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宮井 文

column
人がやるか、機械に任せるか | その他

人がやるか、機械に任せるか

 とてもいい雰囲気のカフェを見つけ、グルメサイトの評価も上々なので行ってみた。店内は落ち着いた雰囲気で、照明も控え気味、一人用のテーブルは木の素材そのままといった感じの落ち着く空間。店員の方がメニューを持ってくる。そしておもむろに膝をつきメニューの説明を始める。口調も棒読みでもなく、とても丁寧だ。その店の看板メニューというプリンとドリンクのセットを頼み、一息ついた。プリンは非常に好みの硬さであっという間にたいらげてしまった。満足感に満ち溢れた。さて、そろそろ帰ろうかと、机上に置かれた伝票を手に入口付近に向かった。レジらしきものが見えたが店員がいない。はて。とレジらしきものに目をやると「伝票のQRコードをかざして下さい」と表示されている。  ここでどう感じるか。 ①何も感じずQRコードをかざしてお会計する ②あら、こういうタイプのレジなのね ③セルフレジか…    私の場合は③なのである。入店してから食べ終わるまで、非の打ちどころがないどころか満足して帰ろうとしていた。そこにセルフレジ。丁寧な接客対応とのバランスが取れていない印象で「もったいない」と感じてしまったのだ。    少子高齢化からの労働力不足、人手が足りない問題は耳に胼胝(たこ)ができるほどいたるところで聞いてきた。その解消のためにシステム化、DX化は必須と私も思っている。それは絶対なのだが、果たして全部が全部そうするべきかという疑問がカフェの帰り道にもやもやと浮かんだのである。  セルフレジは様々な店舗でみられるようになった。人材不足も理由の一つだが、コロナ禍における非接触対応もあって導入が進んでいる。一般社団法人 全国スーパーマーケット協会、一般社団法人 日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会による2023年スーパーマーケット年次統計調査報告書※によると、「セルフレジ設置企業の割合は31.1%となり、増加傾向が続いている。」とある。スーパーマーケット業界でのセルフレジ導入は増加し続けるだろう。  店員とのコミュニケーションを介さずに客自身が品物を選びレジへ運ぶ方式の店と、店員とのコミュニケーションが発生し、それが重要・肝である店ではセルフレジに対するとらえかたが変わってしまう。接客に力を入れず別方向に力をいれる方針(コンセプト)を掲げ、それが伝わるほど入店から退店までの接客システムがあからさまであればセルフレジもスムーズに受け入れられる。今回のカフェは店員のパフォーマンスの高さ、雰囲気の良さがあったが、最後に勝手にお会計してねというような突き放された印象にアンバランスさを感じてしまったのだ。  どこに人間を使い、どこに機械やシステムを使うのか。機械化するにしても人の感情に寄り添って検討していかねばならないのだろう。   ※「2023 年スーパーマーケット年次統計調査報告書」 一般社団法人 全国スーパーマーケット協会・一般社団法人 日本スーパーマーケット協会・ オール日本スーパーマーケット協会(2023)  https://www.super.or.jp/wp/wp-content/uploads/2023/10/nenji2023.pdf

