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小野寺 真人

column
令和維新の年になれるか | 人事制度

令和維新の年になれるか

 現代の人事制度の基礎は明治維新と言われていますが、この明治維新は、西暦1868年(辰年)に始まり、明治天皇が即位して江戸幕府が倒れ、明治政府が発足した日本の歴史的な転換期であったわけです。  人事制度に関しては、この明治維新以降に大きな変化がありました。例えば、前近代的な身分制度からの解放や、新たな近代的な役職や制度の導入などが行われました。これらの変化は、日本の近代化とともに人事制度にも影響を与え、近代的な組織や制度の基礎を築くことになりました。  以降、辰年からどのような出来事があったか気になり整理すると、、、 1916年(辰年)  大正時代に入り、日本は急速な近代化を遂げました。官僚制度や公務員制度の改革が進められ、官僚の選任や昇進に関する基準が見直され、近代的な人事制度が整備されました。 1940年(辰年)  昭和時代に入り、日本は軍国主義の台頭や第二次世界大戦の勃発など、大きな社会変動を経験しました。この時期には、国家の体制や組織が変化し、人事制度もそれに応じて変化しました。 1964年(辰年)  戦後の高度成長期に入り、日本は経済成長を遂げました。この時期には、企業や官庁の組織が拡大し、人事制度も組織内の人材育成やキャリアパスの整備が重視されるようになりました。 1988年(辰年)  バブル経済の到来やグローバル化の進展など、様々な経済・社会の変化が起こりました。これに伴い、企業や官庁の組織が再編され、人事制度は働き方の改革や労働条件の見直しなどが進められました。 2000年(辰年)  バブル経済の崩壊後の経済不況期であり、企業のリストラクチャリングや人員削減が進行しました。多くの企業が人事制度の見直しや労働条件の改善を図り、労働市場の柔軟性の向上や非正規雇用の拡大が進んだ時期でもあります。 2012年(辰年)  リーマン・ショック(2008年)をきっかけとする世界的な金融危機以降、多くの企業が経営環境の厳しさに直面し、人員削減や組織再編が相次ぎました。この時期には、企業の経営戦略や人事制度が大きく変化し、労働市場の不安定化や労働条件の悪化が懸念されました。  これらの過去辰年における社会的・経済的な出来事は、人事制度に影響を与え、企業や組織がその時代の課題やニーズに対応するために制度の改革を行ってきた経緯があります。特に、リストラクチャリングや経営戦略の変化、働き方の見直しや労働市場の変動への対応などが重要なテーマとなってきたのです。  今年2024年は辰年ですが、新型コロナウイルスの世界的な流行によるパンデミック以降、多くの企業がリモートワークやテレワークなどの柔軟な働き方を導入し、働き方の在り方や人事制度が大きく変化してきています。また、経済の不確実性や雇用の不安定化も影響し、労働市場全体のダイナミクスも変わってきています。  社会全体でも多様性と包摂性の重要性が認識される中、企業も多様な人材の活用や包摂的な職場文化の構築に力を入れています。人事制度も、ウエルビーイングと多様性と包摂性を推進するための取り組みを進めていく必要があります。これらの要素が、2024年(辰年)における人事制度の基礎を形成していくでしょうし、企業は、これらの変化に迅速に対応し、より持続可能な人事戦略を構築することが求められています。  今年を明治維新のごとく令和維新の年にできるかどうかは、各企業の変革の本気度にかかっているのです。

「管理職適性の見極め方」 | 人材アセスメント

「管理職適性の見極め方」

  管理職への昇格において、マネジメント適性が不足した人材が昇格するミスマッチや、そもそもの昇格基準の透明性が足りないといった課題をよく伺います。 これらを放置すると、マネジメントの品質が低い、従業員が上司へ不信感を持つといった理由で、経営そのものに悪影響をもたらしかねません。 本セミナーでは管理職昇格の前後の解決策として ・人材アセスメント(対面・リモート)で適切な人材を客観的に見極める方法 ・昇格後の活躍を確実にするための人材育成プログラムの構築 をご紹介します。 管理職の品質を高めたい会社、人材アセスメントを未導入・導入したが活用できていない会社の人事部様はぜひご参加ください。

