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林 明文

column
次世代リーダー | 人材開発

次世代リーダー

 “次世代リーダー”という言葉を意識している企業には、様々な背景があるのだろう。 以前の経営環境が大きく変化して、新しい発想や管理手法で経営をリードしなくてはならない企業などでは“次世代”という言葉はよく理解できる。技術の進化により以前のビジネスモデルが通用しなくなるような業界などでよく見られる。近年ではネットの発達によって、流通や広告などのビジネスモデルが大きく変化したが、これを牽引している人材の多くは旧環境の人材ではない。旧モデル化の人材と新モデル化の人材の別な層があるために、新たな層の中でリーダー育成が必要となり、それを急ぐために次世代リーダーの選抜と育成が必要となるのだ。  上記のような“真性”の次世代リーダーは、市場や業界の大きな変革期における重要で適正な経営課題である。しかし最近の“次世代リーダー”の議論はこのような真性のものだけでなく、不純、不適正なものが混じっているように感じることがある。それは、現在の管理職社員が十分なパフォーマンスを出しておらず、役員候補もいないために、その下の層に期待するというものである。要は今の管理職社員では不十分であり、主力の管理職としても、ましてや経営者として期待しないと言っているようなものである。このようなタイプの企業は、社員の年齢構成が歪であることが共通してみられる現象だ。中長期にわたる人材管理がうまく機能していないことが、“次世代リーダー”という言葉に置き換えられているともいえる。  企業の安定した継続性は、人事的に言えば必要人材を持続的に提供することといえる。正社員一人採用すると大卒であれば38年間(プラス再雇用5年間)の拘束がある。特に企業のコアスキルや文化を継承する総合職社員などは短期の業績で採用の増減など行ってはならない。また業績によって育成施策も影響してはならない。こうなると必要な人材を持続的に提供できないからである。短期的な業績コントロールと中長期の経営の持続性を混同しているともいえる。  業績の良い特に大量の新卒採用を行い、悪くなるとストップする。業績の良い時には教育をするが、悪い時にはしない。このような施策は企業の持続性がないばかりか、社員に対して雇用責任を果たしていないとも解釈されてしまう。長年間育成施策を講じてこなかった今の大量の中高年社員からは優秀な経営者や管理職が多くは出現しないと予測し“次世代”に期待をすることが、強い違和感をもたせるのである。  悪くとらえると中長期の雇用責任を特定の世代に果たしていない上に、これからも継続的な育成を行わないと解釈もできる。本来は常に企業の文化やコアスキルを継承し、優秀な人材を多く出現させることが重要であるが、今いないから特別な施策で育成するという感覚が、人事マネジメント的には短期的視点に偏っているように感じる。  “次世代リーダー”育成を否定しているのではないが、これは環境の激変などを除いては、継続的恒常的施策であり、単に通常の教育研修の一部であるという認識が必要ではないだろうか。

評価して! | その他

評価して!

 当社では一週間に一つ以上のコラムを掲載させていただいています。定期的に出させていただくこのコラムに対しては、多くの方に読んでいただき、直接コメント、感想をいただくこともあり、ありがたい限りです。またコラムの評価をしていただくことによって、その結果がわれわれにとって非常に参考になるのです。  コラムを評価いただくと平均の評価点がでます。これはコラムの“出来”を表しています。 点が高ければ総じて良い内容であるということです。しかし単純な平均点だけでなく、評価の分かれ方も非常に重要で参考になります。挑戦的、攻撃的、刺激的な内容のコラムは総じて点が分かれます。同じ平均点のコラムでも、全員が同じ評価の場合と良い評価と悪い評価に分散する場合とがあり考えさせられるものがあります。  平均点のほかに、総点数も重要視しています。総点数とは評価点の総合計点であり、多くの人が高い評価をしてくれれば高くなります。コラムは読者が読んだ後に評価する行動をしてもらえるものと、評価ボタンを押さないものがあります。面白くない、的外れなものは評価の投票数が少ない傾向にあります。少ない人数が高い評価をしているコラムは、限られたセグメントのみに“ウケ”ていることになるでしょうし、少ない人数が低い評価の総点数の非常に低いコラムは反省しきりです。総点数はインパクトの大きさですので、この点も大変参考になる数字なのです。  皆様が行うコラムの評価を毎週見ることによって、人事管理として関心のある分野や、議論が分かれる論点などを理解できます。コラム読者が日本企業の経営者、人事責任者、人事従事者ですので、この反応はあるべき人事管理、必要な人事ソリューションを考える上で、当社の重要な財産なのです。コラムという対外発信を通じて、当社は人事業界という市場の貴重な“声”を聴かせていただいているという感覚なのです。  書籍や雑誌、講演・セミナーなどの手段とともにこのコラムは当社の重要なアンテナであり、今後も継続して行っていきます。コラムが途絶えると、“ネタ切れになった”とか“体調が悪くなったのか”果ては”死んだのか“と思われそうですので、継続せざるを得ないという面もあります。  結論は非常にシンプルです。ぜひ今後ともコラムを読んでいただき、他の方に勧めていただき、そして評価していただきたいのです。皆様の評価によって人事管理のあるべき姿を研究し、またそれを何らかの対外発信でお返しすることが一つの重要な義務であると思っているからです。コラム読んだら評価ボタンを!よろしくお願いします。 以上