エンゲージメント向上 ~会社と従業員が離婚しないために~ | モチベーションサーベイ

エンゲージメント向上 ~会社と従業員が離婚しないために~

 「エンゲージメントの向上」に注目している企業が多いようです。エンゲージメントが向上すると企業経営にプラスの影響をもたらすと言われ、関心が寄せられています。  そもそも「エンゲージメント」とは何か。「エンゲージリング」という言葉には馴染みがありますが、これはいわゆる婚約指輪です。この場合、結婚の約束の意味で用いられています。それでは企業活動においてはどうでしょうか。会社と従業員の関係で言えば、会社は、この人はどういう人なのかを知り、一緒に仕事したいと思えるかを考えます。従業員は、就職活動の際には企業研究をし、自分が生き生きと働くことができるかどうかを検討します。それらがマッチングした時に入社が決まり、会社と従業員は結ばれ、苦楽をともにすることになります。入社は「結婚」と言ってもいいかもしれません。  ただ、残念なことに、離婚ということもあります。有名人が離婚した際の報道で「価値観の違いが原因だった」と報道されることがよくあります。結婚生活がうまくいくか、いかないかは夫婦が歩み寄り、互いの価値観を理解し、同じ方向を向いて一緒に人生を進んでいけるか否かという点が重要なのです。  これが企業と従業員の関係でも当てはまります。従業員が会社のビジョンに共感し、それに向かって組織と従業員が一体となってお互いに成長し、貢献しあえる関係、まさにこれがエンゲージメントの根幹と言えます。  組織から一方的に貢献、成長を求め、そのための機会を与えるだけでなく、従業員からも貢献したい、成長したいという意欲を見せる、つまり双方向の関係を見つめる必要があるのです。この関係性がうまく機能するときに、従業員は意欲的に生き生きと仕事に邁進し、仲間や会社に深く思い入れを持つようになるのです。  エンゲージメントが向上すると「従業員が辞めない」「生産性向上」「自らが積極的に働く」結果、業績が向上すると言われています。採用関連でも、エンゲージメントの高い組織では、たとえその会社を退職しても、退職者が転職クチコミサイトにネガティブな投稿することは、エンゲージメントが低い組織に比べて少なくなると予想されます。また、注目されているリファラル採用も、従業員が会社に対して貢献意欲があれば「この人は会社にとって力になる」と思うような人材を推薦してくれるでしょう。    このようにエンゲージメント向上は企業にとって、とても重要な観点です。注目されているのも大いに頷けます。しかし、エンゲージメント向上だけに着目していればいいわけではありません。 弊社のH Rデータ解説「労働者の就労に対する意識(年齢階層別)~時代で変わる「働く目的」、やはりお金が一番?~」 https://www.transtructure.com/hrdata/20210316/ にもあるように、労働者の大半が「お金を得るため(=金銭的報酬)」に働いているのが現実です。「給与はいらないので働かせてください!」なんて言う人はおそらく存在しないでしょう。いくら働きがいを感じ、働くことが楽しい状態であっても、給与を切り離すことはできません。エンゲージメント向上と同時に、適正な給与や福利厚生、職場環境等、組織から与えるものについても綿密に検討し、従業員を幸せにする手立てを考えることで、企業と従業員は結びつきを強め、互いの成長が図れるのではないでしょうか。