タレントマネジメントの導入 | 人材アセスメント

タレントマネジメントの導入

 最近、クライアントの担当者との会話で、タレントマネジメントについての話題になることが増えた。このタレントマネジメントは、多様な人材が在籍する大手企業を中心に導入が進んでいるが、タレントマネジメントを行う理由とは何だろうか。  タレントマネジメントは、自社のタレント(社員)に、自身が保有している能力やスキルを最大限に発揮してもらうことにより企業成長につなげていく取組みで、採用~配置、育成、評価等々の人事施策を戦略的に行うことを指す。人材の流動化が激しいアメリカで、優秀な人材の定着を目的として1990年代に考案されたと言われている。  かつて日本は大量採用が主流で、企業はできるだけ多くのポテンシャル人材を獲得することに注力していた。入社すれば定年までその企業に在籍する終身雇用制度が一般的であったため、入社後にじっくりと時間をかけて企業が求める人材へと育成していく余裕があった。  しかし現在は、労働人口の減少により、企業が求める経験やスキル、素養を備えた人材を採用することが必要になってきている。このタレントマネジメントを活用すれば、募集するポジションの人材要件や配属先のタレントの傾向を確認できるため、採用活動を今までより円滑に行うことができる。また、個々人のスキルや思考、価値観を把握することで、誰をどのポジションに配属すれば生産性が上がるのかが分かり、最適な人材配置が可能になる。  また、雇用形態や働く環境の多様化も導入理由の一つだ。今は転職することが普通になり、ひとつの企業のために働くという考え方が薄れ、業務委託やフリーランス、あるいは副業なども普及してきた。企業はいっそう自社の方向性や経営ビジョンに共感し、成長を支えてくれる人材を確保することが必須となっている。そこで人的資本となる社員の思考や価値観を把握し、企業が求める人材の発掘や定着に生かすため、タレントマネジメントに注目が集まるようになっているのだ。  一方、タレントマネジメントシステムを導入してもうまく機能しない、期待した効果が得られないと悩む企業も少なくない。 タレントマネジメントを行う際に注意しなければならないことは何だろうか。何よりも重要なのは、「タレントマネジメント」を自社に取り入れることによって何をしたいのかを明確にしておくことだ。社員をデータベースで管理するからと情報だけ蓄積しても、活用しなければ宝の持ち腐れとなってしまう。また、その目的を理解できなければ、個人情報を集めるということに不信感を持つ社員、なかなか情報を提供しない社員も出てくるだろう。そのため、タレントマネジメントの目的をできる限り開示して、社員にアナウンスする必要がある。自社の組織課題を整理した上で、取得した情報を何に活用するのか、データを蓄積し、どのように管理していくのかを考え、それによって何を成し遂げたいのかを明らかにする。そして人事、現場、特に経営陣としっかりと事前にコンセンサスを取り、計画的に実施していくことが大切だ。