不揃いなハードル | その他

不揃いなハードル

 社員の業績評価を“目標管理”という手法で行う企業は実に多い。経営の目標を個人の目標に分解することで、社員の経営目標に対する意識を高めるとともに、目標達成のための推進力にするという考え方である。この考え方は実に多くの企業で、なかば当然のように採用されている手法である。管理職から一般社員に至るまで、目標を設定してその目標の達成度で業績を測定するという考え方が、構造的に理解しやすく、経営目標の達成が促進されると考えられているからである。  現実はどうであろうか。全社員に対して目標管理がうまく機能している企業はほとんどないのではないだろうか。どの企業でも“目標の設定が適切でない”、“目標の達成度を測定しづらい”という状況だ。この機能の極めて重要な要件をクリアできていないのである。設定した目標が適切でない、公平でない、さらに目標の達成度を測定することがうまくできないということなのである。目標管理の望ましく機能するレベルを100とすれば、多くの企業の目標管理制度のレベルは、50〜70くらいの感じである。業績、成果を重視する人事制度の重要な部品としての目標管理のレベルが、機能していないレベルであるともいえるのである。そろそろ一律の“目標管理”から脱却しなければならないのではないだろうか。  目標管理がうまく機能していない原因はいくつかあるが、そのうちの主要な原因の一つに、目標の設定の精度があげられる。そもそも目標管理は、企業の目標→組織の目標→個人の目標というように、樹形図的に目標が階層化されることを前提としている、そのため個人の目標は、“個人のレベルにあっていること”、“個人の責任権限の範囲で目標をコントロールできること”、“ある程度の精度で測定が可能であること”の条件を満たさなければならない。日本企業の人事管理スタイルでは、全社員がこの3つを満たすことは非常に困難である。まず等級・グレード制度が“職務”と連動していないので、各社員のレベルに合った目標レベルを設定することが困難である。特に非管理職社員についてはこの傾向が強い。また組織目標の達成は、組織、チームで行うことが多く、個人の業務が独立して集積しているのではないことが多い。そのため一般の社員の目標設定は、ひどくあいまいで統一性がない。果ては目標を社員個人に設定させる企業もある。社員が企業、組織目標を理解し、自分の等級・グレードレベルをよく理解し、邪念がない状態で目標設定するのであればまだわかるが、個人に設定させた目標はあまりにもバラバラである。さらにその目標に対して上司が検証し追加修正削除し、決定するプロセスが決定的に弱いのである。社員がそれぞれ設定した、バラバラのハードル競争をしているようなもので、これで仮に“測定”がうまくいっても、本来的に公平な競争が成り立っていない。  個人に目標設定させる悪習がなぜこれだけ流行し、それが機能しないことが証明されているのに、なぜかこの手法から脱却できていない。個人が目標を考え、目標案を作成することは、社員の経営に対する理解度を高める意味では否定はしない。しかしあくまでも会社目標を達成するための、樹形図的な目標設定であるのであれば、管理職が強い権限で統制するべきであろう。十分に機能しない今の目標管理を続けることが正しいとは言えない状況であることは間違いなく、再構築が必要なのではないか。 以上