管理職になりたくない女性たち | 人材開発

管理職になりたくない女性たち

 2016年に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」、いわゆる女性活躍推進法が施行されました。人財確保のための女性の登用、活躍推進は、労働力不足の深刻化を踏まえた国をあげての目標です。  女性就業者数を見ると、2000年に57%だったものが、2019年では70%を超えています。専業主婦ではなく、何らかの形で働く女性が増えたということです。この裏には、もちろん労働参加を促す政策や企業の努力もありますが、世帯年収の減少に伴って社会で働く選択をした女性もいるという事実もあります。  それでは、増加している女性就業者の中で、企業の管理職として指導的地位で活躍する女性はどれほどいるでしょうか。  2003年の小泉内閣時代に、男女共同参画推進本部にて「指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%程度にする」という目標が決定されました。結果としてはご存じの通り、30%の目標には及ばず、2030年まで先送りにしました。  これだけ国をあげて行う政策目標がなぜ達成できないのでしょうか。これは業種、企業など多種多様な事情があるため、ひとつに絞ることはできません。ここでは①企業や周囲の意識と②女性本人の意識について考えていきます。 ①周囲の意識 「男性が働き、女性が家事育児をする」  耳に胼胝ができるほどよく聞くことです。この考えに関する意識変化は起きており、総理府「婦人に関する世論調査」「男女平等に関数世論調査」、内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」「女性の活躍推進に関する世論調査」から見ると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考えに賛成またはどちらかといえば賛成と回答している割合は、昭和54年に男性で75.6%、女性で70.1%だったものが、2019年には男性で39.4%、女性で31.1%と大きな変化を見せています。しかし、男女ともに30%以上は肯定的であることは注目すべきポイントです。  ここに女性管理職の問題を絡めてみると、「管理職」というのはそもそも、非管理職に比べ仕事量も多く、仕事中心の生活をできる人が就くものという根底意識があるため、「家事育児介護を女性が行う」思想がいまだ根強い日本においては女性管理職を積極的に登用できていない、ということだと考えられます。男女で区別を付けていないつもりでも、ジェンダーバイアスが存在するのです。  また、それまでの慣例に従って雑務やルーティンワークを女性に任せたり、女性の積極登用に尻込みする結果、女性管理職のロールモデルが生まれない、こうした慣例もジェンダーバイアスの一つと言っていいでしょう。そして、登用以前に育成しようとしないのです。 ②女性本人の意識  企業で働く女性自身の意識はどうでしょうか。 独立行政法人 国立女性教育会館から出された「令和元年度 男女の初期キャリア形成と 活躍推進に関する調査 (第五回調査) 報告書 」によると、女性の管理職志望は入社1年目には60%あったものが2年目には46.4% となり、5年目には37.6%まで低くなっています。男性の場合は5年目でも87.9%です。つまり、多くの女性は「管理職になりたくない、ならなくてもいい」と思っているのです。  管理職志望のない女性の回答において、特に多い理由は以下です。 「仕事と家庭の両立が困難になる」(69.3%)、「自分には能力がない」(40.01%)、「周りに同性の管理職がいないから」(18.2%)  ここから①と②の関連を見ていきます。 「仕事と家庭の両立が困難になる」という理由からは、「男性は外で仕事、女性は家庭を守る」思想の根強さが表れています。女性の多くはそもそも、「結婚したら家庭のことを担うのは自分だ」と思って育ってきているのです。「男性は外で仕事、女性は家庭を守る」思想は女性自身にも刷り込まれてしまっているものであり、男女ともにこの考え方から脱却する必要があります。(この報告の就職活動時の基準重視度の設問「家庭と仕事を両立するための制度が充実していること」に関して男性より女性の方が「重視した」の割合が顕著に高いことも注目すべきポイントです。) 企業においては、女性の仕事と家庭の両立ができる環境を整備するのはもちろんのこと、女性同様かそれ以上に、男性社員の仕事と家庭の両立ができる環境を整備することに意識を向けるべきです。  女性社員が「自分には能力がない」と考えてしまうのは、それまでの育成や業務内容によるところが大きいでしょう。入社時から男女共通で差のない業務を与え、目標を達成させることで自信を付け、よりステップアップしたいと思わせることが重要です。  「周りに同性の管理職がいないから」という、ロールモデルがいない問題に関しては、ロールモデルを作ることが必要ですが、男女という区別ではなく、各個人として社員を客観的に評価し、正確に能力の把握をした上で最適な人員配置を検討することが第一歩です。また、男女の業務格差をなくしたり、男性社員が家庭との両立を図ったりすることで、性別関係なく目標とする上司像が形成されるでしょう。  果たして2030年までに目標は達成できるのか。 「管理職になりたい」と思わせる魅力がそもそも必要なのです。

働き者と改革の不一致 | モチベーションサーベイ

働き者と改革の不一致

 「何でそんなに働くの?」と知人(男性)に聞いてみた。 「いやぁ、仕方ないよね」と彼は言う。しかしその表情は誇らしげにも見えた。  彼は企業に勤める会社員で、新入社員の頃からとにかく仕事にほとんどの時間を費やしており、中堅になった今でもその姿勢は変わらない。特に悲壮感が漂っているわけではなく、むしろ、仕事に人生を費やしている自分に誇りを持ち、楽しそうにさえ見える。まさに「働き者」だ。  働き方改革という言葉が浸透して久しいが、彼にとっては改革なんて何のそのといった風情だ。彼の会社も、働き方改革に関する何らかの施策は講じているはずである。「それなのになぜ?」と思うほど働いている彼をきっかけに考えると、そこには施策と労働者個人の噛み合わなさがあるのである。  そもそも働き方改革は、人口減少に伴う労働力不足を解消するために始まった。  先の働き者の知人の話で大きく関連するのは、長時間労働の是正であろう。 筆者の知る企業で取り組まれているこの課題の改善施策としては、ノー残業デーの導入、業務の精査からパート・アルバイトの方に可能な限り広い業務を担ってもらう、年次有給休暇の計画的付与、作業管理の徹底などがある。他にも、徹底した例だと決まった時間になるとパソコンが強制シャットダウンされるといったものもある。  こういった施策によって、長時間労働が改善されたという実例も世の中には多く存在する。しかし、全てが全てうまくいっているわけではない。それは個人の「働き方の価値観」と嚙み合っていないからだと筆者は考える。  日本の戦後高度成長期からバブル時代まで、働けば働いた分だけ見返りがあった時代に「男はとにかく仕事に全てを捧げる」という考え方が存在し、(対になるのはもちろん「女性は家庭を守る」である)そういった働き方をする男性会社員から「モーレツ社員」だとか「企業戦士」などの呼称が生まれた。そして、そういった社員を企業も求めた。 現在男性だけでなく女性も活躍し、プライベートと仕事のバランスを取った働き方が求められるようになった。働き方の価値観は非常に多様になっている。  施策と労働者個人の噛み合わなさとは、働き方改革のための施策の意図と、個人の「働き方の価値観」が一致しない事に起因する。いくら企業で改革のために新しく施策を断行したとしても、その意図と社員の価値観が一致していないと元々想定した通りに変化はしない。  社員はひとりひとり異なる考え、バックボーンを持っている。働き方に関しても同様である。みんながみんな「プライベートと仕事をしっかり両立したい」と考えているわけではないだろう。中には「自分はとにかく仕事に生き、仕事に死にたい」という思いを抱いている人もいる。そういった「とにかく仕事」という価値観や「プライベートを充実させたい」という価値観など、多様な考え方が尊重されるような組織・制度作りを加速させる必要がある。