コロナがきっかけ | 調査・診断

コロナがきっかけ

 新型コロナウイルス感染症は収束どころか「第3波」の到来が、日増しにはっきりしてきました。厚生労働省の12月17日付発表では、全国の新規陽性者数は3,211人と、1日の新規陽性者が過去最多を更新し、また同じ12月17日の東京都の新規陽性者数は800人を超えて822人となり、過去最多となっています。  このようなコロナ感染拡大の状況をきっかけとして、ワークスタイルの変革に取組んでいる企業がますます増えています。各社の取組みポイントは、リモートワークにおける業務の効率化、社員一人ひとりの行動の把握をシステムの構築とともに可視化する点です。Web会議などのITツールを使用し、上長と部下がキチンと話し合って、やるべき業務を週・日単位でシステムに登録し、その進捗を部内で共有、確認されていくといった仕組みです。実装されれば、部内の全員の仕事が見える化され、リモートワークでの日々の業務内容やプロセスも把握できるし、成果物も明確になります。ただ、評価の視点としては、特に部下とのコミュニケーションでは、以下のSTARの意識が必要で、それぞれの事実を確認することが大事となります。   ■Situation(状況) :どのような状況だったか?   ■Task(役割)    :どのような役割だったか?   ■Action(行動) :どのような行動をしたか?   ■Result(結果) :その行動/言動によって得られた結果は?  一方、今後のリモートワークを主眼に置いた働き方に合わせて、ジョブ型人事制度の導入を検討している企業も増えています。 一般社団法人 日本テレワーク協会も、7月1日に「経営・人事戦略の視点から考えるテレワーク時代のマネジメント改革」についての研究成果レポートを発表し、「テレワーク時代のマネジメント改革日本型の人事制度」を改定し、欧米で主流の「職務範囲が明確で成果に応じて評価されるジョブ型」への移行へ言及していて、2020 年以降、「ジョブ型」の人事制度や職責や成果に基づいた報酬制度への移行に関する議論がより一層活性化するだろうと予測しています。  グローバルの視点に立った場合、日本の「終身雇用」や「年功序列」は極めて特異な制度と言われています。企業活動の範囲が日本にとどまらず、世界中に広がっている現代において、ジョブ型雇用の浸透は時間の問題ともいえるでしょう。 さらに、前出のコロナの影響もあり、直接仕事のプロセスを見ることが難しいテレワークやリモートワークなどへの対応や新しい働き方が普及しつつあります。 働き方の変化に伴い、「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ、人事制度を見直すきっかけになるかもしれません。  ただ、「ジョブ型」のメリットの中には、専門的なスキルや知識を持った即戦人材を採用できる、成果にコミットしやすい、評価体制が確立しやすい等々がある反面、デメリットとしては、事前に職務範囲を定義することが難しい、契約外の仕事を依頼できない、予想外の業務が発生した際に担当者がいない等々があるのです。このメリット・デメリットを比較しながら、さらに「メンバーシップ型」でも課題のあった部下の育成や上司のマネジメントスキルの向上、働き方改革での自律型人材の育成課題をクリアにしていかなければなりません。  人材育成の課題を含めた長期的な人材戦略をしっかりと持たずに、「ジョブ型」への安易な設計・導入を進めていくのはリスクがあることを忘れてはいけないのです。                                                             

健康経営始めてますか? | その他

健康経営始めてますか?

 今後の日本は、2030年には超高齢社会に突入し、日本国民の3分の1が65歳以上になり、働く世代と老齢人口が同じくらいの割合になると予想されています。この状況下で、どのように経済活動を維持・発展させていくのか?これが今直面している日本の課題の一つです。高齢になっても働き続けることが出来るシステムを今から作っていくこと、また、今働いている世代の方々をどのように健康にしていくのかを真剣に考えなければなりません。  そこで、今注目されている健康経営ですが、これは「企業が従業員の心身の健康に配慮することによって、経営面において大きな成果が期待できる」との基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、 戦略的に実践することを意味しています。 従業員の健康づくりの推進、健康管理は、単に医療費という経費の節減のみならず、生産性の向上、従業員の創造性の向上、企業イメージの向上等の効果が得られ、かつ企業におけるリスクマネジメントとしても重要です。  どんなに売上や利益を上げても、健康を損ない体だけでなく心身が病んでいる従業員が多くなれば、生産性もモチベーションも上がりません。いわゆる不健康経営に陥った会社は、離職率も高くなり、企業イメージも損なわれるのです。  社内で長期休業者が出ると、その分を周りの従業員が補完しなくてはいけないため、周囲に負担がかかり、全体の生産性も下がるのです。また、離職率が高いと採用費が嵩み、採用者には社内教育を行う必要が出て人件費も嵩みます。  全従業員が万全の体調で勤務できる環境を整えることは、日本企業にとってかかせない投資と言えるでしょう。何より健康経営が評価されると会社のイメージアップにつながり、採用力をつけることができ、株価も上がり会社の価値も高くなるのです。  まず、メリットが大きいのは、従業員の健康状態が企業活動の根幹に繋がる業態です。 例えば、わかりやすい例でいうと、飛行機・電車・トラック・バス・タクシーなど、乗務員や運行管理者の健康状態が「安全」に直結する運輸業などは、健康経営を目指すメリットが大きい業態の代表と言えるでしょう。  従業員の健康状態が悪化すると、判断ミス・行動のミスにつながり、最悪の場合は健康に起因する重大事故につながりかねず、健康経営の実践は待ったなしとされています。有名な労働災害に関する経験則で、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するという「ハインリッヒの法則」があります。もし、小さな異常が続くようであれば、健康経営にとり組むメリットが大きいのです。  健康経営は、今後予測されている人手不足や働き方の多様化が進むうえで必要不可欠な施策といわれています。少子高齢化が進む中、企業が人材確保に対してできる対策として、幅広い人材が仕事に就ける多様な働き方を提案し、従業員へ健康投資を行うことが求められていきます。  一人でも多くの人に「この会社で働きたい」と思ってもらうことで、人材確保や離職を防ぐ効果が期待できます。従業員の健康に配慮することは、働き方改革のテーマでもある「生産性向上」にもつながり、企業のイメージ向上や人員確保にも大きなメリットがあります。まずは、自社の従業員がどのような問題を抱えているのか、健康課題を把握して、手軽に導入できる施策から始めてみる、それが健康経営への第一歩ではないでしょうか。                                         以上