人事の財務諸表 | 人事アナリシスレポート®

人事の財務諸表

 企業経営にとって、財務諸表はその企業の経営状況を知るうえで必須のものである。財務諸表を見れば、企業の財務状況や損益状況を即座に正確に把握することができるのである。“金”という視点で企業を見る場合には財務諸表を見れば十分であろう。経理財務機能では最も重要な帳票である。  人事分野ではこの“財務諸表”にあたる定期的な報告書式を持っていない。財務諸表の附表の中で、社員数や平均給与、平均年齢の数字は記載されているがこの程度であるし、あくまでも財務諸表の一部情報である。人事については経営者に対しても定期的に報告すら行っていない企業がほとんどであろう。経営者はどうやって人事の状況を把握するのであろうか。人事が経営にとって重要な機能であるのであれば、財務諸表に類する報告書式を持ち、定期的に報告されなければならない。“人事諸表”、“人材諸表”というのか命名はともかくとして、正確な人事情報を提供するルートとコンテンツが必要なのではないだろうか。 おそらくこの“人事諸表”は以下のような構成になるだろう。大きくは一定時点の人材の保有状況を把握するための帳票と一定期間の人事のパフォーマンスを把握するための帳票である。 前者は人材の保有状況であるので、期末時点の保有する人材状況がわかるものであるので、人数(雇用区分別、入退社員推移など)、人数構成(等級別、年齢別など)、人件費総額(総額、平均年収、推移、各種指標など)、スキルレベル(保有スキルなど)などである。これらが整理されていれば企業の保有人材、人的資源状況が一目でわかるだろう。後者は一定期間のパフォーマンスであるので、マネジメントレベル(目標達成度、管理職レベルなど)、モチベーション(全体、推移、評価統計など)、コンディション(職場環境、健康面など)である。これらの情報が“数字”を元に作成されていると、一定期間のパフォーマンスがわかりやすいのではないか。 “ポートフォリオ”と“パフォーマンス”、“保有人材”と“期間成果”を中心とした報告書式が整備され、最低一年に一度役員会報告になり、また一部情報が外部開示されるようになると、企業の人事レベルは一気に上昇するはずである。 人事の特殊性として、また近年の人事の重要課題として付属して報告する必要が高いものもいくつかある。例えば社員は“期間の定めなき雇用”であり大卒社員は65歳までの43年間雇用するように長期に拘束される。そのため将来の人員数や人件費予測は非常に重要な経営情報である。また女性活躍推進が義務付けられているため、これらに関する統計なども必要だ。 人事は経営や外部に対して正式な報告書式と報告場所を持たなければならない。現時点でそれがない企業が大半であろう。人事機能がより高度に発達して経営に貢献するためには必須ではないだろうか。 以上