幸福感を感じる方法 部下に幸福感を持ってもらうには | モチベーションサーベイ

幸福感を感じる方法 部下に幸福感を持ってもらうには

 「最近さ、私の幸せって何だろうって考えたんだよね。」 先日、美容室に行った際、私の髪をブローしながら担当美容師がこんなことを話し出した。もう10年以上もお付き合いのある間柄なので、たまにプライベートな話もするが、なんとも難しい話題である。ここからの話の展開次第では、非常に気まずくなる。そんなことを一瞬ぐるぐると考えていると、こう続いた。 「いま独立して自分で好きなようにやれて、これで十分幸せだなって結論になったの。」あぁ、暗い話じゃないんだ、よかったと思っていると、髪の毛はつやつやになっていた。  担当美容師は、最近独立し、自分が吟味して選んだカラー剤やトリートメントを使い、シャンプーからカット、カラーまですべて一人でこなす。自分で全てを決定し、試行錯誤しながらも楽しんで経営をしている。そのスタイルが非常に合っているらしい。  「幸福感」について、2018年に神戸大学社会システムイノベーションセンターの西村和雄特命教授と同志社大学経済学研究科の八木匡教授が行った国内2万人に対するアンケート調査の結果(*1)、幸福感に強い影響を与えているのは、健康、人間関係に次いで、所得、学歴よりも、「自己決定」であるという研究結果を発表した。自己決定は所得、学歴よりも影響度が大きいという結果である。  この調査では、自己決定度を評価するにあたっては、「中学から高校への進学」、「高校から大学への進学」、「初めての就職」について、自分の意思で進学する大学や就職する企業を決めたか否かを尋ねているとのことだが、「自らの判断で努力することで目的を達成する可能性が高くなり、また、成果に対しても責任と誇りを持ちやすくなることから、達成感や自尊心により幸福感が高まることにつながっていると考えられる」と結論づけている。  企業で仕事をする中での幸福度にも通ずるものがあるのではなかろうか。達成感、自信が幸福度につながるとするならば、自分(達)で考え、決定し、チャレンジすること=「自己決定」でしかそれを醸成することはできない。これが幸福度に影響を及ぼすのなら、企業においては、まず「自己決定」をする場面を提供しなくてはならない。マネジメント側が、部下に対してある程度の権限を与え、仕事に対して自己決定をする場面を与えることで、仕事を「自分事」としてとらえ、責任感を持って取り組むようにする。その先に仕事における幸福感の向上が見込めるのではないだろうか。    権限委譲はなかなかに怖いものではある。自分でやった方が気が楽だと考える心理は大いににわかる。しかし、それが仕事を抱え込むことにもつながってしまう。  弊社で実施している「360度診断」における対象者へのコメントにも「権限移譲してください」「仕事を部下に振ってください」といった内容がたびたび見られることも事実で、非効率の悪循環にもなりかねない。適切な仕事の分配を計画し、思い切って実行することで部下が責任を持ってやり遂げた先の幸福感の醸成を後押しすることが、マネジメント層の仕事の一つではないだろうか。そしてそれが非効率の悪循環を解消してくれるかもしれない。ただ、注意が必要なのは、マネジメント側はその間も適宜フォローや最終的なチェックを欠かさないことである。バランスの取れた権限委譲が幸福感の鍵である。 *1 神戸大学 Research at Kobe,「所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる 2万人を調査」 https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2018_08_30_01.html (参照: 2023-06-05)