シニア人事制度 | 関連制度設計

シニア人事制度

 最近クライアントの人事担当者と話をしていると、シニア人材活用のテーマが多いと感じます。シニアの方々は、長年の経験と豊富な知識を持っているし、その経験や洞察力は、会社にとって非常に貴重な資源でもあります。だからこそシニア人事制度を再構築することで、彼らの経験や知識を最大限に活用し、会社の業績向上や問題解決に貢献してもらいたいといった内容です。ただ、そういった思いはあるものの、制度構築となると進んでいないのが現状のようです。  ご存じのとおり、2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法により、企業には70歳までの雇用が課されることになりました。この法改正で企業に求められる高年齢者雇用確保措置は「努力義務」の位置づけであるものの、大企業を中心に70歳までの雇用延長を制度化する動きが出てきており、多くの企業で高年齢者雇用の推進が急務となっています。 旧法では、   ①65歳までの定年引上げ   ②65歳までの継続雇用制度の導入   ③定年廃止のいずれかを講じることが企業に義務付けられていました。 今回の改正法では、   ①70歳までの定年引上げ   ②70歳までの継続雇用制度の導入   ③定年廃止   ④高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入 あるいは、70歳まで継続的に事業主が自ら実施する社会貢献事業や、事業主が委託、出資等する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入のいずれかを講じることが企業の「努力義務」として課せられることになりました。  また、総務省統計局「人口推計」によれば、高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は2021年10月1日時点で28.9%となっていて、この高齢化率は今後も上昇を続け、2036年には33.3%、つまり総人口の1/3が65歳以上になると推計されています。労働人口はどうかというと、若年層を中心に減少に転じており、今後必然的に、企業としてはシニア層(60歳代以上)の活用を推進せざるを得ない状況になってきているのです。  現在は多くの企業が65歳までの制度を有しているものの、65歳定年延長や70歳までの継続雇用制度については、まだまだ整備が追い付いていないのが実情です。65歳定年延長あるいは66歳以上の継続雇用制度の導入にあたっては、今よりも雇用期間を延長していくことに対してシニア層の処遇をどのように再設定するか、総額人件費の上昇にどのように対応するか、という点が非常に高いハードルになっています。その他にも、シニア層の健康や能力の維持、業務の確保、職場環境整備等といった人事施策が必要になる点が、企業の人事施策が計画的に進まない要因になっていると考えられます。シニア人材の活躍ということに関して、現場レベルでは何から始めればいいか分からないという状態の企業が非常に多く、とりあえず検討を開始してみたが、検討が長期化したり頓挫したりといったケースが多いです。その主な原因を考えると、意思決定するための現状分析と方針策定、シミュレーションが不十分なことがあげられます。   現状分析は、問題・課題の抽出をして分析するわけですが、少なくても以下の視点で実施することが必要です。   ①人員数・人員構成 現状の人員数が適正か、人員構成に問題がないか、将来的にどうなっていくのか   ②人件費単価 現状の自社の賃金レベルが労働市場においてどうなのか   ③シニア人材評価 現状の評価はシニア層の能力や貢献を適切に評価しているか、評価結果に偏りはないか   ④意識調査/職場環境調査 シニア社員を含め、モチベーションや組織の現状をソフト面・ハード面で分析すると どうなのか  この分析の結果を根拠とし、自社におけるシニア社員の活用方針を明確にして、経営と共有しておくことで、その後のシニア人事制度構築をスムーズに進めることが可能になります。シニア人事制度を構築・浸透させるには、会社全体での意識改革や政策の見直しへの取り組みが必要です。シニア人材の能力や貢献を正当に評価し、彼らが持つ経験や知識を最大限に活かす仕組みを整備することで、会社は多様性や包括性を促進し、持続的な成功を築くことができるのです。