スキルの実装 | 人材開発

スキルの実装

 企業の研修・トレーニングの中には教育効果が十分ではないものが多いのではないかと疑っている。研修・トレーニングは企業の方針や経営計画達成に必要な知識、スキル、マインドを実装させるために行う。企業がコストをかけて行うものであるので、当然経営として何らかの成果にプラスの効果があるものでなくてはならない。実施後に教育した知識、スキル、マインドのレベルが向上し、それが業務に生かされ、成果の向上とならなくてはならない。そうなると研修・トレーニングの項目や内容が真に重要な経営ニーズであり、かつ社員に不足していることが前提だ。要は教育ニーズが経営の求めるニーズであり、またそれが不足していることが明確であって、はじめて効果が出るのだ。そうなると経営が求める人材像からキーとなる知識、スキル、マインドを把握することと同時に社員のレベルを正確に測定する必要がある。  ニーズが特定されると、それを身に付けさせるための研修・トレーニングを企画、実施することになる。実際に行われている研修・トレーニングは総じて時間、コストの投下が少なすぎると感じる。営利企業が時間とコストをかけて実施するのであるから、できるだけ効率的効果的に行いたいという背景があり、そのため業務をせず研修・トレーニングを長期間受けさせることが困難であるので、どうしても短期間になってしまいがちである。  極めて重要であるのは、研修・トレーニングが目的的かということである。具体的な知識、スキル、マインドの向上なくして、経営方針、計画達成が困難であれば、必要な教育への投下は当然である。またその教育方法も参加する社員の大半が確実に向上するものでなくてはならない。適度な投下と効果的な手法があって初めて効果が見込めるのだ。  例えば“部門計画立案”、“論理的思考”、“プレゼンテーション”などの具体的な研修・トレーニングで、参加者の多くに実装することを保証するためには、一つ一つの項目に対する時間投下は相当なものであろう。プレゼンテーションスキルの向上を実務で役立たせるレベルで教育しようとすると、少なくとも何度も何度もプレゼンのシミュレーションを行い、個別に指導し、職場に持ち帰り実務で使い、更にフォローアップし、必要であれば再度教育するくらいしなければ、スキルの実装にならない。“訓練”が必要なのだ。そうなると研修・トレーニングの考え方もだいぶ変わるだろう。すでに目標のレベルに達した社員には教育投資はいらなくなる。十分なレベルに達していない社員には継続して教育が必要であり、社員ごとに教育投下が異なることになる。  プレゼンスキルが対象者全員に対する一日か二日の集合研修で、経営に影響を与えるくらいの効果が出るのであろうか。多くの研修は投下に対する効果を自信を持って言えないため、中途半端になっていないだろうか。そのため参加者全員のスキルアップを保証するための必要投下を説得する力がなく、結果短期間で形式的、啓発的なものになっているようにも感じる。  企業に必要な知識、スキル、マインドを身に付けさせるための計画やその教育方法はもっと、分析的であり目的的でなくてはならないし、どうも全員一律に集合研修という発想も当てはまらない。やらないよりマシである教育ではなく、確実に経営貢献する施策でなければならない。業績が低下するとやめてしまう教育は本当に必要だったのか。教育の存在意義が問われ続けており、それを証明しなくてはならないタイミングなのである。

生産性への意識 | その他

生産性への意識

 民間企業は、商法や商慣習、社会的常識などのルールの中で利益の最大化を目的にして活動する組織である。ビジネスチャンスを見つけ、稼ぐモデルを作り、それを実行して利益を上げるという団体である。  多くの学生は学校を卒業し、民間企業に入社する。学校は実態的には民間企業人材を養成しているともいえる。しかし民間企業の目的や会社組織の基本構造、ビジネスの基本的な知識などビジネスの基礎的素養を伝授できていないのが実態である。新規に入社した社員や、その後キャリアを積み重ねた社員を見ても、利益の最大化を目的とした組織で働く知識やスキル、マインドをあまり理解していないと感じることすらある。自己の役割の根源が短期、中長期の利益のためということが本質的に理解されていないため、経営者からみると多くの場面で営利企業の構成員として違和感を持つのである。  たとえば管理職の社員にもかかわらず経理財務的な知識やスキルがないことなどはその代表的なものだ。管理職は企業の一つの組織を経営から委嘱されて管理するものであるから、当然組織の方針、計画、日常の業務管理、部下の人事管理、コンプラなどとともに自組織の経営的効率性という観点での管理が必須である。基本的な経理財務知識がなければ、効率的効果的な利益貢献活動などできない。自組織のあるべきコスト構造やそれがどこまでコントローラブルかという視点なくして、適正なコストマネジメントはできない。管理職になって基礎的な経理財務的な研修を行うことは、今までのキャリアでそのような視点を持っていない、指導を行っていないのではないかと疑ってしまう。管理職社員に経理財務的な教育を行うことがあるが、あまりにも遅すぎる。  利益の最大化という視点に立てば、社員の業務に対する意識は、高いアウトプットをいかに少ない資源投下で出すかということである。民間企業の社員は常に生産性を意識するのが仕事の本質ともいえるのだ。近年にわかに残業時間の適正化、社員の生産性の向上が議論になるが、そもそも利益追求のために生産性向上は根源的、恒常的課題であるにも関わらず、社員側の意識、行動がそうなっていないことが放置されているのだ。非効率な残業が発生する、過去から行っているという理由で無駄な業務を行う、状況に合わせた柔軟な業務遂行ができない、コミュニケーションが悪く組織効率が上がらないなど多くの問題現象が職場で日々発生している。業務指導の中でビジネスの本質や魅力やモデルを伝えられていない可能性が高い。これは日常の中で“いかに効率的に稼ぐか“が目的となっていないのだ。  民間企業で働く社員は、その職業特性として“生産性”への意識は生命線であることを再認識しなければならない。入社時点で“営利企業人“としてのマインド、特性、行動をインストールしなければならない。このあたりがあいまいで、社内が”稼ぐ“マインド行動となっていない企業も散見される。営利企業人としてのマインド、知識、スキルを、再度徹底して浸透させる必要があるのではないだろうか 以上