社員アンケートに真剣に答えてもらうには | モチベーションサーベイ

社員アンケートに真剣に答えてもらうには

 「社内アンケート」と聞いて、どのようなものを思い浮かべるでしょうか?モチベーションサーベイ、パルスサーベイ、ストレスチェック、職場環境調査、360度診断…一口に「アンケート」といっても社内で実施するアンケートとして、様々なものが存在します。  弊社でも「モチベーションサーベイ(社員満足度調査)」「360度診断」は調査分析のサービスとして提供しています。このところ着目していることとしては、はたして回答者である社員のみなさんはどのような気持ちでアンケートに答え、捉えているのか?ということです。 アンケートに対して負担を感じている、面倒くさいと思っている、期待している、本音を伝えるチャンスと思っている…様々な捉え方があるでしょう。アンケートを実施するのならば、本音で、忖度なく回答してもらう必要があります。そのためには、アンケートを実施する側の姿勢や投げかけがとにかく重要なポイントだと思うのです。  なぜアンケートを取るのかというと、「社員からの声を拾い上げ、それらを反映させて会社をよくするため」。シンプルにまとめればこういうことではないでしょうか。今後の会社の発展のために、会社の様々な環境、仕組み、業務を整え、さらに成果をあげてもらう、その検討材料としてアンケートは実施されます。果たしてその意図、目的が回答者に正しく、熱意を持って伝えているでしょうか。 また、よくあるアンケートに関するご相談としては、「アンケートは実施したが、結果を放置」「結果を経営陣や担当部署のみに限定して社員にオープンにできていない」というものがあります。せっかくアンケートを取ったとしても、その結果を使って会社として何をするのかがわからないようなアンケートは答える側としては答えたくありません。忙しい中を縫って回答時間を捻出するのならば、自分が答えた内容が返ってくることを人間は求めるでしょう。毎年実施していたとしても、結果のフィードバックもなければ次は答えたくなくなります。  それでは、期待を持って、前向きにアンケートに取り組んでもらうには、どうすればいいでしょうか。 最後に以下の3点にまとめます。 ①アンケートの意図、目的を明確に回答者に伝える 初めが肝心ということです。回答開始前に、なぜこのアンケートが実施されるのか、そして結果をどのように活用し、どのように開示するのかを明確に伝える必要があります。方法はメールや、イントラ、各組織長からメンバーに落としてもらうなど様々な方法が考えられます。もっとも効果があると考えられるのは、アンケートを管轄する担当者、または経営層から直接言葉で伝えることだと思います。本気で取り組む姿勢と言葉は期待感を醸成させることでしょう。会社規模などで可能、不可能はあると思いますが、アンケート前に各拠点を回って説明会を実施するような例もあります。 ②すべて解決はできなくても、優先順位を付けてアンケート結果を踏まえた施策を実施する とにかくアンケート結果を放置しないことです。アンケート項目が多い場合、しかも多く課題が見つかってしまった場合、どこから手をつけるべきかわからず放置してしまうことがあるかもしれません。優先順位をつけ、何から取り組むのかをはっきりさせて少しずつでも進んでいくことで、アンケートの意味が出てきます。社員はそれを見て、答えた結果が反映される実感を持ち、「答え損」という気持ちは無くなるはずです。 ③結果は社員に開示する 自分の会社の仲間はどういう意識なのか知ってもらうことは重要です。開示する粒度は様々ですが、大きく集計した結果だけでも開示することで、会社がオープンに見せてくれるという意識になり、また、結果から業務改善に取り組む人も出る可能性もあります。特に、組織長、管理職レベルには、自身の組織の結果をしっかり開示し、それを受けて組織内で取り組むべきことなどを検討してもらうのは重要です。アンケートを実施したのが人事部だとしたらば、「アンケート結果を見て動くのは人事部でしょ」という意識は排除させるべきです。自分事として受け取る仕組みを作ることです。