ノーレイティングの時代は来るか | モチベーションサーベイ

ノーレイティングの時代は来るか

 先日、アメリカ企業に20年勤めていた知人が日本に戻り、日本企業に転職した際に人事評価にまだMBOを使用していることにびっくりしたという話を聞きました。  このMBO(Management by Objectives and Self Control)は、アメリカの経営学者ピーター・ドラッカーによって提唱され、日本に上陸したのは意外と古く1960~70年代と言われています。その後1990年代から多くの企業で導入され現在も広く使用されていますので、もう30年程度使用されていることになります。また現在、日本で導入されているコンピテンシー評価もアメリカ発祥の手法です。  これは人事評価やパフォーマンス評価の一環として使用され、社員の強みや改善のポイントを特定し、組織全体の目標達成に貢献するために役立つものとして使用されています。  前出の知人によると、アメリカでは人事評価そのものが廃止されていて、それは2010年頃からの動きとのこと。それまでは、社員個々の成果(業績)に基づき、事実ベースで評価を行い、結果に報酬を結びつけるというものが主流でした。ただ、現在の業務遂行においては多種多様なスキルが必要なことや、目に見える成果(業績)だけで判断することが難しくなってきたことが挙げられ、人事評価を撤廃する動きが急となったそうです。  人事評価を撤廃?と聞くと人事評価を行うことをやめたのかと思う方もいるかもしれませんが、人材や企業の成長を促すうえで、評価を行うこと自体をやめることはできません。人事評価をやめるというのは、人材に点数やランク付けをやめるということです。  本来、人事評価は社員のモチベーションを上げ、成長意欲や会社への貢献度を上げていくための人材育成ツールであるにもかかわらず、評価点数やランクが思ったより低く、逆にモチベーション低下を招いてしまったなんてことがあるのです。    そこで、アメリカでは「ノーレイティング」という手法に切り替えた企業が多く、GoogleやMicrosoft、Adobeをはじめ、有名な大手企業も取り入れています。  ノーレイティングは点数で評価を行うのではなく、目標に至るまでの行動内容、どのように目標を達成したのか、目標の見直しは行われたのかといったことも含め「面談」をこまめに行うことで人事評価を行います。また、ノーレイティングは行動改善なども評価の対象とするため、チームのコミュニケーションが取れ、改善するべき点が浮かび上がりやすくなります。また、業務遂行中にフィードバックなどを行うことにより、年度末にまとめて行っていた評価者の負担も軽減といったメリットもあります。  ここまでの流れでいうと、日本にはアメリカの人事評価の手法を取り入れる傾向が顕著で、今後日本でも人事評価がなくなっていくのかと思うかもしれません。しかし、今の日本で人事評価をすぐに撤廃することは難しいでしょう。日本では、アメリカですでに多くの企業が行っているタレントマネジメントが浸透しきっていないことが挙げられます。  日本企業は伝統的な組織文化を持っており、ヒエラルキーが強調され、社員のスキルや成果を評価するといった文化があります。このような文化では、タレントマネジメントが十分に評価されず、個人の成長と適材適所の配置に焦点を当てるのが難しいのです。  ノーレイティングは、数値評価や従来の評価スケールに頼らず、社員の個々の成長と発展に焦点を当てます。タレントマネジメントは、社員のスキルやキャリアの目標を明確にし、それを支援するためのプランを策定するプロセスです。これを組み合わせることで、社員の成長をより効果的に促進できるのです。  タレントマネジメントを導入するには、社内の現場や部門・部署を超えての連携が不可欠となります。そのため、タレントマネジメントが行き届いてからでないと人事評価を廃止・簡易化するのは難しいのではないでしょうか。  ただ、日本でもグローバルなビジネス環境の変化や若年層の価値観の変化により、タレントマネジメントの重要性が認識されつつあり、いくつかの企業では取り組みが進んでいます。何年後かには導入が進み、タレントマネジメントが当たり前の企業が増え、ノーレイティングを前向きに導入する時代が来るのかもしれません。 以上