N+2 | その他

N+2

 企業の人事管理レベルが向上すると、企業経営に大きな貢献をすることが期待される。人事管理のレベルアップとは非常にシンプルで、次の2つの要件を満たすことである。まず経営方針、計画を達成するための人材がそろっていることがまず挙げられる。方針、計画を達成するためには、必要な能力を持った人材が必要人数必要になる。この必要人材の保有は企業の目標達成のための前提である。二つめは保有している人材が高いパフォーマンスを発揮することである。人材を保有しているだけでなくこの人材がより高いパフォーマンスを挙げるマネジメントが必要である。この2つの要件をどの程度満たしているかが企業の人事管理、人事機能のレベルである。  人事制度の改定や雇用施策、人材育成施策は、人事管理レベル向上の具体的施策である。環境が変化し経営計画達成に必要な人材が変化したときには、人材像を明確にし、継続的に育成する仕組みを再構築しなければならない。またパフォーマンス向上のために報酬制度の変更をすることもあるだろう。ビジネスモデルやボリュームが大きく変化した場合には、採用の見直し、雇用調整などの退職施策を実施することになる。必要な能力や知識が変化した場合には教育などの人材育成を強化しなくてはならない。具体的な人事施策は、人事管理レベルを上昇させるために行うということである。人事管理が経営に大きな貢献をするためには、自身の人事管理レベルを把握することが前提であろう。人事管理の強み弱みを把握し必要な強化をしなくてはならない。  人事改革を行う際に経営や人事部門が最も意識しなくてはならないのが、この人事管理レベルの“測定”である。改革初年度(N年)とすると、一年間かけて人事制度の設計や導入準備を行う。翌年(N+1年)新たな人事制度が導入される。その翌年(N+2年)には人事制度改革の成果が出ていることが求められる。N年の人事管理レベルとN+2年の人事管理レベルを比較し想定通り、想定以上のレベルアップになっていることが重要である。  人事改革はその成果が重要であり、制度の設計などはその過程の一フェーズでしかない。制度設計から導入された後に人事管理レベルを比較するという発想はどの企業でもあるが、このNとN+2のパフォーマンスの定量的な比較こそが改革の重要なインディケーターである。人事制度の改定のような大きな施策の時には、制度を設計導入することではなく、結果のパフォーマンス向上のみが需要であることを再認識しなくてはならない。  さらには改革時だけではなく平時においても、パフォーマンスを定量的に経営に明示することが望ましい。そうすることで人事部門の経営に対する貢献を具体的に証明できることになる。経営への貢献に軸足を置いた人事管理に変貌しなければならないのではないか。

