで、点数を開示項目として使用、また結果から課題を特定し、人事制度見直しや、教育研修、組織風土改善などその後の施策実施に向けた材料とすることができます。
今回はこれまで弊社で実施した各社の結果のすべての平均点データから、企業で働く労働者の意識を捉えていきます。
弊社のモチベーションサーベイの標準設問は以下の図表1のカテゴリで構成されます。これらのカテゴリにはそれぞれ設問が紐づいており、50問程度で実施をします。
(図表1:トランストラクチャ「モチベーションサーベイ」設問カテゴリと主な設問内容)
図表2の箱ひげ図は、企業ごとのカテゴリ別の平均点を算出し作成したものです。(箱ひげ図の見方については文末参照)
(図表2:カテゴリ別箱ひげ図)
出典: 弊社実施モチベーションサーベイ実績から作成
◆平均点の高低
赤い×印は平均点です。最も平均点が高いカテゴリとして、「労働環境」がトップ、「人間関係」、「仕事の魅力」と続きます。「労働環境」はコンプライアンス、労働時間や休日といったワークライフバランスの観点では満足度が高い傾向です。上司や周囲との関係性や仕事そのもので得られる魅力についても相対的に高い企業が多いと言えます。
一方で平均点が低い「キャリア展望」、「評価と処遇」カテゴリは3点台前半と低さが目立ちます。「キャリア展望」には、キャリアアップができると思うかどうかや、会社の長期的な育成指針について、社内の研修についてといった設問がありますが、いずれも3点台前半と低く、キャリア構築や育成に関する課題が見られます。「評価と処遇」については、自身の仕事や成果と給料の関係への納得感がない状態と言え、多くの企業で点数が低い傾向にあります。
◆点数のばらつき
箱ひげ図の箱の大きさで、点数のばらつきを見ると、「会社の魅力」「労働環境」「キャリア展望」「評価と処遇」のカテゴリは会社による点数のばらつきが相対的に大きなカテゴリと言えます。「労働環境」は3.5点以上の位置に点数が分布しており、「会社の魅力」「キャリア展望」「評価と処遇」は3.5点以下の低い位置で点数のばらつきがあることがわかります。
「仕事の魅力」カテゴリはばらつきが少なく、企業による差というものは比較的少ない項目と言えそうです。
会社により、傾向は様々であり、会社の状況に応じてテコ入れをすべき課題も異なります。
他社と比べて点数が高い、低いといった観点は必要ですが、最も重要なのは、経営指針や目標を実現するためにどこにテコ入れをすべきなのかサーベイ結果から丁寧に検討することです。また、会社の健康診断として経年で結果を見ていくことも重要ですし、業種により特徴もあります。経年変化や業種に関しては今後のHRデータ解説にて引き続き取り上げてまいります。
以上
補足:箱ひげ図の見方
箱ひげ図はデータのばらつき具合を示すのに用います。
箱ひげ図は四分位数を用いてデータの散らばりを表します。四分位数とはデータを小さい順に並べて、4等分したものです。小さい値から数えて、総数の1/4番目に当たる値が第一四分位数、真ん中に当たる値が第二四分位数(=中央値)、3/4番目にあたる値が第三四分位数となります。