破壊的イノベーション | 人材アセスメント

破壊的イノベーション

 知り合いである経営者は、クレイトン・クリステンセン(ハーバードビジネススクール教授)の「イノベーションのジレンマ」で提唱された破壊的イノベーションを起こすようなムーブメントが社内に欲しいと言います。  この破壊的イノベーションとは、その市場における既存のルールを根本的に覆して、まったく新しい価値を創出するイノベーションのことで、ローエンド型と新市場型の2種類があります。ローエンド型は、高価格で高機能な製品が溢れている市場において、低価格でシンプルな製品を提供することでローエンドを支配すること、新市場型は、新しい技術を用いてそれまで市場になかった新しい価値を提供することでシェアを獲得するイノベーションのことです。  どちらの型においても、これまでその市場で当たり前だった概念を覆し、新しい製品を流通させることにより、競争のルールを変更し、当該市場で隆盛を誇っていた企業パワーバランスを変えてしまいます。この競争ルール変更によって、たとえスタートアップの企業であっても大企業の脅威となり、時にはその企業に取って代わり市場トップの地位に躍り出ることも可能になります。大企業としては、この脅威を真剣に受け止め、自らが破壊的イノベーターとなることで市場に新しい価値を提供し続ける必要があるのです。  前出の経営者は、そもそも自社が確立したい本質的価値は何なのか、目標としているあるべき姿に向かって進んでいるのかのプロセスを定期的に検証することだけが大事と考え、例えば新製品を開発する部署には、KPI数値の目標はいらないと言います。  今まで全社の目標設定は、SMART&SUREを使って設定してきたわけですが、    ・Stretched (背伸びした目標である)    ・Measurable (成果が測定可能である)    ・Achievable (達成可能である)    ・Reasonable (合理的である)    ・Time-related (期限が定められている)    ・Specific (具体的である)    ・Understood (理解されている)    ・Realistic (現実的である)    ・Easy to evaluate (基準が明確で評価しやすい)  こういった目標は開発部署が設定していても、短期業績を求めるだけで破壊的イノベーションが起きることはないだろうと言い切ります。 確かに破壊的イノベーションを起こすような企業では、KPI以上に独自のカルチャーが実行をドライブします。ピーター・ドラッカーは「カルチャーは戦略をも凌駕する(Culture eats strategy for breakfast)」と言っていますし、カルチャーは変革の過程でポジティブに力を発揮すると、数値目標を超える成果を生み出します。  また、破壊的イノベーションでは、さまざまな部門・知識・経験を持った多様な人財が一同に集まり問題課題を考え、その解決策を議論することが重要です。既存の枠組みにとらわれることなく、論理的に分析するより創造的に思考しなければなりません。人間の五感だけでなく第六感から霊妙までも必要なのです。霊妙と聞くと何か違和感を覚えるかと思いますが、人間の五感の枠をも取り払ってこそ、創造的思考を探求し、論理だけでは難しい「閾値」を超えるディスラプター(破壊的企業)になるヒントがそこにあるかもしれません。 以上