業績と人材力 | その他

業績と人材力

 企業が成長を維持向上するためには、人材は欠かすことのできない重要な資源です。人材が高い能力、モチベーション、コンディションを持ち続ければ、企業のパフォーマンスは上がると考えられています。この人材の状態を総括して人材力というのであれば、人材力が上昇すれば業績が上がり、逆に低下すれば業績が下降することになります。これに対して異論を唱える人はいないくらい、どの経営者も人事部門も誰も疑わない考えでしょう。  問題は、人材力と業績の関係が明確でないことです。どの程度人材力が上昇すれば業績がどの程度上がるのかがわかりません。またそもそも“人材力”を総合的に測定する指標がないのです。仮に人材力が測定できれば、人材力と業績の関係性を解析できる可能性があります。そうなると経営としては人材力の投資に基準を持ってできることになります。  さて、経営者はこの人材力が業績に与える影響が大きいと考えているのでしょうか。現在の人材力が100だとして、これを110に上昇したとしたら、業績はどの程度上がると考えているかは、分析事例がないのでわかりませんが、実際にはあまり高くないリターンであると思っているように感じます。人材力がほどほどであれば、それ以上に投資してもリターンが経験的感覚的にそんなに大きくないと思っているのかもしれません。  一方多くの企業では、現在の人材力に対して必ずしも満足していません。例えば、管理職の能力が不足していると感じている企業も多いでしょうし、経営方針が徹底していない、モチベーションが十分なレベルでない、離職者が多い、高齢化によってパフォーマンスが低下したなど、重要性や影響のレベルは企業によって異なりますが様々な問題を感じているのです。本来望ましい人材力レベルを100とすると、経営者や人事部門は現在の人材力を何点と評価するでしょうか。100点以上を付ける企業は多くはなく、60点から80点くらいが回答として多いと思います。仮に80点であるとすると、これを100点以上する努力を本来はしなくてはなりませんが、80点を100点にするための投資、要は金額やマンパワーとその結果得られる業績、リターンがバランスしない、ないしはあまり影響しないと考えているのかもしれません。  日本企業は他の先進国と比較すると社員の生産性が低いと言われています。低生産性は人材力に起因している問題であり、これを早急に改善しなければなりません。今後日本企業が成長するための、証明されていない一つの重要な施策は人材力を経営として望ましい状態にすることです。この人材力向上をしても業績に影響がない、ないしは少ないということであれば、人事管理はほどほどに行えばよいということになります。ポジティブに言えば、人材力向上が企業業績の向上のための非常に重要な施策であり、人事管理の強化こそが成長のエンジンであると確証が持てる可能性があるということです。

設計と編集 | その他

設計と編集

 人事制度は社員にとって極めて重要な仕組みであるにもかかわらず、十分に理解されていないと感じることが多い。新たな人事制度を導入する時は説明会を開催し、背景や目的、そして仕組みについて、十分な理解が得られるような工夫をする。社員への説明会やQ&Aや新制度のハンドブックなどを充実させる。特に経営陣や管理職に対しては自分たちで説明できるようなトレーニングなども行ったりする。さまざまな工夫をして社員の理解を深めようとするのであるが、人事制度導入当初から十分に浸透したと思えることは少ない。制度が導入されしばらくして新たな制度で評価を行い、その結果昇格や昇給、賞与支給など自分に直接的に関係する時に、はじめて理解が促進されるように思える。  そもそも人事制度を変えるということは、新たな経営方針や計画に合わせ、企業に必要な人材像、人材の価値、働き方が大きく変化することになるが、この本質的な部分がなかなか浸透できないのだ。新たな人事制度の社員への説明会などでよく見られるのは、社員側にあまり真剣さがない情景だ。社員にとって極めて重要であるにもかかわらず、直接的に響かない。  社員に対して新たな人事に関する考え方を浸透させるためには、今までのような“まじめ”なアプローチでは限界があるのかもしれない。新制度の説明は全体として堅くて面白くない。また社員は人事制度のエンドユーザーであるが、ユーザー視点で語られていないことも多い。人事側は正確に伝えるために、等級制度、給与制度、評価制度などの人事制度の“部品”を個別に説明することが多いが、これは制度を提供する側、制度を設計する側の説明スタンスではないか。新たな人事制度によってエンドユーザーがどのような期待ができ、リスクを負うのか、今までとどう異なるのかが重要であって、制度の“つくり”を説明することではない。説明する側のスタンスに議論があると感じる。  また新制度の資料も一層の工夫が必要である。人事部が一生懸命作成する人事制度の説明資料はあまりにも堅い。社員が資料を持ち帰り、再度読み込むとはあまり思えない。伝えたい内容を興味もって理解してもらうためには、資料そのものをワードとエクセルで作ることが間違えなのかもしれない。動画や漫画などで面白く作成したほうがよほど効果的であろう。  新たな人事制度を導入することは企業にとって大きな転換点である。この転換点を社員にできるだけ浸透させるには、浸透のスタンスを再認識し、手段を大きく変えなくてはならないと感じることが多い。よい制度を設計することは前提であるが、浸透に対する意識や工夫が少ない。人事制度の仕組み部品は精密に作るが、それをエンドユーザーにどう見せるかを意識できていない。人事制度の設計の後に、これを効果的に浸透させるための“編集”が必要なのではないだろうか。 以上