2023年は卯(うさぎ)年 | 調査・診断

2023年は卯(うさぎ)年

 十二支それぞれの相場格言に(辰)(巳)天井、(午)尻下がり、(未)辛抱、(申)(酉) 騒ぐ、(戌)は笑い、(亥)固まる、(子)は繁栄、(丑)はつまずき、(寅)千里を走り、 (卯)は跳ねるがあり、卯年の相場は上昇相場と言われています。  昨年の2022年は寅年であり、「千里を走る」でした。この「千里を走る」は政治や経済で波乱が起こりやすいとされていましたが、その格言通り、ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮によるミサイル発射の脅威、世界的な金利の急上昇、さらには安倍元総理の事件、その後は宗教と政治の関係が政権を揺るがしかねない状況を招くことになりました。 まさに波乱の1年であったと言えるでしょう。 この状況に沿って考えると、卯年の2023年は産みの苦しみを経て、新しい視界が開けてくるという流れになってほしいと思います。  人事関連に目を向けると、人事制度や人事施策には、社会情勢やIT化の急速な進行に伴い様々な課題への対応が求められています。「同一労働同一賃金」や、「育児・介護休業法」「パワハラ防止法」といった法改正、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方の「テレワーク」や、仕事を同時に手がける働き方の「パラレルワーク」等を代表する働き方の変化など、企業は世運隆替に即した、かつ自社の風土にフィットする制度への変革が必要とされているのです。  昨今、急速している人的資本経営に対する動きに注視すると、人事施策を打つだけでなく、人材を「資源」から「資本」へ、人件費や教育費を「コスト」から「投資」へと、考え方の転換が求められています。人材の情報管理状況をいくつかのクライアントに聞いてみると、「人事考課」「異動・経験部署」のデータは一元管理していますが、「キャリア志向や目標」「スキルや強み」のデータを一元管理している企業はまだまだ少ない状況です。大抵は基本的な属性情報の一元管理に留まり、実際に異動配置などに活用できるレベルの人材情報は蓄積できていません。 また、戦略人事の認識度と進捗度合を聞くと、「データドリブンな意思決定」や「HRテクノロジーを使いこなす」は認識度及び実現度とも低いです。残念ながら、人材情報の一元管理・活用が戦略人事に非常に有効と考えつつ、実行できていないという状況です。  一方、先進的な企業では、「デジタル人材」を人事部に配置する流れが進んでいて、人事データを分析して活用するピープルアナリストも生まれています。今後は、人事のDX化を推進していくため、人事部にデータ系のスペシャリストを設置する企業が増え、「データ分析」や「AI活用」がさらに進んでいくのではないでしょうか。 今年は、これまで以上に「人事部のパーパス」が問われる1年になると思います。これまでの給与計算や労務管理といったオペレーション中心の人事は、DXによって置き換えられつつあります。また、働き方の選択や変化により、副業がよりメジャーになっていくため、さらに個人主義の時代になっていくと考えます。それに伴い、「やりがい」のある会社が選ばれるようになるでしょう。人事部には、報酬の考え方、会社へのエンゲージメント、今後の人事戦略立案がより一層求められるようになります。より優秀な人材を採用し、引き留めておくためには従来の労務管理型の「人事部」では対応しきれないのです。 2023年に跳ねるには、「旧型人事部」からの転換期として、まず「人事部とは何のためにある部署なのか」という再定義が必要になるでしょう。

テレワークの落とし穴 | その他

テレワークの落とし穴

働き方改革一連の施策としてテレワークを導入する企業が増えている。 テレワークとは、情報通信技術を活用した、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方で、Tele(遠く離れた)+Work(仕事)の造語である。TelephoneやTelevisionと同じ使い方だ。 テレワークには「雇用型」「自営型」「在宅」に分類される就業形態があり、環境負荷への軽減や企業変革の促進、そしてワークライフバランス向上等の効果があると言われている。 この在宅テレワークを導入した会社があり、導入の際に様々な問題が出たことを聞く機会があった。 この会社は、まず時期を定めてテレワークを導入するステップを定めた。その後プロジェクトチームを発足させ、その目的を明確にし、対象部署を決定していく。 その過程の中で、なぜ会社に出勤するのだろうという理由を挙げて、それを解消することが一番の近道と考えた。理由としては、会社に自席があるから、会議があるから、資料があるから、仲間がいるから、働いている実感があるから等々が並んだ。 それを解消すべくインフラも整え、テレワークをスタートさせようとした際に大事なことを忘れていた。 「テレワークで具体的に何の業務をさせれば良いのか」だ。部課長が揃って何となく考えていたが、結局ルーティン業務しか思いつかない。なぜなら部課長は一度もテレワークを体験していなかったのだ。 結局、テレワークを実際にする社員に何をするのかを考えさせ、周りに宣言させることで仕事の内容は決まった。 次に人事考課だ。人事考課は公平さが要求されることはもちろんだが、部下一人ひとりの仕事ぶりや人間性を的確に把握、洞察する眼が欠かせない。テレワークすることで、日頃の部下の仕事能力、行動力、長所や短所をきっちりとつかまえていないことから起きる考課ミスのケースが出てきたのだ。これは単なるコミュニケーション不足では済まされない、歪んだ主観がまかり通るような低次元の考課レベルに戻ってしまったと再度評価について教育をする必要があるだろう。 人事考課で部下を査定することは自分を査定することだ、いかなる環境下でも自分が部下をどう指導し、育成したかが問われているのだと。 テレワークは今後も普及していくことだろう。それには管理職のマネジメントスタイルの転換が不可欠だ。 慣れ親しんだ目で見える管理手法から、離れた場所でも適切かつ効果的なマネジメントが求められる。 テレワークをすることによって評価が下がったり、あるいはマミートラックに陥るようだと部下はたまったものじゃない。こういった評価がまかり通るようでは職場も有能な人材も壊してしまう。 ぜひ他山の石としたいものだ。 以上

これでだめなら・・・ | その他

これでだめなら・・・

これは実際の会社の例である この会社は、従業員3,000名規模で北は札幌から南は福岡まで複数の拠点がある会社だ。 当時、人事評価を刷新するということで、MBO(Management By Objectives)を取り入れたが、その運用に悩んでいた。MBOの導入時には、この制度は働く社員一人一人に力を存分に発揮してもらうための仕組みであり、単純に評価で賃金格差をつけるための仕組ではないと、何度も社員説明会を開いて、何とか理解を得たように見えた。 実際の運用に入ったところ、期初の目標設定のレベルがひどかった。目標に具体性はなく、何となくやっつけで思いついた目標が並び、それを上司も黙認するようなケースが多かった。その上、MBOシートの提出期限すら守られない。組合には、この人事評価の仕組みは個人別にノルマを課せられる“やらされ感”満載のもので、シラけてしまうという意見も届いた。 やはり制度の浸透には時間がかかるのだろうと、まずは期初の目標設定について研修を行った。これは一般社員だけでなく、管理職も入れて拠点別に何度も実施して、レベルの向上を図った。それでも一向にレベルの向上が見られなかった。社風的に馴染まないのか、それとも導入のステップを間違えていたのか、組合とも協議を重ね、これでだめならMBOをやめようかとも思ったそうだ。 最後に取った施策は、全従業員のMBOシートの開示だ。前出の通り、この会社は全国6拠点あり、それを社内イントラでつないでいるので、各拠点ごとにMBOフォルダを作り、そこに個人別のシートをPDFで掲載し、だれでも閲覧できるようにしたのだ。 そうすると、今まで何度も研修を実施してもレベル向上しなかった内容が一気に改善した。 目標は具体的になり、遅れ気味であった提出期限も守られるようになった。 半期が終了し、実績も加わり、それも開示した。シート内に評価者からのコメントを記入する箇所があるが、今までは一次評価者からはせいぜい2.3行だけで、二次評価者からは左に同じなどのコメントしかなかったものが、枠いっぱいにコメントされるようになったのだ。 自分以外の3,000人に閲覧されるという緊張感が奏功したと考えてよいだろう。 MBOの目的は、会社からと社員からの両面を持っている。この両面から目標管理の目的をきっちりと認識し、お互いの目的が達成されるように運用されなければならない。 会社としては、経営計画や短期目標を達成するために部門や個人が具体的にどの様な目標を立て、何をするのかを決めて、経営計画の達成をする仕組みになっていることを望む。 一方、社員としては業績目標やその役割を通じて自分自身が成長していくための仕組みであることが望まれる。業績目標達成のために何をすればよいのか、何を身につければよいのか、自身と向き合うとともに、上司からのアドバイスを受けながら、いかに成長していけるかがポイントになる。 様々な会社で話を聞くと、これがうまく機能していない会社が多いように見受けられる。 紹介した会社の例は、目標設定時から全社を巻き込んで機能させた、ある意味荒ワザかも知れないが、参考にしてはどうだろうか。 以上