数字のない生産性向上 | その他

数字のない生産性向上

 日本は主要各国に比較して社員の生産性が低い。先進28か国の中で26位という低さである。多くの社員が長時間働いているのだが付加価値が低いのだ。より利益が上がり、社員の処遇をよりよくするためには、この生産性向上が必須である。生産性が上がれば、会社も社員もより良い状態になるからだ。近年この“生産性向上”がブームであり、多くの企業で重要な経営課題として認識し、経営計画の目標に掲げている。  ある企業の部長以上を集めた経営会議でのことである。社長が次年度の経営計画を説明した。会社の経営方針、数値目標や各事業の重要課題など話をし、その最後に今年の全社共通の重要課題として“生産性の向上”の説明をしたという。内容は非常に簡潔で、生産性向上の重要性とそのための施策の概要であった。具体的な施策としては、残業時間の短縮、業務の見直しによる無駄の排除ということであった。ひととおり説明した後に質問を促したところ、ある部長がこう質問したそうである。「質問させていただきます。生産性向上が当社にとって重要だということがよくわかりました。お聞きしたいのは、当社の生産性はどれくらいでしょうか?また現在の生産性をどの程度向上させるのでしょうか。さらに当社は業界の中で生産性が低いのでしょうか?」 社長は質問を聞いたのちに、経営計画をとりまとめた経営企画部長とすこし話をし、こう答えたという。「そんな細かいことは気にしなくていい。生産性を向上させるのが今期の目標だ。とにかく部下を早く帰宅させることを徹底してくれ。」  この企業の例はすこし大げさかもしれないが、生産性向上を掲げている企業で、生産性の現状や目標を“数字”で掲げている企業はあまり見ない。現在の生産性の数字と目標とする数字が明確になっていないことが多すぎるのだ。さらには本来の生産性目標ではなく、単に目標残業時間など本来的でなく小さな目標に置き換えられていることすらある。  生産性といってもさまざまな指標がある。売上生産性、労働生産性、1人当たり利益、賃金生産性、労働装備率などである。より正確にはこれらの指標を、全社だけでなく事業別に把握する必要があるだろう。現在の生産性が過去の生産性と比較して高いのか低いのか、また他社と比較しての高低も知らなければならない。実態を知らないで生産性向上の具体的な施策を打つことはできない。生産性の数字を把握しないで、精神論や単に残業時間短縮などの時間管理的な視点での施策はうまくいかない。生産性改善と標榜し、生産性の数値を知らないというのはあまりにも滑稽だ。まずは数字からということである。 以上

50代半減 | 雇用施策・その他

50代半減

 長期雇用を前提とした日本の人事管理では、社員の年齢構成は非常に重要な論点となる。企業が持続的に成長するためには、その企業のコアノウハウ、文化を次世代に継承し、さらに発展させていくとう連続的な循環が必要となる。そのためには、年齢構成は緩やかな台形型が理想形である。台形型の年齢構成は、毎年ほぼ同数の定年及び自己都合退職者が出て、ほぼ同数の新卒社員が採用されるということだ。退職社員と採用社員がほぼ一定であることから、継続性のある安定したノウハウ、文化の継承がされるという考え方だ。  台形型の年齢構成でない企業では、年齢構成由来で重大な問題が発生する傾向にある。近年日本の大手企業の代表的な年齢構成は、バブル採用の50歳代の社員が非常に多く、逆に40歳、30歳代は極端に少ない。長い採用抑制の影響である。近年は積極的に新卒採用をする企業が増えたため、20代半ば以下は比較的多くの社員が在籍している。このため平均年齢は40歳を超えており、職場の雰囲気もマチュアだ。  50歳代のような年齢構成の突出層は、放置すると大きな問題を発生させる。まず突出層の社員はスキルが高くない傾向が強い。若いうちはこの問題は顕在化しないが、職場の中で中堅的仕事、係長や管理職候補の年代になってくると、実際に担当している業務と処遇の不整合が発生する。下の年代の人数が少ないため、ずっと実務を担当しなければならないからだ。年功的な企業であれば、等級は上昇するため、次第に仕事のレベルと等級のミスマッチが増大する。その結果年齢上昇→等級上昇→人件費上昇という人件費上の問題も発生する。さらに下の年代の社員が極端に少ないため、部下が少ない、ないしはいないこともある。そのためリーダーシップが鍛えられない。管理職として登用するに十分な経験が積めないのだ。管理職等級に昇格してもポストの空きがない、またはそもそも管理職一歩手前の等級に長期間滞留することもある。モチベーションが高まらない。  突出層の問題はこの年代だけに留まらない。突出層の下の年代も育たないのだ。突出層の下の年代は、多数の先輩がいる。若手が十分に補充されないので、長い期間がたっても組織内での相対的序列は高まらない。また突出層でさえ管理職ポスト待ち人材が多いので、自分たちがポストにつける可能性がさらに低い。  突出層は育たない。突出層の下も育たない。そして突出層は50歳代となっている。この問題はバブル採用時からずっと指摘されてきた問題である。中には年齢構成是正施策を実施してきた少数の企業はあるが、大多数は問題と分かっていても手を付けてこなかった。今後経営環境が変化していくなかで、人件費適正化、人材の質の向上、職場の活性化が重視される中で、遅ればせながらこの突出層に対する施策が重要となる。理論的に考えれば50歳代は数年間に半減以上する施策が必要となる。直ちに手を付けなければ、激変する環境下でさらに成長を継続する企業にならず、逆に成長力を失ってしまう。遅ればせながら50歳代の雇用施策がブームとなりつつあるが、この問題に本格的に向き合う最後のタイミングではないだろうか。 以上

質問に答えろ! | その他

質問に答えろ!

 質問に対する答えを聞くと、その人の優秀さがよくわかる。  会議などで質問が呈されたときに、その質問に対し的確に答えるビジネスマンは優秀である。誰しも質問に対しては、なんらか答えるのであるが、質問者の意図を十分に把握し、的確な内容を瞬時に答えることは決して簡単ではない。優秀な人は、的確、効果的に答える術を知っている。  会話や会議をしている中での質問は、その質問者の求めている解答を提示しなくてはならない。質問者が求めているものが何かを把握しないで、相手が満足する回答は提示できない。まず何を求めているかを把握することが重要なのだ。質問者は単にわからないことがあり単純に質問をする場合もあるだろう。また自分の見解との違いから質問することもある。これはすこし批判的なニュアンスが入っている。更には他の参加者に同意を得るために、あえて質問をして強調するという場合もあるだろう。いずれにしても相手がなぜ質問したのかを瞬時に理解をすることが求められるのだ。間違えた解釈をすると相手の満足は得ることができない。  質問の意図を理解した後に重要なのは、どう回答するかを瞬時に考えることだ。まず質問に対して、自分が今答えられるか、答えられないかを判断する。答えるだけの情報や考えがなく返答すると全く相手の満足は得られない。今答えられないという選択肢も重要なのだ。答えることが可能な質問に対しては、その答えるべき内容を瞬時に用意しなくてはならない。YES/NOを聞いているのか、量を聞いているのか、それとも感想を聞いているのか、何を聞いているかを間違えてはいけない。  答え方も重要である。優秀な人の特徴は、まずは結論を言うことにある。“去年より生産性は上昇したか?”という質問には、まずは上昇したかしないかを先に言うべきだ。この質問に対して、延々と生産性の出し方や生産性の数字を解答するようなスタイルをよく見るが、これは質問者の要求にストレートに答えていない。このような回答者に対しては、質問者の信頼感や評価は高まらない。なかにはイライラする人まで現れる。  優秀な人は見事に質問に対する期待以上の対価を提供してくれる。結論がわかりやすい上に関連する魅力的な情報も提供してくれるのである。質問に対する満足が得られるとともに、解答者に対する信頼感は極めて高まる。  日常のコミュニケーションの中で、質問をすると満足な答えを得られることが少ないと感じる人は多い。こちらの質問の意図や内容を理解せず、延々とずれた回答を聞かせられることもある。このようなビジネス上重要で頻繁に必要とされるコミュニケーション能力を継続的に上昇させる努力が必要だ。ズレた回答者に対しては遠慮せずに“質問に答えろ!”とストレートに言うべきであろう。 以上